世界一大きい犬種ランキング！ギネス記録から寿命・飼い方まで徹底解説

犬という生き物の多様性には、常に驚かされます。手のひらに収まるような小さなチワワから、大人の人間を圧倒するほどの巨体を誇る犬種まで、その差は劇的です。特に世界一大きい犬と呼ばれる存在は、その威風堂々とした立ち振る舞いから、しばしば馬と見間違われることすらあります。

しかし、その巨大な体の内側には、驚くほど繊細で愛情深い心が宿っています。彼らは 優しい巨人（ジェントル・ジャイアント） と称され、多くの愛犬家を魅了してやみません。本記事では、ギネス世界記録に名を刻んだ伝説的な個体から、世界最大級の犬種ランキング、そして彼らと暮らすために必要な覚悟と条件について、詳しく紐解いていきます。

世界一大きい犬とは？ギネス記録の歴史と現在

世界で最も大きい犬を知る上で、欠かせないのがギネス世界記録のデータです。ここでは、身長（体高）と体重、それぞれの視点から歴代最高の記録を保持する犬たちを紹介します。

存命中で最も背の高い犬：ケビン（2024年認定）

2024年、アメリカのアイオワ州に住むグレート・デーンのケビンくんが、存命中で最も背の高い犬としてギネス世界記録に認定されました。彼の体高は 0.97メートル（97センチメートル） に達し、後ろ足で立ち上がった時の高さは2メートルを優に超えるものでした。

ケビンくんの魅力は、そのサイズだけではありません。彼は自分の体の大きさを自覚していないかのような、甘えん坊で臆病な性格をしていました。特に掃除機が苦手で、機械が近づくと一目散に逃げ出してしまうという愛らしい一面を持っていたのです。残念ながら、彼は記録認定のわずか数日後に病気のためこの世を去りましたが、その名は世界中の愛犬家の記憶に刻まれました。

歴代で最も背の高い犬：ゼウス（111.8センチメートル）

史上最も背が高い犬として語り継がれているのが、ミシガン州のゼウスくんです。同じくグレート・デーンの彼は、体高が 111.8センチメートル という驚異的な数値を記録しました。

ゼウスくんが後ろ足で立った時の高さは約2.26メートルに達し、NBAのトッププレイヤーをも凌ぐ高さでした。彼は毎日約1キログラム以上のフードを平らげ、その巨体を維持していましたが、性格は非常に穏やかで、セラピードッグとしても活躍した経験があります。

歴代で最も体重が重い犬：アイカマ・ゾルバ

背の高さではなく、重さで世界を驚かせたのがイングリッシュ・マスティフのアイカマ・ゾルバです。1989年に記録された彼の体重は、なんと 155.6キログラム でした。

これは成人の男性二人分を合わせた重さに相当します。イングリッシュ・マスティフは、もともと闘犬や番犬としての歴史を持つ犬種であり、その筋肉質で重厚な骨格は、見る者に圧倒的な威圧感を与えます。しかし、ゾルバもまた、家族に対しては非常に忠実で穏やかな性格であったと記録されています。

世界一大きい犬種ランキングTOP10

世界には多くの超大型犬が存在しますが、一般的に大きいとされる犬種を体高や体重の基準からランキング形式で紹介します。

第1位：アイリッシュ・ウルフハウンド（体高No.1）

平均的な体高において、世界で最も背が高い犬種とされるのがアイリッシュ・ウルフハウンドです。かつてアイルランドで狼狩りに従事していた歴史を持ち、非常に足が長く、スマートながらも力強い体躯を誇ります。

オスであれば体高は80センチメートルを超え、90センチメートルに達する個体も珍しくありません。全犬種の中で最も背が高い という称号を持ちながらも、性格は非常に内向的で穏やかであり、家庭内では静かに過ごすことを好みます。

第2位：グレート・デーン（ギネス常連）

ドイツ原産のグレート・デーンは、その美しく優雅な立ち姿から 犬の中のアポロン神 と称えられます。ギネス記録の多くをこの犬種が占めており、個体差による巨大化が顕著な犬種です。

体高はアイリッシュ・ウルフハウンドに匹敵し、体重も50キログラムから90キログラム近くまで成長します。飼い主に従順で深い愛情を示しますが、その巨体ゆえに、不意の動作が周囲に影響を与えることもあるため、徹底したトレーニングが欠かせません。

第3位：イングリッシュ・マスティフ（体重No.1級）

体重の重さと、胸周りの厚さにおいて右に出る者はいないのがイングリッシュ・マスティフです。古代ローマ時代から戦士とともに戦ってきた歴史を持ち、その存在感は唯一無二です。

成犬の体重は通常でも80キログラムを超え、重い個体では100キログラムを突破します。性格は非常に落ち着いており、どっしりと構えた様子はまさに 守護神 のようです。ただし、その力は凄まじいため、初心者が扱うには非常に高いハードルがあります。

