愛猫が突然、「ケホケホ」という音とともに透明な液体や水っぽいものを吐き出してしまうと、飼い主としては大きな不安に襲われるものです。
猫は比較的よく吐く動物だと言われることもありますが、その中には「様子を見て大丈夫なもの」と「一刻を争う重病のサイン」が混在しています。特に、内容物がない水っぽい嘔吐は、胃の中で何が起きているのかを外側から判断しにくいため、注意深い観察が必要です。
この記事では、猫が透明な液体を吐く正体は何なのか、どのような状態であれば病院へ急ぐべきなのか、そして家庭でできる予防策について詳しく解説します。
もくじ
猫が吐いた「透明な液体」や「水っぽいもの」の正体
猫が吐き出した水っぽい液体の多くは、胃液、唾液、あるいは直前に飲んだ水のいずれかです。
胃の中に食べ物がない状態で嘔吐反射が起こると、胃の粘膜を守るための粘液や胃酸が混ざり合い、透明でサラサラとした、あるいは少し粘り気のある液体として排出されます。
また、液体の中に白い泡が混じっていることも多いですが、これは液体が喉を通る際に空気と混ざり合って泡立ったもので、基本的には胃液であることに変わりありません。
まずは、その液体が以下のどれに近いかを確認してみましょう。
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透明でサラサラしている:胃液、あるいは直前に飲んだ水。
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白く泡立っている:胃液が空気と混ざったもの。
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少し粘り気がある:唾液や胃の粘液。
これらが一度きりで、吐いた後に猫が普段通り元気であれば、一時的な生理現象である可能性が高いといえます。
猫が水っぽいものを吐く主な原因
なぜ、胃の中に何もない状態で猫は吐いてしまうのでしょうか。そこには、猫特有の体の仕組みや生活習慣が深く関わっています。
空腹による胃酸過多(もっとも多い原因)
猫が透明な液体や黄色い液体(胆汁)を吐く理由として、もっとも頻度が高いのが長時間の空腹です。
猫の胃は、食べ物が入っていない時間が長すぎると、胃酸が過剰に分泌されてしまいます。この過剰な胃酸が胃の粘膜を刺激し、ムカムカとした不快感を引き起こすことで、結果として「胃液だけを吐く」という行動につながります。
特に、深夜から早朝にかけて、あるいは仕事から帰宅した直後など、食事の間隔が空いたタイミングで吐いている場合は、空腹が原因である可能性が極めて高いでしょう。
水の早飲み・一気飲み
暑い日や運動の後、あるいは乾燥した室内で喉が渇いた猫が、勢いよく水を飲んだ直後にそのまま戻してしまうことがあります。
これは病気というよりも、食道や胃が急激な刺激に驚いて逆流させてしまう生理的な反応です。吐いたものが飲んだ水そのものであり、吐いた直後にまたけろっとして水を飲みたがったり、ご飯を食べたがったりする場合は、大きな心配はいりません。
毛玉(ヘアボール)の蓄積
猫は毛づくろい(グルーミング)によって自分の毛を飲み込みますが、これが胃の中で塊になると、胃の出口を塞いだり粘膜を刺激したりします。
毛玉を吐き出す前段階として、胃液だけが先に押し出されるように吐き出されることがあります。「最近あまり毛玉を吐いていないな」と感じる時期に水っぽい嘔吐が増えたなら、胃の中に大きな毛玉が停滞しているサインかもしれません。
ストレスによる自律神経の乱れ
猫は非常に繊細な動物です。引っ越し、新しい家族(人間やペット)の増加、近所の工事の音、あるいはトイレが汚れているといった些細なストレスが、胃腸の動きを停滞させることがあります。
ストレスによって自律神経が乱れると、胃酸の分泌が不安定になり、特に理由もなく水っぽいものを吐くようになります。環境の変化がなかったか、愛猫のストレスサインを振り返ってみることが大切です。
異物誤飲による刺激
おもちゃの紐、ビニール袋の破片、植物の葉など、食べ物ではないものを飲み込んでしまった場合、胃がそれを排出しようとして激しく収縮します。
異物がまだ胃の中にあり、完全に閉塞していない段階では、異物そのものは出ずに胃液だけが何度も吐き出されることがあります。これは非常に危険な状態へ移行する可能性があるため、注意が必要です。
病院へ行くべきか?様子見で良いか?の判断基準
飼い主がもっとも悩むのが、「今すぐ夜間病院に連れて行くべきか、明日まで待っていいか」という判断でしょう。以下の表を参考に、愛猫の状態をチェックしてみてください。
| 項目 | 様子を見ても良い(緊急性低) | 病院を受診すべき(緊急性高) |
| 嘔吐の頻度 | 1日に1〜2回程度で、その後は落ち着く | 1日に何度も繰り返す、数日続いている |
| 猫の元気 | 普段通り走り回る、甘えてくる | ぐったりしている、隠れて出てこない |
| 食欲 | 吐いた後もご飯を食べたがる | まったく食べない、水も飲まない |
| 他の症状 | 他に気になる点はない | 下痢、発熱、痙攣、震えがある |
| 内容物 | 透明な液体、白い泡、毛玉 | 血混じり、緑色、異物、便のような臭い |
「一度吐いただけだが、なんとなくいつもと違う」という飼い主の直感は、意外と当たることが多いものです。迷ったときは、電話でかかりつけの獣医師に相談することをお勧めします。
【色別】嘔吐物の色からわかる危険度サイン
透明な液体以外にも、混じっている色によって胃や体の中で起きているトラブルを推測することができます。
