- 「最近、どうも体が重だるい…」
- 「急に立ち上がるとめまいがする…」
- 「理由もなく頭痛が続く…」
……そんな不調を感じていませんか?
多くの人が「健康のために減塩」と意識する現代ですが、実は知らないうちに「塩分不足(低ナトリウム血症)」に陥り、体に深刻なダメージを与えているケースが少なくありません。
特に暑い時期やスポーツ後、あるいは高齢者の日常において、塩分不足は熱中症の引き金となり、最悪の場合は命に関わることもあります。
この記事では、医療現場でも用いられる客観的なチェック方法から、家庭ですぐに試せる身体サインの見分け方まで、塩分不足の有無を判断するための全知識を網羅しました。
自分の、そして大切な家族の健康を守るために、ぜひ最後まで読み進めて、現在の状態を正しく評価してください。
もくじ
塩分不足(低ナトリウム血症)とは?体への影響とメカニズム
そもそも、塩分(ナトリウム)が不足するとは体の中で何が起きている状態を指すのでしょうか。
私たちの体液には一定の割合で塩分が含まれており、細胞の機能を正常に保つために極めて重要な役割を果たしています。
医学的には、血液中のナトリウム濃度が135mEq/L(ミリ当量パーリットル)未満になった状態を「低ナトリウム血症」と呼びます。
ナトリウムは主に細胞の外(細胞外液)に存在し、細胞の内外の「浸透圧」を調節しています。浸透圧とは、簡単に言えば「水分を引き寄せる力」のことです。
血液中のナトリウム濃度が低い状態(低ナトリウム血症)では、水分が細胞内に移動しやすくなり、細胞がパンパンに膨らんでしまう細胞浮腫を生じて神経症状を引き起こすことがあります。
(ただし、これは重度または急激な低ナトリウム血症で見られる現象です。)
また、ナトリウムは筋肉の収縮や神経の伝達にも不可欠です。不足すれば「足がつる」「力が入らない」「思考がまとまらない」といった物理的・精神的な不具合がダイレクトに現れます。
今すぐ確認!塩分不足セルフチェックリスト
まずは、現在のあなたの生活習慣や体感を振り返ってみましょう。以下の項目に当てはまるものが多いほど、体内での塩分バランスが崩れている可能性が高くなります。
以下の表は、塩分不足のリスクを高める要因と、現れやすいサインを整理したものです。
| チェック項目 | 内容・具体的な状況 | リスクレベル |
| 大量の発汗 | スポーツ、炎天下の作業、お風呂で大量に汗をかいた | 高 |
| 水だけを飲んでいる | 喉が渇いた際、スポーツドリンク等ではなく真水のみを多飲している | 高 |
| 食事の内容 | 3食すべてにおいて醤油や塩を極端に控える「超減塩」を続けている | 中 |
| 筋肉の違和感 | 足がつりやすくなった、まぶたや手足がピクピクする | 中 |
| 頭の重さ・痛み | ズキズキとした頭痛、頭が重くスッキリしない感じが続く | 中 |
| 精神的な変化 | 集中力が続かない、何をするのも億劫、イライラしやすい | 中 |
| 排泄の変化 | 尿の量が極端に少ない、または逆に異常に多い(水中毒の疑い) | 高 |
もし3つ以上当てはまる項目がある場合、あるいは「大量の発汗」と「水だけを飲んでいる」がセットになっている場合は、水分・電解質バランスが崩れている可能性があり、血液検査が必要です。
このチェックリストはあくまで目安ですが、「自分の感覚」を過信せず、客観的な数値や身体の変化に目を向けることが、重症化を防ぐ第一歩となります。
「身体所見」による客観的チェック法
自覚症状だけでなく、体に現れる「物理的なサイン」を確認することで、より確実に塩分・水分不足を判断できます。
ここでは、医師や看護師が脱水や電解質異常を疑う際に行うチェック方法を、家庭向けにアレンジして紹介します。
1. 爪押しチェック(CRT:毛細血管再充満時間)
指先の血流を見ることで、体内の循環が正常かどうかを判断します。
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方法: 親指の爪を、反対側の指で「白くなるまで」強く5秒ほど圧迫します。
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確認: ぱっと指を離したとき、爪の色が元のピンク色に戻るまでの時間を計ります。
