犬の下痢と嘔吐は危険？原因と病院への基準・対処法を徹底解説

愛犬が突然の下痢と嘔吐を繰り返すと、飼い主として不安で胸が締め付けられるものです。

特に嘔吐と下痢が同時に起こると、体内の水分が急激に失われ、命に関わる脱水症状を招く恐れがあります。

本記事では、病院へ行くべき緊急サインのチェックリストや、自宅での正しい応急処置、さらに再発を防ぐための豆知識を解説します。

愛犬の健康を守るための結論を今すぐ確認しましょう。

 

犬の下痢と嘔吐が同時に起きた時の緊急度チェック

愛犬が下痢と嘔吐を同時に発症した場合、最も優先すべきは緊急性の判断です。

犬の体格は人間よりも小さく、特に水分バランスが崩れやすいため、わずかな放置が命取りになるリスクがあります。

まずは、愛犬の状態が以下の「緊急サイン」に該当するかどうかを冷静に確認してください。

少しでも当てはまる場合は、夜間であってもすぐに動物病院を受診することが強く推奨されます。

 

すぐに動物病院を受診すべき危険なサイン

以下の症状が見られる場合は、重篤な疾患や命に関わる状態である可能性が非常に高いです。

「明日まで様子を見よう」という判断が、取り返しのつかない後悔に繋がる注意点となります。

• 激しい嘔吐や下痢が1日に3回以上続く

• 便や吐瀉物に鮮血、または黒っぽい血（タール便）が混じっている

• ぐったりして元気がない、呼びかけへの反応が鈍い

• お腹を触るとひどく痛がる、またはお腹が異常に膨らんでいる

• 異物（おもちゃ、中毒物質、玉ねぎ等）を誤飲した可能性がある

 

特に血便や黒色便は、消化管内での深刻な出血を示唆しており、早急な治療が必要です。

また、小型犬や子犬、高齢犬の場合は体力が乏しいため、症状が軽く見えても急変するリスクが極めて高いです。

数日様子を見ても良いケースと判断基準

一方で、以下のような条件をすべて満たす場合は、一過性の不調である可能性が考えられます。

ただし、これらはあくまで「現時点での目安」であり、飼い主の悩みが消えない場合は受診を優先してください。

 

• 下痢や嘔吐が1回きりで、その後は落ち着いている

• 食欲があり、おやつや水に対して反応が良い

• 尻尾を振る元気があり、普段通りの行動が見られる

• 排泄物の中に異物や血液が混じっていない

 

このような状態であれば、自宅で12時間から24時間程度の安静と食事管理を行いながら経過を観察します。

もし、翌日になっても症状が改善しない場合は、慢性化を防ぐために専門医の診断を受けてください。

以下の表に、受診のタイミングを判断するための基準をまとめました。

 

愛犬が下痢と嘔吐を同時に起こす原因とメカニズム

なぜ、犬は下痢や嘔吐を同時に起こしてしまうのでしょうか。

その理由は多岐にわたりますが、大きく分けると食事、感染症、内臓疾患の3つが主な原因として挙げられます。

 

誤飲・誤食による中毒や腸閉塞のリスク

最も頻繁に見られるのが、食事や異物に関連するトラブルです。

犬は好奇心が強く、散歩中の拾い食いや、家族の食べ残しを食べてしまうことが悩みの種となります。

 

1. 中毒物質の摂取：玉ねぎ、チョコレート、キシリトールなどは犬にとって猛毒です。

2. 異物の誤飲：おもちゃの破片や布などが腸に詰まると、激しい嘔吐と下痢を引き起こします。

3. 食べ過ぎ・急な変更：新しいフードに対応できず、胃腸が過剰に反応してしまうことがあります。

 

特に「いつもと違うもの」を与えた直後に症状が出た場合は、食事が原因である可能性が高いです。

注意点として、油分の多い人間のおかずは膵炎を引き起こすリスクがあるため、絶対に与えないでください。

 

感染症（ウイルス・細菌・寄生虫）の脅威

目に見えない病原体が原因で、激しい消化器症状を引き起こすケースもあります。

これらは特に免疫力が低い子犬や、ワクチン未接種の犬にとって最大のリスクとなります。

 

