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犬の目が開かない原因と対処法 緊急性の見極めから考えられる病気まで解説

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愛犬の目が突然開かなくなったり、ショボショボとさせていたりする姿を見ると、飼い主さんは大きな不安を感じるものです。

犬にとって視覚は周囲の情報を得るための重要な感覚の一つであり、目の異常は単なる不快感だけでなく、激しい痛みや将来的な失明のリスクを伴うケースが少なくありません。

目が開かないという状態は、医学的には「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」や「疼痛による羞明(しゅうめい)」と呼ばれ、目に何らかの深刻なトラブルが起きているサインです。

放置すると数日で手遅れになる病気もあるため、まずは現状が緊急事態かどうかを正しく判断することが、愛犬の視界を守るための第一歩となります。

 

犬の目が開かない時の緊急性チェックリスト

愛犬の状態が「今すぐ夜間病院に走るべきか」「翌朝の受診で間に合うか」を判断するための基準を整理しました。

以下の表を参考に、愛犬の目を観察してください。

犬の目の異常における緊急性の判断基準

 

症状のカテゴリー 緊急性が極めて高い(即受診) 翌日の受診でも検討可能
目の色・状態 目が全体的に白く濁っている、または緑っぽく見える わずかに充血しているが、透明度は保たれている
眼球の大きさ 左右で眼球の大きさが明らかに違う、飛び出している 眼球の大きさに変化は見られない
痛みの反応 目を触ろうとすると激しく嫌がる、悲鳴を上げる 違和感があるようで、少し気にしている程度
全身症状 食欲が全くない、嘔吐している、ぐったりしている 食欲はあり、普段通り元気な様子
外傷の有無 散歩中に枝が刺さった、猫に引っかかれた 原因に心当たりはないが、少しショボショボしている

 

この表で「緊急性が極めて高い」に該当する項目が一つでもある場合は、一刻を争う事態である可能性が高いです。

特に緑内障や急性角膜穿孔などの場合、数時間の遅れが失明に直結することがあります。迷わず動物病院に連絡し、指示を仰いでください。

 

なぜ犬の目が開かなくなるのか?考えられる主な原因

犬の目が開かなくなる原因は、外部からの刺激によるものから、体内の疾患が目に現れているものまで多岐にわたります。

ここでは、飼い主さんが把握しておくべき代表的な原因と病気を詳しく解説します。

 

角膜のトラブル(目の表面の傷)

犬の目が開かない原因として最も頻度が高いのが、目の表面を覆う透明な膜である「角膜」の損傷です。

角膜には知覚神経が密集しているため、わずかな傷でも激しい痛みを生じ、犬は目を開けていられなくなります。

 

  • 角膜潰瘍(かくまくかいよう): 散歩中の草木、自分の爪での引っかき傷、逆さまつげの刺激などが原因で角膜が削れてしまう病気です。

  • ドライアイ(乾性角結膜炎): 涙の量が不足することで角膜が乾燥し、慢性的な炎症や傷が発生します。

  • 角膜異物: 砂や植物の種、小さな虫などが目の中に入り込み、角膜を直接刺激している状態です。

 

これらは放置すると傷が深くなり、最悪の場合は角膜に穴が開く「角膜穿孔(かくまくせんこう)」へと進行します。

目をショボショボさせる、涙が止まらない、まぶしそうにするといった動作が見られたら、角膜トラブルを疑いましょう。

 

結膜・眼瞼のトラブル(まぶたや白目の炎症)

白目の部分を覆う「結膜」や、目を保護する「まぶた(眼瞼)」の異常も、目が開かなくなる大きな要因です。

 

  • 結膜炎: 細菌やウイルスの感染、アレルギー、ハウスダストなどが原因で結膜が赤く腫れ上がります。

  • 眼瞼内反症・外反症: まぶたが内側に巻き込まれたり、外側にめくれたりすることで、まつげや外気が目を刺激し続けます。

  • チェリーアイ: 第三眼瞼(瞬膜)の腺が飛び出してしまう状態で、違和感から目をこすり、二次的な炎症を引き起こします。

 

結膜のトラブルでは、ドロっとした目やにが多く出ることが特徴です。目やにによって上下のまぶたがくっついてしまい、物理的に目が開かなくなることもあります。

 

眼球内部の深刻な疾患

一見して表面に傷がないように見えても、眼球の内側で恐ろしい病気が進行していることがあります。

これらは視力を喪失させるリスクが極めて高いため、細心の注意が必要です。

 

  • 緑内障: 眼球内の圧力(眼圧)が急激に上昇する病気です。激痛を伴い、目が大きく見える、白濁する、瞳孔が開いたままになるなどの症状が出ます。

  • ぶどう膜炎: 眼球内の虹彩などの組織に炎症が起きる病気です。感染症や自己免疫疾患、腫瘍などが背景にあることが多く、放置すると失明や緑内障を誘発します。

  • 水晶体脱臼: レンズの役割を果たす水晶体が本来の位置からずれてしまう病気です。テリア種などに多く見られ、急激な痛みと視力障害を引き起こします。

これらの疾患は、外見からは判断が難しい場合がありますが、**「元気がない」「光を極端に嫌がる」**といったサインとして現れることが多いです。

 

