「愛犬のベッドに血がついている!」
「これって病気?それとも生理?」
初めてメス犬を迎えた飼い主さんにとって、突然の出血は驚きや不安を感じる瞬間です。
犬の生理(ヒート)は、避妊手術をしていないメス犬なら誰もが通る自然な身体の変化ですが、出血の期間や量、その時の愛犬の精神状態については、意外と詳しく知られていません。
この記事では、犬の生理がいつ始まり、どれくらい続くのかという基礎知識から、お部屋を汚さないためのおむつ対策、散歩の注意点までをわかりやすく解説します。
生理と間違えやすい恐ろしい病気のサインも紹介しますので、愛犬の健康を守るためにぜひ最後まで目を通してください。
もくじ
犬の生理(ヒート)とは?期間とサイクル
犬の生理は専門用語で「発情期(ヒート)」と呼ばれ、人間のような子宮内膜が剥がれ落ちる月経とは仕組みが異なります。
妊娠の準備が整ったサインであり、飼い主さんには正しい知識と心の準備が必要です。
初めての生理はいつくる?
一般的に、初めての生理(初回発情)は生後6ヶ月〜10ヶ月頃に訪れます。
ただし、これには個体差や犬種による違いが大きく関係します。
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小型犬:早ければ生後6ヶ月頃から始まります。
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大型犬:成長がゆっくりなため、生後10ヶ月〜1歳過ぎてから始まることも珍しくありません。
もし1歳半〜2歳を過ぎても初めての生理が来ない場合は、ホルモン異常や生殖器の発達不全の可能性があります。一度かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
生理の期間と出血量はどれくらい?
犬の生理期間は、個体差がありますが約2週間〜3週間(14〜21日程度)続きます。
出血量は犬の体の大きさによって異なります。
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小型犬:ポタポタと床に落ちるほどではなく、自分で舐めて処理してしまうため、飼い主さんが気づかないケースもあります。
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中型・大型犬:出血量が多めで、床やソファに血痕がついて初めて気づくことが多いです。
出血の色は、最初は濃い赤色(鮮血)ですが、期間の後半になるとピンク色や薄い茶色へと変化し、徐々に量が減っていきます。
避妊手術をしていない場合の周期
犬の発情周期は、およそ6ヶ月〜8ヶ月に1回(年に2回程度)のペースで訪れます。
人間の生理のように毎月来るわけではありません。周期には以下の4つのステージがあります。
| ステージ | 期間 | 特徴 |
| 発情前期 | 7〜10日間 | 陰部が腫れ、出血が始まる。オス犬を惹きつけるが交尾は許容しない。 |
| 発情期 | 7〜10日間 | 出血が薄くなる。排卵が起こり、オス犬を受け入れる(妊娠可能時期)。 |
| 発情休止期 | 2ヶ月程度 | 発情が終わり、ホルモンバランスが元に戻る時期。 |
| 無発情期 | 4〜8ヶ月 | 卵巣が活動を休止している期間。 |
このサイクルは年齢とともに間隔が空くことがありますが、犬に閉経はありません。避妊手術をしない限り、生涯にわたって生理は続きます。
犬の生理中に見られる主な症状と行動
生理中の犬は、ホルモンバランスの激しい変化により、普段とは違う様子を見せることがあります。
「いつもより言うことを聞かない」
「元気がない」
と感じたら、それはヒートの影響かもしれません。
身体的な変化(陰部の腫れ・出血)
最もわかりやすいサインは、陰部(外陰部)の著しい腫れです。
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通常時の2〜3倍の大きさに膨らむことがあります。
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頻繁に陰部を気にして舐める仕草が増えます。
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乳首が少し大きくなったり、赤みを帯びたりすることもあります。
出血が始まると、部屋のあちこちに血がついたり、独特のにおい(フェロモン臭)を発したりします。人間にはあまり感じ取れませんが、オス犬にとっては強烈な誘引臭となります。
行動や性格の変化(落ち着きがない)
生理中は精神的にも不安定になりやすい時期です。以下のような行動の変化が見られます。
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ソワソワして落ち着きがない
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飼い主に対していつも以上に甘えん坊になる
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些細な物音に敏感になる
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攻撃的になり、他の犬や人に唸る
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頻繁におしっこをする(マーキング行動)
普段はお利口な子でも、トイレを失敗したり、コマンドに従わなかったりすることがありますが、これらは本能的な行動です。決して強く叱らないであげてください。
食欲の変化と体調不良
ホルモンの影響で、一時的に体調を崩す子もいます。
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食欲不振:ご飯を食べなくなったり、好みが変わったりします。
