ハムスターを家に迎えたものの、手を近づけると逃げられたり、ジジッと鳴いて威嚇されたりして、「自分にはなついてくれないのではないか」と不安を感じていませんか。
SNSや動画サイトで見る、飼い主さんの手の上でスヤスヤ眠るハムスターの姿に憧れて飼い始めた方にとって、拒絶されるような反応はとても悲しいものです。
しかし、安心してください。
ハムスターがなつかないのは、あなたの愛情が足りないからではなく、単にハムスターの習性に合わせた距離の詰め方を知らないだけであるケースがほとんどです。
ハムスターは食物連鎖のピラミッドにおいて「捕食される側」の動物であり、本能的に非常に警戒心が強い生き物です。
この記事では、ハムスターの心理を理解し、一歩ずつ着実に信頼関係を築いていくための具体的なステップを詳しく解説します。
焦らずに正しい手順を踏めば、あなたのハムスターもきっと心を開いてくれるようになります。
もくじ
ハムスターにとって「なつく」とはどのような状態か
まず理解しておくべきは、ハムスターにとっての「なつく」は、犬や猫のように「飼い主をリーダーとして慕う」こととは少し異なるという点です。
ハムスターにとってのなつくとは、「この人間は自分に危害を加えない安全な存在であり、美味しいものをくれるパートナーである」と認識してもらうことを指します。
ハムスターは視力が弱く、周囲の状況を主に「臭い」と「音」で判断しています。
そのため、飼い主さんの特定の臭いや声を覚え、それが近づいてきてもパニックにならずに過ごせるようになることが、信頼関係の第一歩となります。
最終的には、自分から飼い主さんの手に乗ってくる「手乗り」や、名前を呼ぶと巣箱から出てくるような、深い信頼関係を築くことが可能です。
「なつかせる」のではなく「安心してもらう」という意識を持つことが、成功の最大の秘訣です。
種類によって異なる!なつきやすさと性格の特徴
ハムスターには多くの種類があり、それぞれ性格の傾向が異なります。あなたが飼っている、あるいはこれから飼おうとしている種類がどのような性質を持っているかを知ることは、接し方を決める上で非常に重要です。
以下の表に、ペットショップでよく見かける代表的な4種類のなつきやすさを整理しました。
種類別の性格となつきやすさ比較
| 種類 | なつきやすさ | 性格の傾向 | 初心者への適性 |
| ゴールデンハムスター | ◎ 非常に高い | おっとりしていて物怖じしない | 最適(一番なつきやすい) |
| ジャンガリアンハムスター | 〇 高い | 好奇心旺盛だがやや臆病な面もある | 適している |
| ロボロフスキーハムスター | △ 低い | 非常に臆病で動きがすばやい | 観賞メイン向き |
| キャンベルハムスター | △ やや低い | 気が強く、自己主張が激しい | 中級者以上向き |
一般的に、体が大きい種類ほど性格が穏やかで、人間を怖がりにくい傾向があります。
ゴールデンハムスターは最もなつきやすく、一度信頼関係ができると自分から積極的にコミュニケーションをとってくれます。
一方で、世界最小のロボロフスキーハムスターは「なつかせるのが非常に難しい」とされており、無理に触ろうとすると強いストレスを与えてしまうため、適切な距離感を保つ必要があります。
自分のハムスターの特性を理解し、その子のペースに合わせた目標設定をしましょう。
【実践】ハムスターをなつかせるための5ステップ
ハムスターをなつかせるには、段階を踏むことが不可欠です。いきなり触ろうとするのは、ハムスターにとって「巨大な怪獣に襲われる」のと同じ恐怖を与えてしまいます。
以下の5つのステップを、1週間〜1ヶ月以上の時間をかけてゆっくり進めていきましょう。
ステップ1:お迎えから1週間は「完全放置」で環境に慣らす
ハムスターを家に迎えた直後は、慣れない環境の臭いや音に、彼らのストレスは限界に達しています。
この時期に構いすぎてしまうと、「この家は怖い場所だ」という第一印象を与えてしまい、その後のなつきやすさに悪影響を及ぼします。
この1週間は、「新しい環境は安全だ」と思わせることだけに集中してください。
ハムスターがケージ内でリラックスして毛づくろいをしたり、回し車で元気に遊んだりする姿が見られるようになったら、次のステップへ進みます。
ステップ2:飼い主の「臭い」と「声」を覚えさせる
環境に慣れてきたら、次はあなたの存在を認識してもらいます。前述の通り、ハムスターは臭いに敏感です。
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ケージ越しに優しく名前を呼びかける(低めの穏やかな声で)
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自分の臭いがついた布やティッシュをケージの隅に入れておく
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エサを補充する際に、飼い主の手が近づくことを予告する
「この声と臭いがするとエサが出てくる」というポジティブな関連付けを行うことが目的です。手をケージ内に入れて無理に近づくのではなく、まずは外側からのアピールに徹しましょう。
ステップ3:手から直接「おやつ」を与えてみる