犬種によって異なる「目の病気」のリスク

犬の目のトラブルには、遺伝的な素因や身体的な特徴が大きく関わっています。

愛犬の犬種が以下のリストに含まれている場合は、日常的なチェックをより念入りに行う必要があります。

 

目のトラブルを起こしやすい主な犬種と特徴

犬種グループ 該当する主な犬種 リスクが高い理由・病気
短頭種(鼻ペチャ犬) パグ、フレンチブルドッグ、シーズー 目が大きく露出しているため傷つきやすい。鼻のシワの毛が目を刺激する。
テリア種 ワイヤーフォックステリア、ジャックラッセル 遺伝的に水晶体脱臼や緑内障を起こしやすい傾向がある。
眼瞼トラブルが多い犬種 トイプードル、柴犬、ゴールデンレトリバー 逆さまつげ(睫毛乱生)や眼瞼内反症の発生率が高い。
ドライアイに注意が必要な犬種 キャバリア、コッカースパニエル 涙の分泌異常が遺伝的に発生しやすい。

短頭種のワンちゃんは、構造的に目が飛び出しているため、日常的な遊びの中でも角膜を傷つけやすい傾向があります。

少しでも目を細める仕草を見せたら、早めに対応することが重症化を防ぐ鍵となります。

 

飼い主さんが自宅ですべきこと・してはいけないこと

愛犬の目が開かないとき、良かれと思って行ったケアがかえって症状を悪化させてしまうことがあります。

正しい応急処置と、絶対に避けるべき行為を理解しておきましょう。

 

最優先ですべきこと:物理的な保護

まず最初に行うべきは、**「これ以上目を触らせないこと」**です。

犬は目に違和感や痛みを感じると、前足でこすったり、床や家具に顔を押し付けたりして刺激を解消しようとします。

しかし、この行為によって角膜の傷が一気に深まり、事態を悪化させてしまいます。

もし自宅にエリザベスカラーがある場合は、すぐに装着してください。

カラーがない場合は、タオルを首の周りに巻いて動きを制限するなど、物理的に目が触れない工夫をしましょう。また、部屋を暗くすることも有効です。

目の痛みがある犬にとって、光は強い刺激(羞明)となるため、カーテンを閉めて静かな環境で休ませることで、本人の負担を軽減できます。

 

絶対にやってはいけないNG行為

混乱している最中であっても、以下の行為は厳禁です。

 

  • 人間用の目薬を差す: 人間用の目薬に含まれる防腐剤や血管収縮剤、ステロイド成分は、犬の目にとって毒になることがあります。特に角膜に傷がある場合、ステロイド入りの点眼薬は傷の治りを遅らせ、穴を開けてしまう原因になります。

  • 無理にまぶたをこじ開ける: 痛みで閉じている目を無理に開けようとすると、眼球に圧力がかかり、眼球破裂などを招く恐れがあります。

  • 水で勢いよく洗う: 水道の塩素が刺激になったり、異物を奥に押し込んだりするリスクがあります。

  • 様子を見すぎる: 「明日になれば治るかも」という期待は、目の疾患においては非常に危険です。

 

自己判断での処置は、愛犬の失明リスクを高めるだけだと心得てください。

 

動物病院を受診する際のポイント

診察をスムーズに進め、正確な診断を受けるためには、飼い主さんからの情報提供が不可欠です。

病院へ向かう前に、以下の項目をメモしておくか、スマートフォンで撮影しておくと役立ちます。

 

獣医師に伝えるべき情報リスト

診察時に以下の情報を伝えると、診断の大きなヒントになります。

 

  1. いつから症状が出たか: 今朝から、数日前から、散歩の直後からなど。

  2. 変化のきっかけ: 散歩中に草むらに入った、シャンプーをした、同居犬と遊んでいたなど。

  3. 目やにの状態: 色(黄色、緑、透明)、量、粘り気。

  4. 全身の状態: 食欲、元気、歩き方の異常(壁にぶつかるなど)。

  5. 既往歴: 過去に目の病気をしたことがあるか、現在使っているサプリメントはあるか。

 

また、**「異常に気づいた直後の目の写真」**があれば非常に有用です。

病院に着く頃には涙で状態が変わっていることもあるため、客観的な記録は獣医師にとって貴重な判断材料となります。

 

病院で行われる主な検査

目の検査は特殊な器具を使用することが多く、以下のような検査が行われるのが一般的です。

 

