昨日まであんなに静かだった愛猫が、突然聞いたこともないような大きな声で鳴き始め、床を転げ回ったり、家中をソワソワと歩き回ったりする。
初めて猫を飼う方にとって、猫の発情期は驚きと不安の連続かもしれません。
「どこか体が痛いのではないか?」「この鳴き声はいつまで続くのか?」「近所迷惑にならないだろうか?」と、夜も眠れぬ思いをしている飼い主さんも多いはずです。猫の発情は生理現象であり、病気ではありません。
しかし、その激しい行動に対して適切な知識を持たずに対処することは、飼い主さんと猫の両方にとって大きなストレスとなります。
この記事では、猫の発情期が起こるメカニズムから、メス猫・オス猫それぞれの特徴的なサイン、そして「今夜をどう乗り切るか」という具体的な対策までを詳細に解説します。
もくじ
猫の発情期とは?時期とメカニズム
猫の発情期は、人間や犬のサイクルとは大きく異なります。
猫は「季節繁殖動物」と呼ばれ、特に日照時間が長くなる時期に合わせて発情が誘発される性質を持っています。
発情が始まる時期(性成熟)
一般的に、猫が初めての発情を迎えるのは生後6ヶ月から10ヶ月頃と言われています。
ただし、これには個体差があり、早い子では生後4ヶ月頃、遅い子では1歳を過ぎてから迎えることもあります。
また、発情のタイミングは猫の種類や体重、そして「生まれた季節」にも左右されます。
日照時間が12〜14時間を超えると発情が促されるため、春から夏にかけて生後半年を迎える猫は、比較的早く発情が始まる傾向にあります。
発情のサイクル(周期)
猫(特にメス)の発情には明確なサイクルがあります。
一度発情が始まると、適切な交尾が行われない限り、一定の周期で発情を繰り返します。
このように、一度発情期に入ると、数週間のサイクルで何度も激しいサインが現れることになります。
飼い主さんが「やっと終わった」と思っても、すぐに次の波がやってくるのはこのためです。
メス猫に見られる特徴的な発情サイン
メス猫の発情サインは、非常に情熱的で、時に攻撃的にも見えるほど激しいものです。これはオスを惹きつけるための本能的な行動です。
以下の表は、メス猫に見られる主な発情サインをまとめたものです。
| 行動の種類 | 具体的な内容 | 飼い主への影響 |
| 独特な鳴き声 | 赤ん坊の泣き声のような、低く大きな声で鳴き続ける | 夜間の睡眠不足、近所への騒音不安 |
| ローリング | 床に体をこすりつけ、くねくねと転げ回る | 体の汚れや毛玉の原因になる |
| ロードシス | お尻を高く突き出し、足踏みをするようなポーズをとる | 異常な体勢に病気を疑う不安 |
| 甘えの激化 | 飼い主の足元に絡みつき、過剰にスリスリする | 日常生活への支障 |
| 尿スプレー | 壁や家具に少量の尿を吹きかける(マーキング) | 部屋の臭いや掃除の手間 |
メス猫の発情サインは、一見すると「どこかが痛くて苦しんでいる」ようにも見えますが、これは交尾を求めている正常な反応です。
特に**「夜泣き」とも呼ばれる激しい鳴き声**は、静まり返った夜の住宅街では想像以上に響きます。
愛猫が苦しそうに見えるため、抱きしめたり構ったりしたくなりますが、実はこれが逆効果になることもあるため注意が必要です。
オス猫に発情期はあるのか?
厳密に言うと、オス猫にはメス猫のような「決まった発揮サイクル」はありません。オス猫は、発情しているメス猫の鳴き声やフェロモンに反応して発情状態になります。
▼オス猫の発情サイン
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激しいスプレー行為: 縄張りを主張するため、非常に強い臭いの尿を壁などに吹きかけます。
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脱走を試みる: メス猫を探すために、窓やドアの隙間から外に出ようと必死になります。
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攻撃性の増加: イライラしやすくなり、他の同居猫や飼い主に対して攻撃的になることがあります。
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大きな声で叫ぶ: メスに自分の存在を知らせるために鳴きます。
オス猫は、近所に発情したメス猫がいれば、季節を問わずいつでも発情状態になる可能性があります。
一度スプレー行為を覚えてしまうと、去勢手術後も習慣として残ってしまうケースがあるため、早めの対処が望まれます。
今夜を乗り切る!飼い主ができる応急処置と対策
愛猫が発情してしまい、鳴き声やスプレーに困り果てている場合、今すぐできる対策がいくつかあります。
ただし、これらはあくまで「一時的なしのぎ」であり、根本的な解決ではないことを理解しておきましょう。
1. 徹底的に遊んで疲れさせる
発情によるエネルギーの発散場所を作ってあげることが重要です。おもちゃを使って、息が上がるくらいまで激しく遊ばせてください。
疲れて眠る時間が増えれば、その分、夜間の鳴き声は軽減されます。
寝る直前にたっぷり遊ばせ、その後すぐに食事を与えることで、猫の「狩り→食事→睡眠」という自然なサイクルを促すことができます。
2. 暗く静かな環境を作る
猫は明るい時間が長いほど発情が持続しやすくなります。夜間は遮光カーテンなどで部屋を完全に暗くし、静かな環境を作ってください。
ケージに布を被せて視界を遮るのも有効です。
余計な刺激を与えず、体を休めるモードに切り替えさせることが大切です。
3. マスキング(臭いと音の遮断)
近所に別の猫がいる場合、その気配を感じさせない工夫が必要です。