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判定: 3秒以上かかる場合は、血液の循環が悪くなっており、塩分・水分不足による脱水の疑いが非常に強いです。
2. 皮膚つまみチェック(ツルゴールテスト)
肌の弾力(ハリ)を確認することで、細胞外液が不足していないかを調べます。
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方法: 手の甲の皮膚を親指と人差し指でつまみ上げ、そのまま2〜3秒キープしてから離します。
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確認: つまんだ皮膚が、元の平らな状態にスッと戻るかどうかを見ます。
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判定: 皮膚の山が消えずに数秒間残る場合(ハンカチーフ徴候)、細胞内の水分が著しく不足しています。これは高齢者において特に重要なサインとなります。
3. 尿の色チェック
腎臓は体内の塩分と水のバランスを保つ司令塔です。尿の状態は、体内の状況を最も雄弁に物語ります。
| 尿の色 | 体内の状態 | 必要なアクション |
| 透明〜薄い黄色 | 正常 | 現状を維持してください。 |
| 濃い黄色〜山吹色 | 水分・塩分が不足気味 | コップ1〜2杯の水分補給が必要です。 |
| 茶褐色・琥珀色 | 深刻な不足(脱水) | 至急、塩分を含む水分の補給が必要です。 |
※ビタミン剤の服用などで色が変わる場合がありますが、基本的には「色が濃くなるほど危険」と覚えておきましょう。
4. 脇の下の乾燥・口内の粘つき
健康な状態であれば、脇の下は常に少ししっとりとしています。ここが完全に乾いてカサカサしている場合、体はすでに汗を出す余裕さえないほどの深刻な不足状態にあります。
また、口の中がネバネバして舌が上顎に張り付くような感覚がある場合も、塩分不足を伴う脱水の典型的なサインです。
これらの身体所見は、「喉が渇いた」と感じる前、あるいは感覚が鈍っている時でも確認できるため、定期的にチェックする習慣をつけることが重要です。
段階別:塩分不足が引き起こす恐ろしい症状
塩分不足の恐ろしい点は、「最初はただの疲れに見える」ことです。しかし、血中ナトリウム濃度が下がるにつれて、症状は確実に悪化していきます。
【初期:軽度】なんとなくの不調
ナトリウム濃度が130〜135mEq/L程度。
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軽い頭痛や頭重感: 脳細胞がわずかに膨らみ始めることによる圧迫感です。
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食欲不振・吐き気: 消化管の動きが鈍くなり、食べ物を受け付けなくなります。
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倦怠感(だるさ): 筋肉や神経へのエネルギー伝達がスムーズに行かなくなります。
多くの人が「寝不足かな?」「少し疲れているだけだ」と見過ごしてしまう段階です。
しかし、ここで「水だけ」を飲んでしまうと、さらにナトリウムが薄まり、一気に中等度へ進行するため注意が必要です。
【中期:中等度】明らかな異常
ナトリウム濃度が120〜130mEq/L程度。
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激しい吐き気・嘔吐: 体がこれ以上の水分過多を拒絶し、排出を試みる反応です。
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筋肉のけいれん・こむら返り: 足が激しくつる、筋肉がピクピクと勝手に動く。
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意識の混濁(精神不穏): 集中力が完全に欠如し、つじつまの合わないことを言ったり、ぼーっとしたりします。
この段階になると、自力での的確な判断が難しくなります。 周囲の人間が異変に気づき、経口補水液を飲ませるなどの介入が必要です。
