犬の発情期（ヒート）はいつから？期間・症状・注意点と飼い主がすべきケアを徹底解説

愛犬に初めての発情期が訪れると、多くの飼い主さんは驚きと不安を感じるものです。突然の出血や、普段とは違う落ち着かない様子を見て

「病気ではないか」

「どう接してあげればいいのか」

と悩んでしまうのは、愛犬を大切に想っている証拠といえます。

一般的に「ヒート」と呼ばれるメス犬の発情期は、体の成長とともに必ず訪れる生理現象です。しかし、人間とは異なるサイクルや特有の症状があるため、正しい知識を持っておかなければ、愛犬にストレスを与えたり、思わぬトラブルを招いたりすることもあります。

この記事では、犬の発情期が始まる時期や具体的な期間、注意すべき心身の変化から、日常生活での具体的なケア方法までを詳しく解説します。愛犬が少しでも穏やかにこの時期を過ごせるよう、飼い主としてできる最高のサポートを一緒に学んでいきましょう。

犬の発情期（ヒート）とは？いつから始まるのか

犬の発情期（ヒート）とは、メス犬の体が受胎可能な状態になる周期のことを指します。人間のような毎月の生理とは異なり、犬のサイクルは年に数回と限られているのが特徴です。

初回のヒートが訪れる時期の目安

多くの場合、犬の初めての発情期は生後6ヶ月から10ヶ月頃に訪れます。ただし、これはあくまで目安であり、犬種や個体差によって大きく前後することがあります。

一般的に、チワワやトイプードルなどの小型犬は成長が早いため、生後6〜8ヶ月頃と早めに始まる傾向があります。一方で、ゴールデンレトリバーなどの大型犬は成長が緩やかなため、生後10〜12ヶ月、遅い場合には1歳を過ぎてから初めてのヒートを迎えることも珍しくありません。

もし1歳半を過ぎても一度もヒートが来ない場合は、ホルモンバランスの異常や潜在的な疾患が隠れている可能性があるため、一度動物病院で相談することをおすすめします。

発情が起こる頻度と周期

犬の発情周期は、個体差はあるものの一般的に6ヶ月〜8ヶ月に1回のペースで巡ってきます。つまり、1年間に1〜2回ほど発情期が訪れる計算になります。

この周期は季節によって変動することもあり、また、若齢期やシニア期には不規則になることもあります。愛犬の健康管理のために、ヒートが始まった日と終わった日をメモしておく習慣をつけると、次回の予測が立てやすくなり、心の準備を整えることができます。

発情サイクルの4つの段階とそれぞれの特徴

犬の発情周期は「発情前期」「発情期」「発情休止期」「無発情期」という4つのフェーズに分かれています。それぞれの段階で、犬の体と心には異なる変化が起こります。

発情サイクルの各段階における期間と主な状態を以下の表にまとめました。

この表からわかるように、飼い主さんが特に注意してケアを行うべきなのは、最初の約3週間（発情前期から発情期にかけて）です。この期間は心身ともに不安定になりやすいため、手厚いサポートが必要です。

愛犬に見られる発情期のサインと身体的・精神的変化

発情期に入ると、犬の体には目に見える変化が現れます。これらを早期に察知することで、部屋を汚したり、外でトラブルになったりすることを未然に防ぐことができます。

身体的な変化：外陰部の腫れと出血

最も分かりやすいサインは、外陰部の充血と腫れです。普段よりも明らかに赤く大きく膨らみ、そこから血の混じった分泌物（出血）が出てきます。

犬は自分で舐めて綺麗にしようとしますが、出血量が多い場合は床や家具を汚してしまうこともあります。出血は「発情前期」に最も多く、「発情期」に入ると色が薄くなり、量も減っていきます。しかし、出血が止まったからといって発情期が終わったわけではなく、むしろ排卵が起こり最も妊娠しやすい時期に入ったことを意味するため、注意を怠ってはいけません。

精神的な変化：落ち着きのなさと甘え

ホルモンバランスの急激な変化により、精神的にも不安定になります。普段はお利口な犬が突然そわそわして落ち着きを失ったり、逆に飼い主さんのそばを片時も離れないほど甘えん坊になったりすることがあります。

また、中には食欲が落ちたり、散歩に行きたがらなくなったりする子もいます。これらは病気ではなく、本能的な変化によるものですが、愛犬の不安な気持ちに寄り添い、優しく声をかけて安心させてあげることが大切です。

室内・外出先での衛生管理とマナー対策

発情期の出血対策は、飼い主さんにとって最も頭を悩ませる問題の一つでしょう。清潔を保ち、周囲への配慮を欠かさないための具体的な方法をご紹介します。

マナーパンツ・犬用オムツの活用

室内での汚れを防ぐためには、犬用のマナーパンツやオムツを使用するのが最も効果的です。最近では、デザイン性に優れたものや、通気性が良く蒸れにくい商品も多く販売されています。

ただし、いきなり長時間着用させると、違和感からストレスを感じたり、無理に脱ごうとして皮膚を傷めたりすることがあります。ヒートが始まる前から、短時間の着用で慣らしておくのが理想的です。また、蒸れによる皮膚トラブルを防ぐため、こまめに交換して清潔な状態を維持するよう心がけてください。