いよいよ直接的なコミュニケーションの開始です。ハムスターの好物(ひまわりの種や乾燥野菜など)を指先で持ち、ケージの入り口付近でそっと差し出してみます。
このとき、「自分の指がハムスターの視界に入っているか」を確認してください。真上や背後から手を出すと、天敵である鳥に襲われると勘違いしてパニックになります。必ず正面から、低い位置で差し出しましょう。
ハムスターが寄ってきて、手からおやつを受け取ってくれたら大成功です。もし逃げてしまうようなら、まだステップ2の段階が不足しています。
「おやつをくれる魔法の手」だと思ってもらえるまで、毎日根気強く繰り返してください。
ステップ4:手のひらに乗ってもらう(手乗りの訓練)
手からおやつを食べるようになったら、次はおやつを指先ではなく、「手のひらの真ん中」に置きます。ハムスターがおやつを食べるために、あなたの手の上に足を乗せなければならない状況を作ります。
最初は前足だけを乗せておやつを奪い去っていくかもしれませんが、それを繰り返すうちに、両足、そして体全体を手の上に乗せてくれるようになります。
ここで重要なのは、ハムスターが乗った瞬間に手を動かさないことです。
少しでも動くと「不安定な場所だ」と学習し、二度と乗ってくれなくなります。ハムスターが完食するまで、手は石のように静止させておきましょう。
ステップ5:手の上で優しく撫でる・持ち上げる
手のひらで安心しておやつを食べるようになったら、最終段階です。食べている隙に、人差し指の背などで背中をそっと撫でてみましょう。
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頭の先や顔周りは嫌がるので避ける
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毛並みに沿って、ごく弱い力で
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嫌がる素振りを見せたらすぐに止める
撫でられることに抵抗がなくなれば、そのままゆっくりと手を地面から数センチ持ち上げてみます。これを繰り返すことで、「人の手に乗って移動すること」が日常的な風景になります。
ここまで来れば、あなたとハムスターの間には強固な信頼関係が築かれていると言えるでしょう。
絶対にやってはいけない!ハムスターに嫌われる5つのNG行動
良かれと思ってやっていることが、実はハムスターの心を閉ざす原因になっていることがあります。以下の行動は、「嫌われる飼い主」の典型例です。もし心当たりがある場合は、今日からすぐに改めてください。
1. 熟睡しているときに無理やり起こす
ハムスターは夜行性であり、日中は深い眠りについています。その睡眠を邪魔されることは、人間が夜中に叩き起こされる以上のストレスです。
無理やり起こして触り続けると、「この人間は睡眠を妨げる敵だ」と認識され、強い拒絶反応を示すようになります。触れ合いは必ず、ハムスターが自発的に起きて活動している夜間に行いましょう。
2. 上空から鷲掴みにするように捕まえる
ハムスターの天敵は、空を飛ぶ猛禽類です。そのため、上から手が伸びてくると、本能的な恐怖でパニックに陥ります。
捕まえるときは、両手で包み込むように下からすくい上げるのが鉄則です。上から掴むと、噛みつかれたり、驚いて心不全を起こしたりするリスクもあるため、絶対に避けなければなりません。
3. 急な動作や大きな音で驚かせる
ハムスターは非常に耳が良く、小さな物音にも敏感です。飼い主がケージの近くでドタバタ歩いたり、くしゃみをしたり、大声で話しかけたりすると、彼らにとっては爆音のように聞こえます。
「ハムスターの視界で急に動かないこと」も重要です。忍者のように静かに、穏やかな動作で接することが、彼らの安心感に繋がります。
4. 嫌がっているのに無理に触り続ける
ハムスターにはその日の気分があります。昨日は手の上に乗ってくれたのに、今日はすぐに逃げてしまうということも珍しくありません。
逃げ回っているハムスターを追いかけ回して捕まえるのは、最悪の選択です。一度「追いかけられた恐怖」を植え付けてしまうと、信頼を回復するのに数ヶ月かかることもあります。
「今日は気分じゃないんだな」と割り切り、早めに引き下がる潔さが大切です。
5. 強く握ったり、高い場所から落としたりする
ハムスターの骨は非常に細く、少しの衝撃で骨折してしまいます。強く握ることは物理的な痛みを与えるだけでなく、死の恐怖を感じさせます。
また、手の上に乗せているときに暴れて落としてしまう事故も多いです。触れ合いは必ず低い床の上で行い、万が一落下しても怪我をしない環境を整えてください。
なついているサインを見逃さない!信頼の証をチェック
ハムスターがあなたを信頼し始めると、言葉の代わりに「行動」でサインを送ってくれます。これらは、「あなたと一緒にいてリラックスしている」という証拠です。
ハムスターの「なつきサイン」チェックリスト
| サイン | 信頼度 | ハムスターの心理状態 |
| 手の近くで毛づくろいをする | ★★★☆☆ | 「敵がいないからリラックスして身だしなみを整えよう」 |
| 手の上でおやつを食べる | ★★★★☆ | 「この人の手の上は安全な食事場所だ」 |
| 名前を呼ぶと巣箱から顔を出す | ★★★★☆ | 「知っている声がする、何か良いことがあるかも」 |