【重症:深刻】命の危険
ナトリウム濃度が120mEq/L未満。
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全身のけいれん(発作): 脳の異常放電により、全身が震え、意識を失います。
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昏睡: 呼びかけに反応しなくなり、深い眠りから覚めない状態になります。
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呼吸停止: 脳幹が圧迫されることで、呼吸を司る機能が停止します。
ここまで来ると、家庭での対応は不可能です。一刻も早い救急搬送と、病院での点滴治療(高張食塩水の投与など)が生存の絶対条件となります。
塩分が不足してしまう4つの主な原因
なぜ、普通に生活しているつもりでも塩分が不足してしまうのでしょうか。主な原因は以下の4つに集約されます。
1. 大量の発汗による流失
最も分かりやすい原因です。汗は水だけでなく、ナトリウムも含んでいます。
特に高温多湿の環境下や長時間の運動では、大量の塩分が体外へ排出されます。
この時、「汗をかいた分だけ水で補う」という行動が、実は一番危険です。
水だけを飲むと、血液中のナトリウム濃度がさらに下がり、「自発的脱水」と呼ばれる状態に陥ります。
2. 水中毒(希釈性低ナトリウム血症)
「1日2リットルの水を飲みましょう」という美容・健康法を誤解し、短時間に大量の真水を摂取することで起こります。
腎臓が尿として処理できる能力(1時間あたり約800ml〜1リットル程度)を超えて水を飲むと、血液が薄まり、ナトリウム濃度が急低下します。
水の飲み過ぎは、毒にもなり得るという認識を持つべきです。
3. 利尿薬などの服用
血圧を下げるための降圧薬(特に利尿薬成分を含むもの)や、心不全、腎不全の治療薬を服用している方は、薬の作用でナトリウムが尿中に排泄されやすくなっています。
「減塩するように言われているから」と徹底的に塩を抜いている時に、薬の作用が重なると、予期せぬ低ナトリウム血症を招くことがあります。
4. 高齢による感覚の低下と低栄養
高齢になると、喉の渇きを感じる「口渇中枢」の機能が低下します。
また、食事量が減り、お茶と漬物、白米だけといった「低タンパク・低塩分」の食事が続くことで、慢性的な塩分不足に陥りやすくなります。
「喉が渇いていないから飲まない」「あっさりした物しか食べない」という習慣が、隠れ塩分不足を加速させます。
効率的な塩分補給のガイド:何をどう摂るべきか
チェックの結果、塩分不足が疑われる場合、どのように補給するのがベストなのでしょうか。
飲み物の選び方
ただの水を飲むのではなく、「塩分(ナトリウム)と糖分」がバランスよく配合されたものを選びます。糖分が含まれていると、小腸でのナトリウムの吸収スピードが劇的に上がるためです。
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経口補水液(OS-1など): 塩分濃度が高く、脱水・塩分不足時の「飲む点滴」として最も推奨されます。
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スポーツドリンク: 運動時のエネルギー補給には適していますが、重度の塩分不足には塩分量がやや足りない場合があります。
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手作り補水液: 水1リットルに対し、砂糖40g、塩3g(小さじ半分強)を混ぜることで代用可能です。
食品による補給
日常の食事から自然に補う方法です。
| おすすめの食品 | 特徴・メリット |
| 味噌汁 | 水分、塩分、さらにカリウムやアミノ酸も摂れる最強の補給食です。 |
| 梅干し | 塩分に加え、疲労回復を助けるクエン酸が豊富に含まれています。 |
| 塩タブレット | 外出時やスポーツ中に手軽に補給でき、保存性にも優れています。 |
| 漬物 | 少量で効率よく塩分を摂取でき、発酵食品としてのメリットもあります。 |
高血圧の人でも塩分補給は必要なのか?