黄色の液体(注意が必要)
液体が黄色い場合、それは十二指腸から逆流してきた胆汁です。透明な胃液と同じく、空腹が長く続いたときに多く見られます。
一度だけで元気があれば急を要しませんが、毎日続くようであれば慢性的な胃腸炎や肝胆道系の疾患が隠れている可能性があるため、早めの受診を検討しましょう。
ピンク・赤色の液体(至急受診)
液体がピンク色や赤色をしている場合、口の中、食道、あるいは胃の粘膜から出血している証拠です。
激しく吐いたために粘膜が少し傷ついただけの場合もありますが、胃潰瘍や腫瘍、あるいは鋭利な異物による損傷の可能性も否定できません。「鮮血」が見える場合は、迷わず病院へ連れて行きましょう。
緑色の液体(至急受診)
緑色の液体は、胆汁が大量に逆流しているか、あるいは腸閉塞(異物が詰まっている状態)のサインであることが多いです。
非常に緊急性が高い状態であり、放っておくと命に関わります。また、膵炎などの激しい炎症が起きている場合も緑色の液体を吐くことがあるため、一刻も早い診察が必要です。
茶色の液体(至急受診)
食べたフードが消化された色であれば良いのですが、時間が経って凝固した血液(古い出血)が茶色く見えることがあります。
また、小腸の下部で詰まっている場合、吐瀉物から便のような臭いがすることがあります。これは極めて危険なサインですので、すぐに受診してください。
家庭でできる水っぽい嘔吐の予防策
病気ではない「空腹」や「生理現象」による嘔吐であれば、生活習慣を見直すことで劇的に改善することがあります。
食事の回数を増やし、間隔を短くする
空腹による胃酸過多が疑われる場合、1日の給餌量は変えずに、回数を4〜5回に小分けにするのがもっとも効果的です。
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寝る直前に少量の夜食を与える。
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自動給餌器を活用し、早朝(飼い主が起きる前)に少量のフードが出るように設定する。
これだけで、朝方の水っぽい嘔吐がピタッと止まるケースは非常に多いです。
早食い・早飲み防止食器の導入
勢いよく飲み食いして吐いてしまう猫には、凹凸のある早食い防止用の食器が有効です。
一気に口に入らない構造にすることで、食道への刺激を和らげ、逆流を防ぐことができます。また、水飲みの場所を複数箇所に分散させ、いつでも少しずつ飲める環境を整えることも大切です。
徹底したブラッシングと毛玉ケア
毛玉による胃の不快感を減らすためには、飼い主によるこまめなブラッシングが欠かせません。
特に換毛期には、飲み込む毛の量を物理的に減らしてあげましょう。また、毛玉排出をサポートする専用のフードや、食物繊維が豊富なサプリメント(ヘアボールリリーフなど)を併用するのも良い方法です。
よくある質問
猫の嘔吐に関して、多くの飼い主が抱く疑問をQ&A形式でまとめました。
Q:水を飲んだ直後に吐くのは、水が冷たいからですか?
A:水の温度も関係することがあります。特に冬場や冷蔵庫から出したばかりの冷たい水は、胃を刺激して収縮させやすいため、常温の、あるいはほんの少し温めた水を与えることで改善する場合があります。ただし、もっとも多い原因は温度よりも「急いで飲んだことによる刺激」です。
Q:吐いた後、すぐに次のご飯をあげてもいいですか?
A:基本的には、1〜2時間は胃を休ませるために絶食させるのが望ましいです。胃が過敏になっている状態で追い打ちをかけるように食べ物や水を入れると、再び激しい嘔吐を誘発し、体力を消耗させてしまいます。猫が欲しがっても少し時間を置き、まずは少量の水から様子を見てください。
Q:夜中に吐いてしまった場合、朝まで待っても大丈夫ですか?
A:猫が吐いた後にケロッとしており、おもちゃで遊んだり、毛づくろいをしたりする元気があるなら、朝まで様子を見てからかかりつけの病院へ行くので問題ないことが多いです。しかし、「何度も吐き続ける」「苦しそうにえづく」「ぐったりして動かない」といった様子があれば、夜間救急病院を受診することを強くお勧めします。
Q:ストレスで吐く場合、何を変えればいいですか?
A:まずは「猫にとっての安心」を再構築してください。トイレの清掃頻度を上げる、多頭飼いの場合は1匹になれる高い場所(キャットタワーなど)を用意する、フェロモン製剤(フェリウェイなど)を使用して環境を落ち着かせるといった対策があります。原因が特定できない場合は、獣医師に相談し、食事療法やサプリメントを検討しましょう。
まとめ
愛猫が水っぽいものを吐いたとき、それが一過性のものなのか、体のSOSなのかを見極めることは、共に暮らす飼い主にとって非常に重要な役割です。
「猫だから吐くのは当たり前」と思い込まず、まずは愛猫の元気さや食欲、そして吐いたものの色や頻度を冷静に観察しましょう。少しでも不安を感じたり、症状が繰り返されたりする場合は、早めに専門家である獣医師の診断を仰ぐことが、愛猫の健やかな毎日を守るための一番の近道となります。






















透明な液体や白い泡の正体は、主に「胃液」や「唾液」である。
もっとも多い原因は「空腹」による胃酸過多であり、食事回数の調整で改善することが多い。
1日に何度も繰り返す、元気がない、下痢を伴う場合は、重病の可能性があるため至急受診が必要。
嘔吐物の色が「黄色」「ピンク」「緑」「茶色」の場合は、内臓疾患や異物誤飲のサイン。
日頃のブラッシングやストレス管理、食事の与え方の工夫が最大の予防策となる。