第4位：セント・バーナード（救助犬の鏡）

アルプス山脈での遭難救助犬として有名なセント・バーナードは、全犬種の中でもトップクラスの重量級です。首にラム酒の樽をぶら下げた姿がイメージされますが、実際にはその大きな体と優れた嗅覚で、雪山に埋もれた人々を何百人も救ってきました。

体重は60キログラムから120キログラムに達することもあり、非常に辛抱強く、子供に対しても優しいことで知られています。よだれが多いという特徴がありますが、それも含めて愛せる飼い主に向いています。

第5位：レオンベルガー

ドイツ原産のレオンベルガーは、ライオンのような立派なたてがみが特徴です。グレート・ピレニーズ、セント・バーナード、ニュートファンドランドを交配して作られたため、超大型犬の長所をすべて兼ね備えています。

体高は70センチメートルから80センチメートル、体重は50キログラムから70キログラム程度です。非常に賢く、状況判断能力に優れているため、家庭犬として非常に優秀なパートナーとなります。

第6位：グレート・ピレニーズ

真っ白で豊かな被毛に覆われたグレート・ピレニーズは、ピレネー山脈で家畜を狼から守る仕事をしていました。もふもふとした外見からぬいぐるみのように見えますが、その中身は非常に勇敢で自立心の強い番犬です。

体重は50キログラム前後ですが、毛量の多さから実際よりも大きく見えることがあります。家族を守ろうとする本能が強いため、無駄吠えを抑えるためのしつけが重要となります。

第7位：ニューファンドランド

水難救助のスペシャリストとして知られるニューファンドランドは、泳ぎが得意な超大型犬です。足には水かきのような膜があり、海で溺れている人を助け出す力強さを持っています。

性格は驚くほど優しく、天然のベビーシッター と呼ばれるほど子供との相性が良い犬種です。水遊びが大好きなので、環境を整えてあげられる飼い主が理想的です。

第8位：チベタン・マスティフ

中国のチベット高原を原産とするこの犬種は、かつてマルコ・ポーロが ロバと同じくらいの大きさで、ライオンのような声で吠える と記した伝説の犬です。

一時期は世界一高価な犬としてニュースになりましたが、その気質は非常に原始的で、警戒心が強く独立しています。誰にでも懐くタイプではないため、熟練した飼い主による管理が必要です。

第9位：ナポリタン・マスティフ

イタリア原産のナポリタン・マスティフは、全身の皮膚が深く垂れ下がった独特の風貌をしています。このしわは、闘犬時代に敵から噛まれた際、致命傷を避けるために発達したと言われています。

外見は強面ですが、家族には非常に甘えん坊な一面を見せます。ただし、見知らぬ人に対しては非常に強い警戒心を示すため、社会化教育が極めて重要です。

第10位：ボルゾイ

ロシアの貴族に愛されたボルゾイは、非常に背が高く、細身で優雅なサイトハウンドです。体高は70センチメートルから85センチメートルに達しますが、体重は35キログラムから45キログラム程度と、他の超大型犬に比べると軽量です。

その分、走る速さは圧倒的で、広い敷地での運動が不可欠です。性格は非常に静かで猫のように気まぐれなところがあり、独特の距離感を楽しむことができます。

超大型犬種の特徴・大きさ比較表

各犬種の平均的な数値を表にまとめました。個体差はありますが、選ぶ際の指標として参考にしてください。

以下の表は、超大型犬種の標準的な体高、体重、寿命を比較したものです。

表を確認すると分かる通り、体が大きい犬種ほど 平均寿命が短い傾向 にあります。特に1メートル近い体高を誇る犬種では、10年生きることが一つの大きな節目となります。

超大型犬を飼うための5つの必須条件

世界一大きい犬と暮らすことは、多くの愛犬家にとっての夢ですが、その実現には高いハードルが存在します。単なる憧れだけでは解決できない、現実的な条件を確認しておきましょう。

1. 圧倒的な居住スペース（リビング13畳以上）

超大型犬にとって、一般的な日本の住宅はあまりに狭すぎることがあります。彼らが家の中で旋回したり、横になって足を伸ばしたりするだけでも、数畳分のスペースが埋まってしまいます。

理想的なのは、リビングだけで13畳以上、さらに個別の休憩スペースとして7畳程度の広さを確保できる環境です。また、関節への負担を減らすために、床材は滑りにくいクッションフロアやマットを敷き詰める必要があります。

2. 経済力（年間費用は小型犬の数倍）

大きさはコストに直結します。食費だけでも、1日に1キログラム近くのフードを食べる犬種であれば、月間で数万円が消えていきます。

さらに高額になるのが医療費です。フィラリア予防薬やノミ・ダニ駆除薬は体重換算で処方されるため、超大型犬の費用は小型犬の5倍以上になることも珍しくありません。また、病気や怪我での手術費用、老後の介護費用など、生涯で数百万円単位の予備費 が必要となります。