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元気がない:一日中寝ていたり、散歩に行きたがらなかったりします。
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下痢や嘔吐:ストレスでお腹が緩くなることがあります。
生理が終われば自然と回復することがほとんどですが、全く水を飲まない、ぐったりしているといった場合は、生理以外の病気の可能性も疑いましょう。
生理中の犬への正しい接し方とケア方法
生理中の愛犬はデリケートです。飼い主さんは衛生管理とメンタルケアの両面でサポートしてあげる必要があります。
散歩やお出かけの注意点
生理中でも散歩に行くこと自体は問題ありません。気分転換や運動不足解消のためにも、体調が良いなら連れて行ってあげましょう。
ただし、以下の点に厳重な注意が必要です。
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オス犬との接触を避ける:ドッグランや犬が多い公園は絶対に行かないでください。オス犬を興奮させ、トラブルや望まない妊娠の原因になります。
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ルートと時間帯を変える:他の犬に会いにくい時間帯を選びましょう。
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ダブルリードにする:発情中のメス犬は、オスを求めて脱走しようとする本能が強まることがあります。
おむつやマナーパンツの活用法
室内での出血汚れを防ぐには、犬用のおむつやサニタリーパンツが必須アイテムです。
メリット:
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ソファやカーペットの汚れを気にせず生活できる。
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ドッグカフェや病院など公共の場でのマナーになる。
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頻繁に舐めるのを防ぎ、炎症を予防できる。
注意点:
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こまめに交換する:長時間つけっぱなしにすると、蒸れて「おむつかぶれ」や膀胱炎の原因になります。
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サイズ選び:きつすぎるとストレスになり、緩すぎると漏れます。尻尾の位置を確認してフィットするものを選びましょう。
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嫌がる場合は無理強いせず、ケージ内にペットシーツを敷き詰めるなどの対策に切り替えてください。
シャンプーやトリミングはしてもいい?
生理中のシャンプーやトリミングは、基本的には避けたほうが無難です。
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免疫力の低下:生理中は体が弱っており、シャンプー後の冷えやストレスで体調を崩しやすくなります。
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感染リスク:子宮頸管が開いている時期なので、細菌が入り込みやすくなっています。
汚れが気になる場合は、蒸しタオルや犬用のボディシートで優しく拭いてあげる程度に留めましょう。
どうしてもトリミングが必要な場合は、必ずサロンに「生理中であること」を伝え、短時間で終わらせてもらうなどの配慮が必要です。
要注意!生理と間違えやすい病気とリスク
「生理だと思っていたら、実は命に関わる病気だった」
というケースは少なくありません。
特に中高齢のメス犬は注意が必要です。
子宮蓄膿症の可能性
最も警戒すべき病気が子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)です。子宮内に細菌が入り込み、膿が溜まってしまう病気で、処置が遅れると死に至ります。
この症状が出たら即病院へ:
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生理が終わったはずなのに出血(膿混じりの血)が続く
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多飲多尿(水をガブガブ飲み、大量のおしっこをする)
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お腹がパンパンに膨らんでいる
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元気がなく、食欲が完全に落ちる
生理の終わりかけ(発情出血開始から1〜2ヶ月後)に発症しやすいため、生理が長引いていると感じたら要注意です。
想像妊娠について
生理が終わって1〜2ヶ月後に、妊娠していないのに妊娠したような兆候が出ることがあります。これを「偽妊娠(想像妊娠)」と呼びます。
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お乳が出る
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ぬいぐるみやおもちゃを子犬のように守る
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巣作り行動をする
これは病気ではなくホルモンの影響による自然な現象で、多くは自然に治まります。しかし、乳腺炎を起こすこともあるため、お乳が熱を持っている場合は獣医師に相談してください。
病院を受診すべきタイミング
通常の生理であれば自宅でのケアで十分ですが、以下のような場合は迷わず受診してください。