室内環境の整え方

パンツを嫌がる子の場合は、無理強いせず、愛犬が普段過ごす場所に洗えるラグやタオルを敷くなどの工夫をしましょう。また、多頭飼いをしていてオス犬が同居している場合は、物理的な隔離が不可欠です。

同じ部屋にいるだけで、オス犬はメスのフェロモンに強く反応し、興奮して吠え続けたり、食欲をなくしたりすることがあります。可能であれば別の部屋に分けるか、ケージを適切に配置して、お互いの視界に入らない工夫をすることが家庭内の平和を守る鍵となります。

散歩やドッグランで注意すべきオス犬との接触トラブル

発情期のメス犬が発するフェロモンは、驚くほど広範囲まで届きます。散歩中や外出先では、意図しない接触からトラブルに発展するリスクがあるため、細心の注意が必要です。

ドッグランや公共の場所は控える

発情前期から発情期が終わるまでの間は、ドッグランやペットOKのカフェ、トリミングサロンなどの利用は控えるのがマナーです。

例えマナーパンツを履いていたとしても、メス犬の匂いは周囲のオス犬を激しく興奮させてしまいます。それが原因で犬同士の喧嘩が起きたり、飼い主さんが制御できなくなったりする危険性があります。周囲への配慮と安全確保のため、人通りの少ない時間帯や場所を選んで散歩させるようにしましょう。

散歩時のリード操作と注意点

散歩中は、普段よりも短めにリードを持ち、他の犬との距離を十分に保ってください。伸縮リードは、いざという時のコントロールが効きにくいため、この時期は固定式のリードを使用することをおすすめします。

また、散歩中の排泄物や尿にもフェロモンが含まれているため、排泄後は多めの水で洗い流すなどのマナーを徹底しましょう。他の飼い主さんから「発情期ですか？」と聞かれた際には、正直に伝え、速やかに距離を取る姿勢が良好なマナーとして求められます。

避妊手術を検討するタイミングと病気のリスク

発情期にまつわる悩みや、将来的な健康リスクを軽減するための選択肢として「避妊手術」があります。これにはメリットとデメリットの両面があるため、愛犬のライフプランに合わせて慎重に検討する必要があります。

避妊手術を行うことによる主なメリットとデメリットを以下の表に整理しました。

この表の内容を踏まえ、多くの獣医師は初めてのヒートを迎える前、あるいは数回以内のタイミングでの手術を推奨しています。特に子宮蓄膿症は、シニア期に入ると命に関わる重篤な疾患になりやすいため、若いうちに予防しておくことは愛犬の長生きに直結する判断といえます。

一方で、繁殖の予定がある場合や、麻酔のリスクが極めて高い持病がある場合は、手術を行わない選択もあります。その場合は、毎回の発情期に徹底した管理を行う覚悟が必要になります。

よくある質問

ここでは、犬の発情期に関して飼い主さんからよく寄せられる質問をQ＆A形式でまとめました。

Q：発情期の出血が止まりません。いつまで続くのが正常ですか？

A：一般的に出血は発情前期の7〜10日間ほど続き、発情期に入ると薄くなっていきます。トータルで2週間から3週間程度で収まるのが普通です。もし1ヶ月以上出血が続いたり、膿のようなオリモノが出たり、愛犬がひどく元気がない場合は、子宮疾患の恐れがあるため、すぐに動物病院を受診してください。

Q：発情期のシャンプーはやっても大丈夫ですか？

A：外陰部が腫れて敏感になっており、細菌感染もしやすい時期なので、激しいシャンプーは控えるのが無難です。汚れが気になる場合は、ぬるま湯で湿らせたタオルやペット用のウェットティッシュで、汚れた部分を優しく拭き取ってあげる程度に留めましょう。どうしても洗いたい場合は、発情期が終わって落ち着いてからにすることをおすすめします。

Q：偽妊娠（ぎにんしん）とは何ですか？

A：交配していないにもかかわらず、発情休止期のホルモンの影響で体が「妊娠した」と勘違いしてしまう状態です。乳腺が張って母乳が出たり、ぬいぐるみなどを赤ちゃんのように大事に抱え込んだりします。通常は自然に収まりますが、乳腺炎などのトラブルに繋がることもあるため、様子がおかしい時は獣医師に相談しましょう。

Q：オス犬も「発情期」があるのでしょうか？

A：オス犬には、メス犬のような決まった周期の発情期はありません。しかし、近くに発情中のメス犬がいると、その匂いに反応していつでも発情状態になります。興奮してマウンティングをしたり、遠吠えをしたり、外に出ようと必死になったりするため、近隣に発情中の犬がいる場合は注意が必要です。

まとめ

愛犬が発情期に感じる不安や体の違和感は、言葉で伝えることができません。だからこそ、一番近くにいる飼い主さんが小さな変化に気づき、優しく受け止めてあげることが何よりも大切です。

正しい知識を持ってヒートの時期を乗り越えることで、愛犬との絆はより一層深いものになるでしょう。この記事が、あなたと愛犬の健やかな毎日の一助となれば幸いです。