「私は高血圧で医師から減塩を命じられているけれど、塩分不足チェックで当てはまった。どうすればいい?」という疑問は非常に多いです。
結論から言えば、「大量に汗をかいた時」や「激しい下痢・嘔吐がある時」に限っては、高血圧の人でも塩分補給が必要です。
高血圧の治療は「慢性的な塩分過多」を抑えるためのものであり、急激な体液流失による「急性的な塩分不足(脱水)」は別の緊急事態として扱う必要があるからです。
ただし、補給しすぎれば当然血圧は上昇します。「失った分だけを補う」という意識を持ち、経口補水液を少しずつ口にするなど、慎重な対応が求められます。
不安な場合は、あらかじめ主治医に「夏場の熱中症対策としての塩分摂取」について相談しておくのが最も安全です。
病院へ行くべき受診の目安と診療科
セルフチェックの結果、以下のような症状が見られる場合は、迷わず医療機関を受診してください。
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水を飲んでも吐いてしまう。
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頭痛が激しく、脈打つような痛みがある。
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名前を呼んでも反応が鈍い、会話が噛み合わない。
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全身に力が入らず、歩行が困難。
受診すべき診療科は、基本的には「内科」です。緊急性が高い(意識がない、けいれんしている)場合は、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください。
低ナトリウム血症の治療は、血液検査で正確な値を測定し、適切な濃度の輸液を管理された環境で行う必要があります。
自己判断での無理な水分摂取は、状況を悪化させる危険があることを忘れないでください。
よくある質問
Q:塩分不足になると、逆に「むくむ」ことがあるのはなぜですか?
A:体内の塩分濃度が下がると、体はそれ以上濃度を下げないよう、水分を尿として排出する機能をストップさせます。
結果として、血管の外に水分が染み出し、顔や手足がパンパンにむくむことがあります。
「むくんでいる=塩分を摂りすぎている」とは限らず、実は塩分不足による調節異常である可能性があるのです。
Q:1日の塩分摂取量の目安は、不足を考えるとどれくらいが理想ですか?
A:厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性で7.5g未満、女性で6.5g未満が目標量とされています。
しかし、これは「健康を維持し生活習慣病を防ぐための上限」としての意味合いが強いです。
大量の汗をかく環境にいる場合は、この数値にこだわらず、体感や身体サインに合わせて適宜上乗せする必要があります。
Q:市販の「塩飴」だけで対策しても大丈夫でしょうか?
A:一時的な補給には有効ですが、塩飴だけでは水分が不足します。
また、糖分が非常に多いため、血糖値への影響も無視できません。
必ずコップ1杯程度の水と一緒に摂取するか、最初からバランスの取れた経口補水液を利用することをおすすめします。
Q:冬でも塩分不足になることはありますか?
A:はい、十分にあり得ます。
冬は空気が乾燥しているため、自覚のないまま皮膚や呼気から水分が失われる「不感蒸泄」が増えます。
また、寒さで喉の渇きを感じにくくなり、水分・塩分の摂取量が減ることで、冬の隠れ脱水・塩分不足が引き起こされます。
暖房の効いた部屋に長時間いる場合は、夏場同様の注意が必要です。
Q:子供が塩分不足かどうかを見分けるポイントはありますか?
A:子供、特に乳幼児は自分の不調を言葉で説明できません。
「おしっこの回数が極端に少ない(半日以上出ていない)」「泣いているのに涙が出ない」「目がくぼんでいる」「機嫌が異常に悪い」といったサインに注目してください。
子供は大人よりも体液の入れ替わりが激しいため、不足状態になると急激に悪化します。
まとめ
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塩分不足(低ナトリウム血症)は、脳や筋肉の機能を麻痺させる深刻な状態である。
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「爪押し」や「皮膚つまみ」など、家庭でできる物理的なチェック法を習慣にする。
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喉が渇いた時に「水だけ」を飲むのは、塩分濃度をさらに下げるため厳禁である。
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大量発汗時や高齢者の食事では、味噌汁や経口補水液を賢く活用する。
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意識混濁や激しい嘔吐がある場合は、一刻も早く病院(内科)を受診する。
私たちの体は、絶妙なミネラルバランスによって支えられています。健康を意識するあまり、「塩=悪」という固定観念に縛られてはいけません。
現在の自分の体調、活動量、そして環境を冷静に見極め、「必要な時に、必要なだけの塩分を摂る」こと。それが、健やかな毎日を送るための、最もシンプルで確実な答えなのです。
もし少しでも不安を感じたら、まずは今すぐ、あなたの指先の爪をぎゅっと押して、その戻り具合を確かめてみてください。


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