ポメラニアンを飼い始めて最初に直面する壁、それが「想像を絶する抜け毛の量」です。
朝掃除機をかけたのに、昼には部屋の隅に綿あめのような毛が転がっている……。この抜け毛に悩まされないポメラニアンライフは存在しません。
しかし、ポメラニアンの毛の仕組みを正しく理解し、効率的なケアと掃除術を身につければ、抜け毛のストレスは劇的に軽減できます。
この記事では、ポメラニアン特有の毛の性質から、プロが実践するブラッシング術、そして見逃してはいけない病気のサインまで、飼い主が知っておくべき全知識を網羅しました。
もくじ
ポメラニアンの抜け毛はなぜ多い?「ダブルコート」の仕組み
ポメラニアンの抜け毛が多い最大の理由は、彼らが「ダブルコート(二重構造)」の被毛を持っているからです。これは寒い地域で体温を維持するために発達した、生存戦略の結果です。
2種類の毛の役割
ポメラニアンの被毛は、役割の異なる2層で構成されています。
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オーバーコート(上毛): 外側に生えている長くてしっかりした毛。皮膚を保護し、日光や水分を弾く役割。
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アンダーコート(下毛): 根元に密集しているふわふわした柔らかい毛。体温を逃がさない断熱材の役割。
このうち、季節の変わり目に大量に抜け落ちるのが「アンダーコート」です。 密集度が高いため、一度抜けると驚くほどのボリュームになります。
抜け毛を放置するリスク
「抜けるのは自然なことだから」と放置するのは危険です。抜けたアンダーコートが体に残ったままだと、通気性が悪くなり、湿疹や膿皮症などの皮膚トラブルを引き起こします。また、毛玉になると皮膚が引っ張られて痛みを感じ、愛犬のストレスになることもあるのです。
【時期別】ポメラニアンの換毛期はいつからいつまで?
ポメラニアンには、年に2回、毛がごっそり生え変わる「換毛期」があります。この時期を知っておくだけで、心の準備と対策の強化がしやすくなります。
春の換毛期(3月〜5月頃)
冬の寒さから身を守っていた厚い冬毛(アンダーコート)が抜け、風通しの良い夏毛に変わる時期です。1年の中で最も抜け毛が激しいシーズンであり、毎日ブラッシングしても追いつかないほどの量が抜けます。
秋の換毛期(9月〜11月頃)
夏毛が抜け、冬に備えて密度が高く保温性に優れた冬毛が生えてくる時期です。春ほどではありませんが、やはり通常時よりは抜け毛が増えます。
室内飼育による「時期のズレ」に注意
現代のポメラニアンは、エアコンの効いた快適な室内で暮らしているため、季節感を失い、換毛期の時期がズレたり、一年中ダラダラと抜け続けたりすることがあります。「冬なのにすごく抜ける」という場合も、温度管理の影響であることが多いので過度に心配する必要はありません。
換毛期カレンダー(目安)
| シーズン | 時期 | 抜け毛の質 | ケアのポイント |
| 春(換毛期) | 3月〜5月 | 大量の冬毛(アンダーコート) | 1日2回の徹底ブラッシング |
| 夏(通常期) | 6月〜8月 | 少量のオーバーコート | 皮膚の蒸れ対策、週2回のシャンプー |
| 秋(換毛期) | 9月〜11月 | 夏毛から冬毛への入れ替え | 毛玉防止、保湿ケア |
| 冬(通常期) | 12月〜2月 | 比較的落ち着く | 静電気対策、皮膚の乾燥チェック |
子犬限定の試練?「猿期(さるき)」の抜け毛とその後
生後3ヶ月から8ヶ月頃のポメラニアンを育てている飼い主さんが、真っ青になる現象があります。それが「猿期(猿顔期)」です。
猿期とは何か
子犬の柔らかい毛から成犬のしっかりした被毛に生え変わる際、一時的に顔や体の毛がスカスカになり、特におでこのあたりが猿のようなM字模様になる現象を指します。「このままハゲてしまうのでは?」と不安になりますが、これは健康な成長過程です。
猿期を乗り越える楽しみ
猿期が終わると、1歳を過ぎた頃には見違えるほど豪華な「爆毛」ポメラニアンへと変身します。この時期にしか見られないユニークな姿は、愛犬家にとっての貴重な思い出です。 抜け毛をしっかりケアしつつ、変化をポジティブに楽しみましょう。
プロが教える!ポメラニアンの正しいブラッシング手順
ポメラニアンのブラッシングは、ただ表面を撫でるだけでは意味がありません。根元に溜まった抜け毛をしっかり取り除くのがコツです。
ステップ1:コームで毛玉チェック
