愛犬が「クシュン!」とくしゃみをしたとき、単なるホコリのせいなのか、それとも重大な病気のサインなのか不安になりますよね。
実は、犬のくしゃみには生理現象だけでなく、細菌感染やアレルギー、ときには腫瘍が隠れている場合もあります。
本記事では、獣医師監修レベルの視点でくしゃみの原因から、緊急性の高い症状の見分け方、自宅での予防法まで徹底解説します。
愛犬の健康を守るための正しい知識を身につけましょう。
もくじ
犬がくしゃみをする原因とは?
犬がくしゃみをする理由は、人間と同じように鼻の粘膜が刺激を受けた際の防御反応です。
しかし、その背景には見逃してはいけない深刻な原因が潜んでいることも珍しくありません。
まずは、愛犬のくしゃみがどのような要因で引き起こされているのか、主な5つのパターンを確認していきましょう。
生理現象や刺激によるもの
最も多いのが、鼻への物理的な刺激です。
散歩中の草むらで種や砂が入ったり、香水やタバコの煙、芳香剤の強い香りを嗅いだりした際に、異物を排出しようとしてくしゃみが出ます。
また、犬は嬉しいときや興奮したときに、感情表現の一つとして「ふんっ」と鼻を鳴らすような短いくしゃみをすることがあります。
これらは一過性のものであれば心配ありません。
ウイルスや細菌による感染症
免疫力が低下している子犬や老犬に多いのが、感染症によるくしゃみです。代表的なものに「ケンネルコフ(犬伝染性気管支炎)」があります。
ウイルスや細菌が鼻の粘膜に付着して炎症を起こすと、くしゃみと共に粘り気のある鼻水が出ることがあります。
多頭飼育の場合は感染が広がるリスクがあるため、特に注意が必要です。
アレルギー反応
犬も人間と同様に、花粉やハウスダスト、カビなどに対してアレルギー反応を起こします。
特定の季節や、特定の部屋に入ったときにだけくしゃみが出る場合は、環境アレルゲンが原因の可能性が高いでしょう。
アレルギー性の場合は、くしゃみだけでなく目の充血や皮膚の痒みを伴うこともあります。
愛犬が顔を床に擦り付ける仕草を見せたら、アレルギーを疑ってみてください。
鼻炎や副鼻腔炎
鼻の粘膜が慢性的に炎症を起こしている状態です。
最初はサラサラとした透明な鼻水ですが、悪化して細菌感染を伴うと「蓄膿症」のようにドロドロとした黄色い鼻水に変わります。
また、意外と知られていないのが歯周病からくる鼻炎です。上の奥歯の根元に溜まった膿が鼻腔に突き抜けると、激しいくしゃみと膿混じりの鼻水が出るようになります。
鼻腔内の腫瘍や異物
シニア犬で特に警戒すべきなのが、鼻の中にできるガン(腫瘍)です。
鼻腔内腫瘍は外見からは分かりにくく、最初は片方の鼻の穴からだけ鼻水やくしゃみが出るのが特徴です。
進行すると鼻血が混じったり、顔の形が変形したりすることもあります。「たかがくしゃみ」と放置するのが最も危険なケースです。
注意が必要なくしゃみの見分け方
普段のくしゃみと、病気が疑われるくしゃみを見分けるには、観察のポイントを知っておく必要があります。
以下の表で、「心配ないケース」と「受診が必要なケース」を比較しました。
| 項目 | 様子見で良い場合 | 受診を推奨する場合 |
| 頻度 | 一時的ですぐに止まる | 1日中何度も繰り返す、数日続く |
| 鼻水の状態 | 無色透明、サラサラしている | 黄・緑色、ドロドロ、血が混じる |
| 鼻水の出方 | 両方の鼻から出ている | 片方の鼻からだけ出ている |
| 他の症状 | 食欲もあり元気 | 発熱、咳、食欲不振、顔を痛がる |
鼻水の色や状態をチェック
鼻水は、体の中で何が起きているかを教えてくれる重要なサインです。
透明でサラサラしている場合は、生理現象やアレルギー、感染症の初期段階が考えられます。
一方で、黄色や緑色の粘り気がある鼻水は、細菌感染が進行している証拠です。
最も注意が必要なのは、鼻水に血が混じっている(鼻出血)場合です。
これは鼻腔内の炎症がひどいか、腫瘍や凝固系の異常が疑われるため、速やかに病院へ連れて行きましょう。
くしゃみの頻度と持続時間
たまに1回出る程度であれば、鼻にゴミが入っただけの可能性が高いでしょう。
しかし、10分以上にわたってくしゃみが止まらない、あるいは毎日何度も繰り返す場合は、慢性的な疾患が隠れています。
特に、寝ている間にもくしゃみで目が覚めてしまうような状況は、愛犬にとって大きなストレスであり、病気の進行を示唆しています。
他の随伴症状(発熱・食欲不振)
くしゃみ以外の体調変化も必ず確認してください。
犬の平熱は38度台ですが、耳の付け根や股の間を触って熱く感じる場合は、ウイルス感染による発熱の可能性があります。
「ご飯を食べない」「散歩に行きたがらない」といった活動性の低下が見られる場合は、全身症状が悪化しているサインです。早期診断が回復の鍵となります。
逆くしゃみ(リバーススニーズ)との違い
「くしゃみのような変な音がするけれど、何かが喉に詰まったみたいに苦しそう」という場合、それは逆くしゃみ(リバーススニーズ)かもしれません。
これは、鼻から空気を激しく吸い込む現象で、通常のくしゃみとはメカニズムが異なります。
逆くしゃみの特徴と症状
逆くしゃみは、急に「ズーッズーッ」と鼻をすするような大きな音を立て、首を伸ばして苦しそうに見えるのが特徴です。
数秒から1分程度でケロッと元に戻ることがほとんどで、発作が終わった後は何事もなかったように元気なのが一般的です。小型犬や短頭種に多く見られる現象です。
逆くしゃみへの対処法
逆くしゃみ自体は病気ではないため、過度に心配する必要はありません。
落ち着かせるために、喉を優しく撫でてあげたり、鼻の穴を指で軽く塞いで口呼吸を促したりすると、早く収まることがあります。