• ウイルス感染：パルボウイルスは非常に感染力が強く、激しい血便と嘔吐を伴い、致死率も高いです。

• 細菌感染：サルモネラやカンピロバクターなど、不衛生な食べ物や水から感染し、炎症を起こします。

• 寄生虫：回虫やジアルジアなどが腸内に寄生し、粘膜を傷つけることで慢性的な下痢を招きます。

 

感染症が原因の場合、下痢の臭いが非常にきつくなったり、発熱を伴ったりすることが多いのが特徴です。

多頭飼いの場合は、他の犬への感染を防ぐためにも迅速な隔離と消毒が必要不可欠となります。

 

膵炎や急性胃腸炎など内臓の病気

外的な要因だけでなく、愛犬の体内で進行している病気が原因となることもあります。

特に中高齢の犬では、特定の臓器の機能不全が消化器症状として現れることが不安の要因です。

急性膵炎は、脂肪分の多い食事などが引き金となり、膵臓自体が消化液で溶けてしまう恐れのある恐ろしい病気です。

この場合、犬は「祈りのポーズ」と呼ばれる、前脚を伸ばして胸を地面につける独特の姿勢で腹痛を耐えます。

また、腎不全や肝不全といった持病が悪化した場合も、尿毒症によって嘔吐が引き起こされます。

これらの疾患は家庭での判断が困難なため、定期的な健康診断を受けることが最善の予防策と言えます。

 

犬の豆知識

愛犬の健康を深く理解するために、犬特有の体の仕組みを知っておくことは非常に有益です。

人間とは全く異なる進化を遂げた犬の消化器には、驚くべきメリットと構造上の秘密が隠されています。

 

強力な胃酸と人間より短い腸の秘密

犬の胃酸は、人間と比較して非常に強力な酸性（pH1から2程度）を保っています。

これは、野生時代に狩りを行い、生肉や多少鮮度の落ちた肉を食べていた歴史があるためです。

この強酸性の胃酸には強力な殺菌能力があり、多くの細菌を死滅させることができます。

そのため、人間なら食中毒を起こすような状況でも、犬はケロっとしていることがあるのです。

しかし、現代の飼い犬は無菌に近いドッグフードに慣れているため、過信は注意点として禁物です。

強酸性であるがゆえに、空腹が長く続くと自分の胃壁を刺激し、黄色い液体（胆汁）を吐くこともあります。

 

犬が食べ物を丸呑みしても平気な理由

人間の唾液には「アミラーゼ」という、炭水化物を分解する酵素が含まれています。

一方、肉食に近い犬の唾液には、このアミラーゼがほとんど含まれていません。

つまり、犬は口の中で炭水化物を消化することができず、すべて胃と腸に丸投げしている状態です。

犬が食べ物を「丸呑み」にするのは、口で消化する必要がないという体の構造に基づいています。

このため、お米やパンなどの炭水化物を大量に与えると、腸での処理が追いつかず下痢になりやすいのです。

愛犬に食事を与える際は、なるべく消化の負担を減らす形状に工夫することが結論として重要です。

 

嘔吐が人間よりも頻繁に起こる構造的要因

犬を飼っていると、意外と頻繁に吐く姿を目にすることがあるかもしれません。

これには、犬の体が「地面に対して水平」であるという構造的な理由が関係しています。

二足歩行の人間は、重力に逆らって胃の内容物を押し上げる必要があるため、吐くのに大きな力を要します。

しかし、犬は食道と胃が水平なため、比較的少ないエネルギーで内容物を逆流させることが可能です。

また、犬は毒物などを摂取した際、すぐに吐き出せるように反射機能が発達しています。

ただし、吐いた後に「ケロっとしているか」「ぐったりしているか」で緊急度は大きく変わります。

 

自宅での応急処置と回復期に向けた正しいケア

病院に行くべきか迷うとき、あるいは夜間で病院が開いていないときにできることがあります。

正しい知識を持って対応することで、愛犬の苦痛を最小限に抑え、早期回復に繋げることが可能です。

 