| 手の上で寝てしまう | ★★★★★ | 「完全に安心しきっている。この人は家族だ」 |
ケージの外から声をかけたときに寄ってきたり、手の中でウトウトしたりする姿が見られたら、自信を持ってください。あなたは素晴らしい飼い主として認められています。
どうしてもなつかない……そんな時の考え方
どれだけ正しい手順を踏んでも、個体差によってはどうしてもなつかない、あるいは「触られるのが大嫌い」という性格のハムスターもいます。それはあなたのせいではありません。
人間にも内向的な人がいるように、ハムスターにも「一人が好きなタイプ」がいます。
特にロボロフスキーなどの種類や、以前の環境でトラウマを抱えた個体の場合、なつくまでに非常に長い時間がかかる、あるいは手乗りにならないこともあります。
そんなときは、「観賞用として愛でる」という方向に切り替えてみてください。
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美味しそうにエサを食べている姿
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一生懸命に回し車を回す姿
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頬袋をパンパンにして巣箱に運ぶ姿
直接触れ合えなくても、ハムスターが健康で、安心した環境で暮らしていること自体が、飼い主としての成功です。
無理になつかせようとストレスを与えるより、「その子がその子らしく過ごせる環境」を守ってあげることこそが、究極の愛情と言えるでしょう。
よくある質問
Q:ハムスターに噛まれてしまったのですが、もうなつかないのでしょうか?
A:一度噛まれたからといって、なつかなくなるわけではありません。
噛むという行為は、ハムスターにとっての「防御反応」です。何かに驚いた、あるいはあなたの手に美味しそうな臭いがついていてエサと間違えたなどの理由が考えられます。
しばらくの間は手を出さず、ステップ1や2からやり直して、「手は怖いものではない」と再学習させてあげれば大丈夫です。
Q:多頭飼いをすると、なつきにくくなりますか?
A:はい、基本的にはなつきにくくなる傾向があります。
ハムスター(特に縄張り意識の強いゴールデンなど)は単独飼育が基本であり、同じケージに複数入れると喧嘩やストレスの原因になります。
飼い主よりも同居個体への警戒に意識が向いてしまうため、一匹ずつ個別のケージで飼育し、一対一の信頼関係を築くのがベストです。
Q:大人(成体)から飼い始めたハムスターはなつきませんか?
A:赤ちゃん(幼体)から育てるよりは時間がかかる場合が多いですが、成体からでも十分になつきます。
成体は性格が安定しているため、一度信頼関係ができれば非常に落ち着いたパートナーになります。時間はかかっても、焦らずにステップ1から根気強く接してみてください。
Q:なつかせようとしておやつをあげすぎてしまいます。
A:おやつのあげすぎは肥満の原因になり、ハムスターの寿命を縮めてしまいます。
ひまわりの種などは脂肪分が多いため、1日の回数を決めることが大切です。
おすすめは、「普段のペレットを手から与える」ことです。これなら健康を害することなく、触れ合いの回数を増やすことができます。
Q:なついていたのに、急に噛むようになったのはなぜですか?
A:急な変化には、いくつかの理由が考えられます。一つは、体調不良や怪我による痛みでピリピリしているケース。
もう一つは、発情期による気性の荒さです。もし数日経っても改善せず、元気がなかったり食欲が落ちたりしている場合は、動物病院での受診を検討してください。
まとめ
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ハムスターをなつかせる近道は「焦らず、驚かせず、段階を踏むこと」
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種類によって性格が異なるため、その子の個性に合わせた目標を持つ
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お迎え直後は触らずに環境に慣らすことから始める
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「臭い」と「声」を覚えさせ、おやつを通じてポジティブな印象を与える
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なつかない場合でも、その子の健康と幸せを第一に考えるのが本当の愛情
ハムスターとの暮らしは、小さな信頼を積み重ねていく喜びがあります。
昨日まで逃げていた子が、今日は一瞬だけ手の匂いを嗅いでくれた。そんな「小さな変化」を大切に喜べるようになれば、あなたの気持ちは必ずハムスターに伝わります。
毎日少しずつ、彼らのペースに合わせて歩み寄ってみてください。ある日突然、向こうからトコトコとあなたの手に登ってくる瞬間が訪れるはずです。
その時、あなたが感じる喜びは、きっと何物にも代えがたい宝物になるでしょう。



























エサと水の交換、掃除以外は一切触らない
ケージを覗き込みすぎない
大きな音を立てない、テレビの横などに置かない