  • スリットランプ検査: 細い光を当てて、角膜や水晶体の状態を詳細に観察します。

  • フルオレセイン染色検査: 特殊な染料を目に入れ、角膜に傷がないかを調べます。傷がある部分は緑色に染まります。

  • 眼圧測定: 眼球の硬さを測り、緑内障やぶどう膜炎の有無を確認します。

  • シルマー涙液試験: 涙の量を測定し、ドライアイの程度を調べます。

 

検査自体は数分で終わるものが多く、犬に大きな痛みを与えるものではありません。正確な状況把握のために必要なステップですので、安心して任せましょう。

 

治療費と治療期間の目安

飼い主さんにとって気になるのが治療にかかる費用です。症状や原因によって大きく異なりますが、一般的な目安を紹介します。

犬の目の治療費用の目安

疾患名 初診・検査費の目安 治療期間の目安 備考
結膜炎・軽度の角膜炎 5,000円〜10,000円 1週間〜2週間 点眼薬による通院治療が中心。
重度の角膜潰瘍 20,000円〜150,000円 2週間〜1ヶ月 状態によっては角膜保護の手術が必要になる場合がある。
急性緑内障 15,000円〜(緊急処置) 生涯継続 眼圧を下げるための点眼や、外科的処置が必要。
チェリーアイ手術 30,000円〜80,000円 1回の手術 片目あたりの費用。全身麻酔が必要となる。

※費用は病院の規模や地域、犬の体重によって大きく変動します。あくまで参考値として捉えてください。

目の治療は、一度の受診で終わることは稀です。特に角膜の傷や眼圧のコントロールが必要な場合は、数日おきの通院が必要になることもあります。

根気強く治療に向き合うことが、愛犬のQOL(生活の質)を維持することに繋がります。

 

日頃からできる目の健康チェックと予防

愛犬の「目が開かない」という事態を未然に防ぐ、あるいは早期発見するためには、日々の観察が何よりも重要です。

 

  • 毎日、目を見つめる: 明るい場所で左右の目の大きさ、瞳の輝き、白目の色をチェックしましょう。

  • 目周りの清潔を保つ: 短頭種などは目元が汚れやすいため、清潔なガーゼや専用のシートで優しく拭き取ってください。この際、眼球を直接触らないよう注意が必要です。

  • 定期的なトリミング: 目にかかる毛を短くカットすることで、毛による刺激や角膜への傷を予防できます。

  • 散歩ルートの選択: 鋭い草が生い茂っている場所や、砂埃の激しいルートは避けるのが賢明です。

 

「いつもと何かが違う」という飼い主さんの直感は、多くのケースで的中します。

少しでも違和感を抱いたら、躊躇せずに専門家に相談する勇気を持ちましょう。

 

よくある質問

よくある質問

Q:目やにで目が開かない時、お湯で拭いても大丈夫ですか?

A:ぬるま湯を浸した清潔なコットンやガーゼで、まぶたの周囲を優しくふやかしながら拭き取るのは問題ありません。

ただし、無理にこすり取ろうとしたり、眼球に指が触れたりしないよう細心の注意を払ってください。

目やにが出るということ自体が炎症のサインですので、拭き取って目が開くようになったとしても、必ず動物病院を受診して原因を特定してください。

 

Q:高齢犬が目を細めているのは、老化のせいでしょうか?

A:老化によって視力が低下することはありますが、「目を細める(目が開かない)」という行為は痛みや違和感のサインであり、加齢のせいだけで片付けるのは危険です。

高齢犬はドライアイや白内障、緑内障のリスクが高まるため、若い頃よりもさらに目のトラブルに敏感になる必要があります。

 

Q:目薬を嫌がって差せません。どうすればいいですか?

A:犬の背後から抱え込むように保定し、視界の外から(頭の後ろから)目薬を近づけると恐怖心を与えにくいです。

目薬を差した直後におやつを与えるなど、点眼を「良いこと」と結びつけるトレーニングも有効です。

どうしても難しい場合は、獣医師に相談し、点眼のコツを指導してもらうか、塗り薬などの代替案を検討しましょう。

 

まとめ

愛犬の目が開かないという症状は、飼い主さんへの重要な警告サインです。

 

  • 目が白濁している、激しく痛がる場合は即座に夜間救急病院を受診する。

  • 自己判断で人間用の目薬を差すのは、失明を招く恐れがあるため絶対に避ける。

  • エリザベスカラーを装着し、物理的に目を保護してさらなる悪化を防ぐ。

  • 角膜潰瘍や緑内障など、見た目以上に深刻な病気が隠れている可能性がある。

  • 日頃の観察と早期受診が、愛犬の視力を守る唯一の方法である。

 

犬の目は非常に繊細で、一度失われた視力を取り戻すことは容易ではありません。

しかし、飼い主さんが異変にいち早く気づき、適切な医療へ繋ぐことができれば、多くの病気はコントロール可能です。

愛犬がこれからも大好きな飼い主さんの顔を、そして美しい景色をその目で見続けられるよう、今日のその一歩を大切にしてください。