ただし、発作の頻度があまりに高い場合や、失神を伴う場合は、軟口蓋過長症などの呼吸器疾患が隠れている可能性があるため、動画を撮って獣医師に見せることをおすすめします。
家庭でできる対策と予防
愛犬が快適に過ごせるよう、生活環境を見直すことでくしゃみを未然に防ぐことができます。
室内環境の整備(掃除・加湿)
室内飼育の場合、ハウスダストやダニが刺激となっているケースが多いです。こまめな掃除と空気清浄機の活用は非常に有効です。
特に冬場の乾燥は鼻の粘膜を傷めやすいため、湿度を50〜60%に保つようにしましょう。乾燥した粘膜はウイルスが付着しやすくなるため、加湿は感染症予防の基本です。
定期的な健康チェック
日頃からスキンケアやブラッシングの際に、鼻の周りが汚れていないか、腫れていないかを確認してください。
また、歯周病がくしゃみの原因になることを防ぐため、毎日の歯磨き習慣が非常に重要です。口臭が強くなってきたと感じたら、それは鼻の健康にも赤信号かもしれません。
動物病院を受診するタイミング
飼い主が最も悩むのが「いつ病院へ行くか」という判断です。以下の基準を参考にしてください。
緊急性が高いケース
以下の症状が見られる場合は、翌日まで待たずに受診を検討してください。
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激しい鼻血が出ている
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呼吸が苦しそうで、舌が青紫色(チアノーゼ)になっている
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激しい嘔吐や下痢を伴い、ぐったりしている
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鼻の中に明らかな異物が見えている(無理に取ろうとしないこと)
これらは一刻を争う処置が必要な場合があります。
獣医師に伝えるべきポイント
病院を受診する際は、診断をスムーズにするために以下の情報をメモしておきましょう。
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いつから始まったか(具体的日時)
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どんなときに出るか(散歩中、寝起き、食事中など)
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鼻水の色と質感(透明・黄色・血混じりなど)
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動画(くしゃみや逆くしゃみの様子をスマホで撮影)
特に、くしゃみの動画は診断の大きな助けになります。言葉で説明するよりも正確に状態が伝わるため、ぜひ準備しておいてください。
よくある質問(FAQ)
老犬が急にくしゃみを連発し始めたのですが大丈夫でしょうか?
高齢犬の急なくしゃみは、加齢による生理現象ではなく病気の可能性が高いです。特に鼻腔内腫瘍や、長年蓄積した歯周病による口鼻瘻が考えられます。シニア犬にとって頻繁なくしゃみは体力を激しく消耗させるため、早期に動物病院で検査を受けることを強く推奨します。
子犬のくしゃみが止まりません。風邪の可能性はありますか?
はい、ケンネルコフなどの感染症の可能性が十分にあります。子犬は免疫力が弱いため、単なる風邪だと思って放置すると肺炎にまで悪化し、命に関わることもあります。食欲や元気が少しでも落ちている場合は、すぐに獣医師に相談してください。
犬がくしゃみをしながら鼻血を出しました。どうすればいいですか?
鼻血を伴うくしゃみは、非常に緊急性が高いサインです。鼻腔内の重度の炎症、腫瘍、あるいはネズミ捕りなどの殺鼠剤中毒による凝固異常などが疑われます。飼い主が自宅で止血するのは困難なため、速やかに救急外来を受診してください。
特定の季節だけくしゃみをするのは、花粉症なのでしょうか?
犬にも花粉症は存在します。春や秋など、特定の時期に散歩へ行った後にくしゃみが集中する場合は、植物のアレルギー反応かもしれません。散歩後に体を拭く、空気清浄機を回すなどの対策をとり、改善しない場合は抗ヒスタミン剤などの処方を獣医師に相談しましょう。
逆くしゃみと普通のくしゃみの見分け方を教えてください。
通常のくしゃみは「空気を外に押し出す」動作で、短い音が1回ずつ出ます。一方、逆くしゃみは「空気を激しく吸い込む」動作で、数秒から数十秒間「ズーッズーッ」という連続した音が続きます。音の方向(吸うか吐くか)を確認するのが、最も簡単な見分け方です。
歯周病が原因でくしゃみが出るというのは本当ですか?
本当です。上の奥歯の根元で菌が増殖すると、鼻の骨を溶かして鼻腔と繋がってしまう「口鼻瘻」という状態になります。この場合、根本的な解決には歯科処置(抜歯など)が必要です。抗生物質で一時的にくしゃみが止まっても、歯科治療をしない限り再発を繰り返すのが特徴です。
まとめ
犬のくしゃみは、一時的な刺激によるものから、感染症、アレルギー、さらには深刻な腫瘍や歯周病まで多岐にわたる原因があります。
飼い主として大切なのは、「鼻水の色」「頻度」「片側性か両側性か」を注意深く観察することです。いつもと違う、何日も続く、鼻血が混じるといった異変を感じたら、迷わず獣医師の診断を仰ぎましょう。
日々の掃除や加湿、そして毎日の歯磨きケアを通じて、愛犬が「クシュン!」としない健康な生活を守ってあげてください。




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