犬の去勢手術は必要?費用・時期・術後ケアと後悔しないための判断基準

「元気な体にメスを入れるなんてかわいそう…」

「でも、病気の予防になるなら手術するべき？」

愛犬を迎えて数ヶ月が経つと、多くの飼い主さんが直面するのが「去勢手術をするか、しないか」という悩みです。

全身麻酔への不安や、「自然なままが一番ではないか」という葛藤を抱くのは当然のことです。

しかし、去勢手術には将来の恐ろしい病気を防ぎ、愛犬のストレスを減らすという大きなメリットがあるのも事実です。

この記事では、獣医学的な視点に基づいたメリット・デメリット、気になる費用相場、手術に最適な時期、そして術後のケアまでを徹底解説します。

「もっと早く知っておけばよかった」と後悔しないために、正しい知識を持って愛犬の未来を選択しましょう。

1 犬の去勢手術とは？目的と基本的な流れ
2 去勢手術のメリット・デメリット比較
3 手術に最適な時期はいつ？生後6ヶ月が目安の理由
- 3.1 なぜ生後6ヶ月なのか？
- 3.2 大型犬の場合は注意が必要
4 去勢手術の費用相場と保険適用について
- 4.1 検査・麻酔・手術代の内訳（目安）
- 4.2 ペット保険は使える？自治体の助成金は？
5 手術当日の流れと術後のケア・注意点
6 よくある質問（FAQ）
7 まとめ

犬の去勢手術とは？目的と基本的な流れ

犬の去勢手術とは、全身麻酔下でオス犬の精巣（睾丸）を摘出する手術のことです。

単に「子供を作れなくする」だけが目的ではありません。現在では、病気の予防や問題行動の抑制、そして精神的な安定を目的として推奨されることが一般的です。

手術自体は比較的短時間（15〜30分程度）で終わることが多く、日帰りまたは1泊入院で行われます。しかし、「簡単な手術」と軽く考えず、しっかりとその内容とリスクを理解しておくことが大切です。

去勢手術のメリット・デメリット比較

手術を決断する前に、愛犬にとって何が得られ、どんなリスクがあるのかを整理しましょう。

【メリット】病気予防とストレス軽減

最大のメリットは、オス特有の病気リスクを回避できることです。高齢になってから発症しやすい以下の病気を予防できます。

精巣腫瘍：精巣がガン化する病気。去勢手術で精巣を摘出するため、この病気にかかる心配はなくなります。
前立腺肥大・前立腺炎：排尿困難や便秘を引き起こす病気。
会陰（えいん）ヘルニア：お尻の筋肉が弱くなり、腸や膀胱が飛び出してしまう病気。
肛門周囲腺腫：お尻の周りにできる腫瘍。

また、精神面でのメリットも大きいです。未去勢のオス犬は、発情中のメス犬の匂いを嗅ぐと、本能的に強い興奮とストレスを感じます。

去勢することでこの「満たされない性的欲求」から解放され、穏やかに過ごせるようになります。

【デメリット】太りやすさと麻酔リスク

一方で、飼い主さんが把握しておくべきデメリットもあります。

太りやすくなる

ホルモンバランスの変化により基礎代謝が落ち、食欲が増す傾向があります。術後は食事管理（カロリーオフ）が必須です。
全身麻酔のリスク

現代の獣医療では安全性は高いですが、100%安全な麻酔は存在しません。特に短頭種（パグ、フレンチブルドッグなど）や持病のある犬は注意が必要です。
繁殖ができなくなる