3. 散歩と運動の時間確保

彼らの健康を維持するためには、毎日の散歩が欠かせません。1日2回、各1時間程度の散歩は最低ラインです。

ただし、ただ歩くだけでなく、その巨体を支える筋肉を維持するための質の高い運動が求められます。また、夏場は熱中症のリスクが極めて高いため、早朝や深夜の涼しい時間帯に散歩へ行くなど、飼い主側のライフスタイルを犬に合わせる覚悟が必要です。

4. 徹底したしつけと社会化

超大型犬が一度パニックを起こしたり、飛びついたりすれば、それは重大な事故に繋がります。悪気がなくても、その力だけで人間を押し倒し、骨折させてしまう可能性を秘めているのです。

子犬の時期から、どんな状況でも飼い主の指示に従えるような 徹底したトレーニング が義務と言えます。また、多くの人や他の動物に慣れさせる社会化教育を怠ると、外に出ることすら困難な「危険な巨体」になってしまいます。

5. 終末期の介護への覚悟

最も過酷で、かつ最も重要なのが介護の問題です。体重80キログラムを超える犬が自力で歩けなくなった時、あなた一人で支えることができるでしょうか。

排泄の介助、寝返りの補助、病院への運搬など、物理的なパワーが必要となります。自家用車も、超大型犬のケージが載るサイズのミニバンやワゴン車が必須です。彼らとの生活は、最期の瞬間まで全身全霊で向き合う体力と精神力 が求められるのです。

超大型犬の寿命と健康問題：なぜ短いのか？

超大型犬の平均寿命は、小型犬に比べて著しく短いのが現実です。チワワやプードルが15年以上生きることが珍しくない一方で、世界一大きい犬たちは7年から10年でその生涯を閉じることが多いのです。

心臓病や関節疾患のリスク

巨大な体を維持するために、彼らの心臓には常に大きな負荷がかかっています。そのため、心拡大や心不全などの循環器疾患のリスクが非常に高いのです。

また、急速な成長期に骨の形成が追いつかず、股関節形成不全などの関節トラブルを抱えやすい傾向にあります。若いうちからサプリメントの活用や、体重管理を徹底することで、これらのリスクを最小限に抑える努力が必要です。

胃捻転への対策

超大型犬にとって最大の脅威の一つが胃捻転です。食後すぐに激しい運動をしたり、大量の水を飲んだりすることで、胃がガスで膨らみ、捻れてしまう病気です。

胃捻転は発症から数時間で命を落とすこともある恐ろしい疾患です。対策として、食事を数回に分けて少量ずつ与える、食後2時間は静かに過ごさせる、食器台を使って高い位置で食べさせるなどの細心の注意が求められます。

よくある質問

超大型犬に関して、多くの人が抱く疑問をQ＆A形式でまとめました。

Q：マンションで飼うことは可能ですか？

A：基本的にはおすすめしませんが、条件次第では可能です。

マンションの規約で「大型犬可」とされていることはもちろん、エレベーターの広さや、共有スペースでの移動経路を確認する必要があります。ただし、室内での移動の不自由さが犬のストレスになるため、可能な限り庭付きの戸建てや、非常に広いリビングを持つ住居を推奨します。

Q：餌代は月いくらくらいかかりますか？

A：犬種とフードの質によりますが、月額2万円〜5万円程度が目安です。

超大型犬は食べる量が多いだけでなく、関節や皮膚の健康を維持するために高品質なプレミアムフードを選ぶ飼い主が多いため、食費は家計に大きな影響を与えます。おやつ代やサプリメント代を含めると、さらに高額になります。

Q：初心者でも飼える超大型犬はいますか？

A：レオンベルガーやニューファンドランドは、比較的穏やかで賢いため、超大型犬の中では候補に挙がります。

しかし、「初心者」が「大型犬の経験がない」という意味であれば、まずは中型・大型犬の扱いを学んでからの方が賢明です。万が一の際の制御不能な事態を考えると、超大型犬は犬の行動学やしつけに精通した「中上級者向け」の存在と言えます。

まとめ

• 世界一大きい犬種はアイリッシュ・ウルフハウンド、ギネス記録ではグレート・デーンが常連。

• ギネス歴代最高身長は111.8センチメートル、最高体重は155.6キログラム。

• 超大型犬は「優しい巨人」と呼ばれるほど穏やかな性格が多いが、徹底したしつけが必要。

• 飼育には広大なスペース、多額の費用、そして介護をやり抜く強い覚悟が求められる。

• 平均寿命は7〜10年と短く、その分、一日一日を大切に過ごす心の準備が必要。

世界一大きい犬と過ごす時間は、他の何物にも代えがたい特別な体験です。彼らの圧倒的な存在感、包み込むような優しさ、そして信頼を寄せてくれる時の重み。それは、飼い主の人生観を変えてしまうほどの力を持っています。

しかし、その素晴らしさは、彼らの短い命を全力で支え、守り抜くという 重い責任 の上に成り立っています。この記事を通じて、彼らの魅力だけでなく、その現実についても理解を深めていただけたなら幸いです。もしあなたが、すべての条件をクリアし、彼らを家族として迎える準備が整っているのなら、そこには計り知れない愛に満ちた日々が待っていることでしょう。