絶食・絶水の重要性と安全な進め方

下痢や嘔吐があるとき、胃腸は激しく炎症を起こし、傷ついている状態にあります。

そこに無理やり食べ物を入れると、さらに刺激を与えて症状を悪化させる注意点があります。

そのため、まずは半日から1日（12時間から24時間）の絶食を行い、胃腸を完全に休ませます。

胃の中に何も入れないことで、過剰な動きを抑え、粘膜の修復を促すという大きなメリットがあります。

ただし、水まで完全に断ってしまうと、今度は脱水症状が進行してしまいます。

嘔吐が止まっているようであれば、常温の水を数回に分けて少量ずつ与えるようにしてください。

 

お腹に優しい「回復食」の作り方と与え方

下痢が落ち着き、食欲が戻り始めたからといって、すぐに元の食事に戻すのは厳禁です。

再発を防ぐための結論は、消化に徹底的に配慮した「回復食」を数日間続けることです。

以下の表に、おすすめの食材とその特徴をまとめました。

 

 

これらを、いつもの半分以下の量から始め、1日4回から5回に分けて与えるのがコツです。

数日かけて徐々に元のドッグフードの割合を増やしていくことで、胃腸への負担を最小限に抑えられます。

 

よくある質問（FAQ）

犬が下痢と嘔吐をしていますが、人間用の整腸剤を飲ませても平気ですか？

絶対に避けてください。

人間用の薬には、犬にとって有害な成分（キシリトール等）が含まれているケースが多々あります。

また、下痢を無理に止めることで、体内の毒素や細菌を排出できなくなり、かえって病状が悪化する注意点があります。

必ず獣医師が処方した、犬専用の薬を使用するようにしましょう。

 

黄色い泡のようなものを吐きましたが、これは重病のサインでしょうか？

多くの場合は「胆汁嘔吐症候群」と呼ばれる、空腹による嘔吐であり、直ちに命に関わることは稀です。

胃の中が空っぽになり、逆流した胆汁が胃粘膜を刺激することで発生します。

元気があるなら緊急性は低いですが、食事回数を増やして空腹時間を短くする工夫が必要です。

ただし、何度も繰り返す場合は慢性胃炎の可能性があるため、一度受診することをおすすめします。

 

血便が出ました。鮮やかな赤色と黒っぽい色で違いはありますか？

はい、出血している部位が異なります。

鮮やかな赤色は肛門に近い大腸からの出血で、黒いタール状の便は胃や小腸での出血を示します。

どちらも深刻な事態ですが、特に黒色便は血液が消化されているため、上部消化管の大きなダメージが懸念されます。

どちらの場合もすぐに病院へ行くべきであり、便の写真を撮っておくと診断がスムーズになります。

 

絶食させると体力が落ちてしまわないか、とても不安です。

1日程度の絶食であれば、成犬の体力が極端に落ちる心配はほとんどありません。

むしろ、炎症を起こしている胃腸を休ませることで、自己回復力を高めるメリットの方が大きいです。

ただし、子犬や超小型犬は低血糖を起こすリスクがあるため、完全に断食させる前に獣医師へ相談してください。

水分補給だけは、脱水を防ぐために少量ずつ継続することが重要です。

 

季節の変わり目に下痢をしやすいのですが、何か予防法はありますか？

季節の変わり目は、寒暖差による自律神経の乱れが胃腸の動きに直結します。

お腹を冷やさないように腹巻をさせる、あるいは寝床を暖かく保つことが非常に有効な対策です。

また、日頃からプロバイオティクスを含むサプリメントを活用し、腸内環境を整えておくことも大切です。

ストレスを最小限に抑え、安定した生活リズムを保つことが、愛犬を守る最大の予防策となります。

まとめ

犬の下痢と嘔吐が同時に起こった際、飼い主ができる最大の貢献は「冷静な観察と迅速な判断」です。

ぐったりしている、血便があるといった緊急サインを見逃さず、迷わず獣医師の診断を仰いでください。

一方で、軽度な場合は24時間の絶食と、その後の消化に良い食事が回復への近道となります。

犬の消化システムは人間とは異なり、肉の消化に特化している一方で、炭水化物や油分には弱いという特徴があります。

日頃から愛犬の便の状態や食欲をチェックし、今回学んだ豆知識を健康管理に役立ててください。

あなたの適切なケアが、愛犬の健やかな毎日と、1日でも早い回復を支える一番の薬になるはずです。