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フェロモン製剤の使用: 「フェリウェイ」などの猫用フェロモン製剤を使用すると、猫がリラックスし、発情の興奮が和らぐことがあります。
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窓を閉め切る: 外の猫の鳴き声や臭いが入ってこないようにします。
4. してはいけない「NG対策」
インターネット上には、間違った対策も多く散見されます。以下の行為は愛猫の体を傷つける恐れがあるため、絶対に行わないでください。
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綿棒などを使った疑似交尾: 内部を傷つけ、化膿や重大な疾患(子宮蓄膿症など)を引き起こすリスクが非常に高いです。
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大きな声で叱る: 本能で動いている猫に罪はなく、恐怖心から信頼関係が崩れるだけです。
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水をかける: 一瞬静かになるかもしれませんが、強いストレスを与え、体調を崩す原因になります。
不妊・去勢手術を検討するべき理由
発情期のストレスから解放されるための最も確実で、かつ医学的にも推奨される方法が「不妊・去勢手術」です。
手術には費用がかかり、麻酔のリスクもゼロではありませんが、それ以上に猫の健康寿命を延ばす大きなメリットがあります。
手術のメリットとデメリットの比較
不妊去勢手術を検討する際の判断材料として、以下の表を参考にしてください。
| 項目 | メリット | デメリット・注意点 |
| 健康面 |
メス:乳腺腫瘍、子宮蓄膿症の予防 オス:精巣腫瘍、前立腺疾患の予防 |
全身麻酔のリスクが伴う 代謝が落ち、太りやすくなる |
| 行動面 |
発情期の鳴き声、スプレー、脱走欲求がなくなる 性格が穏やかになることが多い |
繁殖ができなくなる(一度行うと元に戻せない) |
| 生活面 | 飼い主の睡眠不足や掃除のストレスが解消される | 手術費用(数万円程度)が必要 |
多くの獣医師が手術を勧める最大の理由は、生殖器系の病気予防にあります。
特にメス猫の乳腺腫瘍は悪性である確率が非常に高く、初回発情前に手術を行うことで、その発生率を劇的に下げることができるというデータもあります。
「子供を産ませる予定がない」のであれば、愛猫を病気のリスクと発情のストレスから守るために、手術は極めて有効な選択肢と言えます。
よくある質問
Q:発情期にまたたびを与えても大丈夫ですか?
A:一時的に気分を紛らわせる効果はありますが、根本的な解決にはなりません。
猫によっては興奮が強まって逆効果になることもあります。
また、過剰に与えると中枢神経への影響も懸念されるため、発情対策として常用するのは避けるべきです。
Q:一度始まった発情を、途中で止める薬はありますか?
A:動物病院でホルモン剤を処方してもらうことで、発情を抑制することは可能です。
しかし、ホルモン剤は副作用のリスク(糖尿病や子宮の病気など)があるため、長期的な解決策としてはおすすめできません。
あくまで事情があって手術ができない場合の緊急避難的な措置と考えましょう。
Q:発情期の鳴き声がうるさくて、近所から苦情が来ないか心配です。
A:まずは窓をしっかり閉め、可能であれば防音カーテンを利用しましょう。
また、あらかじめ近隣の方に「今、猫が発情期で一時的に鳴き声が大きくなっており、対策をしています」と一言伝えておくだけでも、トラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
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猫の発情期は日照時間に関係し、生後半年〜10ヶ月頃から始まる
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メスは大きな声で鳴き、オスはメスの気配に反応してスプレー行為などを行う
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即効性のある対策は「暗冷な環境」「十分な遊び」「フェロモン製剤」
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綿棒などを使った自己流の処置は、感染症のリスクがあるため厳禁
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不妊去勢手術は、発情ストレスの解消だけでなく、将来の重大な病気予防に直結する
猫の発情は、種を存続させようとする生命の力強い本能です。その激しさに圧倒されることもあるでしょうが、決して猫を責めないでください。
最も大切なのは、飼い主さんが愛猫の体の仕組みを正しく理解し、「共に穏やかに暮らすために何ができるか」を冷静に判断することです。
今夜の夜泣きが辛い時は、まず部屋を暗くして、明日かかりつけの獣医師に相談することから始めてみてください。
その一歩が、愛猫とあなたのこれからの長い幸せな生活を守ることにつながります。



























発情前期(1〜2日間): 落ち着きがなくなり、飼い主に甘えることが増える。
発情期(4〜10日間): 特徴的な鳴き声を発し、交尾を受け入れる姿勢をとる。
発情休止期(5〜14日間): 一旦落ち着きを取り戻すが、再び発情期へ移行する。
無発情期: 日照時間が短い冬の時期など。