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出血が1ヶ月以上続く
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出血量が極端に多い、または悪臭がする
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陰部から緑色や黄色のオリモノが出ている
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ぐったりしていて動かない
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発熱している
早期発見が愛犬の命を救います。「いつもと何かが違う」という飼い主さんの直感は大切にしてください。
避妊手術の検討とメリット・デメリット
将来的に子犬を産ませる予定がないのであれば、避妊手術は愛犬の健康と飼い主さんの負担軽減のために非常に有効な選択肢です。
生理痛や病気予防の観点
避妊手術を受けることで、以下の大きなメリットが得られます。
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病気の予防:子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、卵巣腫瘍などの発生リスクをほぼゼロ、または大幅に低減できます。特に最初の発情前に手術すると、乳腺腫瘍の予防効果が高いとされています。
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ストレスからの解放:発情期特有のイライラや、オス犬を求める欲求不満、偽妊娠のストレスがなくなります。
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生活のしやすさ:出血による汚れのケアや、散歩時のトラブルの心配がなくなります。
手術にかかる費用と時期
手術のタイミングや費用は動物病院によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
| 項目 | 目安 |
| 推奨時期 | 生後6ヶ月〜最初の発情前(獣医師により方針が異なるため相談推奨) |
| 費用目安 | 3万〜7万円程度(事前検査・麻酔・入院費など含む) |
| 入院期間 | 日帰り または 1泊2日 |
注意点としては、全身麻酔のリスクや、術後に代謝が落ちて太りやすくなることが挙げられます。しかし、致命的な病気を防げるメリットは非常に大きいです。
「かわいそう」と迷う気持ちもあるかと思いますが、愛犬と長く健康に暮らすための前向きな選択として、一度家族や獣医師と話し合ってみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 生理中の犬にお腹の痛み(生理痛)はありますか?
犬にも生理痛のような不快感はあると考えられています。
人間のようにうずくまることは少ないですが、お腹を触られるのを嫌がったり、背中を丸めてじっとしていたりする場合は、痛みや違和感があるサインです。
無理に触らず、静かに休ませてあげてください。
Q2. 出血が止まったらすぐにドッグランに行ってもいいですか?
出血が止まっても、すぐにドッグランに行くのは危険です。
出血停止後も、まだオス犬を受け入れる「発情期」が続いている可能性があります。
安全のため、出血が完全に止まってからさらに1〜2週間ほど様子を見るか、獣医師に確認してから再開することをおすすめします。
Q3. 生理が来ないまま成犬になりました。病気でしょうか?
「無発情」というホルモン異常の可能性があります。また、出血量が極端に少なく、飼い主さんが気づかない「サイレントヒート」のケースも考えられます。
2歳を過ぎても一度も生理が確認できない場合は、将来の病気リスクも考慮し、動物病院で検査を受けてください。
Q4. オス犬を飼っている多頭飼いの場合はどうすればいいですか?
物理的に部屋を分ける(完全隔離)が必要です。
同じ家の中に発情中のメスがいると、未去勢のオス犬は極度の興奮状態になり、ドアを破壊してでも近づこうとすることがあります。
事故防止のため、どちらかを親戚に預けるか、厳重なケージ管理と部屋の隔離を徹底してください。
Q5. シニア犬になっても生理は続きますか?
はい、犬に閉経はないため、シニアになっても生理は続きます。
ただし、高齢になると発情の間隔が空いたり、出血量が減ったりすることはあります。
高齢での生理や出産は体への負担が非常に大きいため、早めの避妊手術が推奨されることが多いです。
まとめ
犬の生理(ヒート)は、メス犬の体が大人になった証であり、命をつなぐための大切な仕組みです。
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期間は2〜3週間で、出血や陰部の腫れが見られる。
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この時期は精神的に不安定になりやすいので、優しく見守る。
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おむつやマナーパンツを活用し、衛生管理を徹底する。
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散歩は行っても良いが、他の犬との接触は絶対に避ける。
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子宮蓄膿症などの病気予防のため、避妊手術を検討する。
初めての生理は戸惑うことも多いですが、正しい知識があれば慌てる必要はありません。愛犬が少しでも快適に、ストレスなく過ごせるよう、飼い主さんがサポートしてあげてくださいね。不安な症状があれば、自己判断せずに獣医師に相談しましょう。



