一度手術をすると、元に戻すことはできません。「いつか子犬が欲しい」という可能性があるなら、慎重な判断が必要です。

「かわいそう」と迷う飼い主さんへ

「健康な体を傷つけるのはかわいそう」という気持ちは、愛情深い飼い主さんなら誰もが抱くものです。

しかし、獣医師の多くが去勢を推奨するのは、「手術の痛み（一時的）」よりも「将来の病気やストレス（長期的）」の方が、愛犬にとって辛いと考えるからです。

例えば、高齢になってから前立腺の病気やヘルニアになると、体力が落ちた状態で難しい手術をしなければならず、命のリスクも高まります。

「若いうちに済ませておけばよかった」というケースを避けるための「予防医療」として捉えてみてください。

手術に最適な時期はいつ？生後6ヶ月が目安の理由

一般的に、去勢手術に最適な時期は「生後6ヶ月前後」と言われています。

なぜ生後6ヶ月なのか？

この時期は、オス犬が性成熟（大人になること）を迎える直前です。

問題行動の定着を防ぐ

マーキング（足上げオシッコ）やマウンティング（腰振り）などの行動が習慣化する前に手術することで、これらの行動を抑制しやすくなります。
回復が早い

若くて体力があるため、麻酔からの覚醒や傷口の治りがスムーズです。
乳歯の抜歯と同時にできる

小型犬の場合、乳歯が抜けずに残る（乳歯遺残）ことがよくあります。去勢手術の麻酔を利用して、同時に抜歯を行うことで愛犬の負担を減らせます。

大型犬の場合は注意が必要

最近の研究では、大型犬や超大型犬の場合、早すぎる去勢が骨の成長に影響を与える可能性が指摘されています。

そのため、1歳を過ぎて体が完全に成長してからの手術を推奨する獣医師も増えています。犬種によって適正時期が異なるため、かかりつけ医とよく相談しましょう。

去勢手術の費用相場と保険適用について

手術にかかる費用は、犬の体重や病院の設備によって異なります。以下は一般的な目安です。

検査・麻酔・手術代の内訳（目安）

犬のサイズ（体重）	手術費用の相場	備考
小型犬（〜5kg）	30,000円〜 50,000円	チワワ、トイプードルなど
中型犬（5〜15kg）	40,000円〜 60,000円	柴犬、コーギーなど
大型犬（15kg〜）	50,000円〜 90,000円	ラブラドール、ゴールデンなど

※上記に加え、術前検査費（血液検査・レントゲン等）として5,000円〜15,000円程度が別途かかる場合がほとんどです。

※「停留精巣（精巣が降りてきていない状態）」の場合は開腹手術となるため、費用が高くなります。

ペット保険は使える？自治体の助成金は？

ペット保険

基本的に「対象外」です。去勢手術は病気の治療ではなく「予防」とみなされるためです。ただし、停留精巣などの治療目的であれば補償対象になる場合があります。事前に保険会社へ確認しましょう。
自治体の助成金

一部の自治体では、犬猫の不妊・去勢手術に対して助成金を出している場合があります（数千円〜1万円程度）。お住まいの地域の役所ホームページや広報誌を確認してみてください。

手術当日の流れと術後のケア・注意点

いざ手術が決まったら、当日の流れと術後の生活をイメージしておきましょう。飼い主さんのサポートが回復の鍵を握ります。

前日準備から退院まで

前日の夜

指定された時間（通常は21時〜0時頃）以降は絶食させます。胃の中に食べ物が残っていると、麻酔中に嘔吐して喉に詰まる危険があるためです。水は当日の朝までOKの場合が多いです。
当日の朝

絶食・絶水の指示を守り、病院へ預けます。
手術・お迎え

手術自体は数十分で終わります。麻酔から覚めた後の状態を確認し、問題なければ夕方に退院、もしくは1泊入院となります。

エリザベスカラーはいつまで？傷口の守り方

術後、最も重要なのは「傷口を舐めさせないこと」です。

犬は傷口を気にして舐めようとしますが、舐めると傷が開いたり、バイ菌が入って化膿したりします。これを防ぐために、以下のアイテムを使用します。

エリザベスカラー：首に巻くラッパ状のガード。
術後服（エリザベスウェア）：傷口を覆う服。カラーが苦手な子におすすめ。

着用期間は抜糸までの7〜10日間が目安です。かわいそうに見えますが、心を鬼にして外さないようにしましょう。

術後の散歩・食事・シャンプー再開時期

食事

帰宅当日は麻酔の影響で食欲がないことがあります。無理に食べさせず、水や少量のフードから様子を見ましょう。翌日からは通常通りで大丈夫ですが、高カロリーなおやつは控えめに。
散歩

排泄を済ませる程度の短い散歩に留めます。基本的には家の中での排泄が理想です。外でしか排泄しない場合は、退院翌日から行けますが、清潔なアスファルトの上を選び、排泄が済んだらすぐに帰宅してください。傷口がふさがるまでは、激しい運動やドッグランはNGです。
シャンプー

抜糸が済んでから（術後1週間〜10日後）解禁になります。それまでは濡れタオルで体を拭く程度にしましょう。