まずは粗目のコーム(クシ)で、全身を軽くとかします。ここで引っかかる場所があれば、そこに毛玉が隠れています。無理に引っ張らず、指で少しずつほぐすのが愛犬に痛い思いをさせない秘訣です。
ステップ2:スリッカーブラシで「層」を分ける
ポメラニアンの毛は厚いため、一気に梳かそうとせず、毛をめくり上げて「皮膚の根元が見える状態」からブラッシングします。皮膚を直接ガリガリとこすらないよう、ブラシは皮膚と並行に動かすことを意識してください。
ステップ3:内股や耳の後ろを念入りに
脇の下、内股、耳の後ろは特に毛玉ができやすく、抜け毛が溜まりやすい場所です。ここは愛犬が嫌がりやすい部位でもあるため、声をかけたりおやつをあげたりしながら、短時間で済ませましょう。
目的別・おすすめ抜け毛対策ブラシ3選
道具選び一つで、ブラッシングの効率は10倍変わります。ポメラニアン飼い主が持っておくべき「三種の神器」をご紹介します。
1. スリッカーブラシ(ソフトタイプ)
ポメラニアンのブラッシングにおいてメインとなる道具です。針金のようなピンがアンダーコートにしっかり届き、抜け毛を絡めとります。初心者の方は、肌へのあたりが優しい「ソフトタイプ」を選ぶのが正解です。
2. コーム(金櫛)
仕上げや、細かい場所の毛玉チェックに使用します。ピンの感覚が広いものと狭いものがセットになったタイプが使い勝手が良く、プロのトリマーも愛用しています。
3. ファーミネーター(小型犬・長毛種用)
「とにかく抜け毛をごっそり取りたい!」という時の最終兵器です。アンダーコートだけを効率的に除去する特殊な刃を持っており、換毛期の時短に最適です。ただし、使いすぎると毛が薄くなりすぎたり、皮膚を傷めたりすることがあるため、週1回程度の使用に留めましょう。
部屋の抜け毛を1/10に!驚きの掃除ハックと便利グッズ
掃除機をかけるだけではポメラニアンの抜け毛には勝てません。効率的に部屋を綺麗に保つ裏ワザをご紹介します。
カーペットには「ゴム手袋」が最強
カーペットの奥に入り込んだ毛は、掃除機では吸いきれません。ここで役立つのが、100均のゴム手袋です。ゴム手袋をはめてカーペットを円を描くように撫でるだけで、摩擦によって驚くほど大量の毛が集まり、まとまります。 これをやってから掃除機をかけると、驚くほどスッキリします。
布製品には「エチケットブラシ」や「ぱくぱくくん」
粘着式のコロコロはすぐに紙がなくなってしまい、コスパが悪いです。繰り返し使える「ぱくぱくくん(日本シール製)」などのエチケットブラシは、ソファやベッドの毛を根こそぎ絡めとってくれるため、ポメ飼い主の必須アイテムです。
空気清浄機とサーキュレーターの併用
ポメラニアンの毛は非常に軽いため、空中を舞います。サーキュレーターで空気を循環させ、高性能な空気清浄機で吸い取ることで、家具に積もる毛の量を劇的に減らすことができます。 フィルター掃除はこまめに行いましょう。
その抜け毛は危険かも?病気が疑われるチェックリスト
「最近、毛の抜け方がおかしい」と感じたら、それは単なる換毛期ではなく病気のサインかもしれません。
注意すべき「異常な抜け毛」の特徴
以下の症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診してください。
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左右対称に脱毛している
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皮膚が黒ずんでいる(色素沈着)
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異常に痒がっている、または湿疹がある
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毛の質がバサバサになり、艶がなくなった
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頭や手足以外の毛が全体的に薄くなっている
ポメラニアン特有の「アロペシアX(脱毛症X)」
ポメラニアンに非常に多い原因不明の脱毛症です。命に関わる病気ではありませんが、首の周りや太ももから毛が抜け始め、最終的には頭と手足以外の毛がなくなってしまうことがあります。 早期発見と適切なケア(去勢・避妊、サプリメント、投薬など)で発毛が促されるケースもあります。
よくある質問
Q:バリカンで短くカット(サマーカット)すれば抜け毛は減りますか?
A:おすすめしません。 ポメラニアンの毛をバリカンで短く刈ると、「ポストクリッピング・アロペシア(バリカン後脱毛症)」といって、二度と元のふわふわな毛が生えてこなくなるリスクがあります。また、紫外線を直接浴びることで皮膚を傷めたり、体温調節ができなくなったりすることもあります。短くしたい場合は、ハサミでの「柴犬カット」程度に留めましょう。
Q:シャンプーの頻度はどのくらいが適切ですか?
A:月に1〜2回が目安です。 シャンプーは不要な抜け毛を一気に洗い流す絶好のチャンスですが、頻繁すぎると皮膚のバリア機能を壊してしまいます。換毛期には、シャンプー前の徹底的なブラッシングで抜け毛を落としておくことが、仕上がりを綺麗にするコツです。
Q:ブラッシングを嫌がって逃げるのですが、どうすればいいですか?
A:「ブラシ=嫌なこと」という記憶を「ブラシ=おやつがもらえる嬉しいこと」に上書きする必要があります。 ブラシを見せるだけでおやつ、一回撫でたらおやつ、というように、超スモールステップで進めてください。最初は1分で切り上げる勇気も必要です。
Q:洋服を着せると抜け毛対策になりますか?
A:一時的な飛散防止には効果的です。 ドッグカフェや友人の家に行く際など、毛を散らしたくない時に洋服を着せるのは良いマナーです。ただし、長時間着せっぱなしにすると中で毛玉ができやすくなるため、帰宅後は必ず脱がせてブラッシングをしましょう。
Q:食事で抜け毛を減らすことはできますか?
A:抜け毛そのものを止めることはできませんが、良質なタンパク質とオメガ3・6脂肪酸を含む食事は、健康で丈夫な被毛を育てます。 毛並みが良くなることで毛玉ができにくくなり、結果として日々の手入れが楽になるというメリットがあります。
まとめ
ポメラニアンの抜け毛は、彼らが健康で美しく、そして厳しい季節の変化に対応しようとしている証拠でもあります。確かに掃除やケアは大変ですが、その手間の分だけ、ポメラニアンは最高のふわふわ感と愛らしさで私たちに応えてくれます。
抜け毛を「敵」として戦うのではなく、正しい知識と便利なツールを使って「上手に共生する」ことを目指しましょう。毎日数分のブラッシング時間は、愛犬との絆を深める大切なスキンシップの時間でもあります。あなたが愛情を込めて梳かしてあげたその一掻きが、愛犬の健康な皮膚と、輝くような被毛を作っていくのです。 抜け毛を乗り越えた先にある、ポメラニアンとの彩り豊かな生活を、ぜひ心ゆくまで楽しんでください。




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ポメラニアンはダブルコートであり、アンダーコートが大量に抜けるのは自然な仕組みである
換毛期(春・秋)は特に念入りなケアが必要だが、室内環境により時期がズレることもある
子犬期の「猿期」は成長の証であり、病気ではないため安心して見守る
ブラッシングは「皮膚の根元」から毛をめくって行うのがプロの技術
掃除には掃除機だけでなく、ゴム手袋やエチケットブラシを活用すると効率が上がる