愛犬のうんちに血が混じっているのを見て、心臓が止まるような思いをしていませんか?
「すぐに病院へ行くべき?」
と不安でいっぱいでしょう。
実は、犬の血便には
- 「緊急性が高く命に関わるもの」 と
- 「一時的な不調」
の2種類があります。
この違いを冷静に見極めることが、愛犬を守る第一歩です。
この記事では、血便の色や状態からわかる緊急度、考えられる原因、そして病院へ行くべき判断基準を徹底解説します。
スマホでこの記事を見ながら、愛犬の今の状態をチェックしてください。
もくじ
30秒で判断!犬の血便の緊急度チェック
血便を見つけた瞬間、飼い主様が最も知りたいのは「今すぐ病院に行くべきか?」という点でしょう。
結論から言うと、子犬や老犬の場合は、元気そうに見えても急変するリスクが高いため、迷わず受診してください。
成犬の場合、以下の基準で緊急度を判断しましょう。
【緊急度高】すぐに病院へ行くべき症状
以下の症状が一つでも当てはまる場合は、夜間救急を含めて直ちに動物病院を受診してください。命に関わる危険なサインです。
これらは、パルボウイルス感染症、重度の出血性胃腸炎、中毒、あるいは腸閉塞などの重篤な状態を示唆しています。「朝まで様子を見よう」は禁物です。
【緊急度中】翌日の受診でも間に合うケース
今すぐ命に関わる可能性は低いものの、放置すると悪化するため、翌日の午前中には必ず病院へ行くべき状態です。
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元気はあるが、血便が2回以上続いている
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食欲が少し落ちている
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便の最後にポタッと鮮血がついた
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ゼリー状の粘液に血が混じっている
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お尻を床にこすりつける動作(しぶり)がある
この場合、便の写真を撮り、可能であれば便を採取して冷蔵保存し、翌日の診察に備えてください。夜間の食事は抜き(絶食)、水だけを与えて胃腸を休ませましょう。
【緊急度低】自宅で様子を見ても良いケース
以下の条件がすべて揃っている場合に限り、半日〜1日程度様子を見ることができます。ただし、あくまで「慎重な経過観察」です。
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血便は1回だけで、その後は普通の便に戻った
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食欲・元気があり、普段通り走り回っている
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嘔吐や発熱が一切ない
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最近、フードを変えたりストレスがかかる出来事があった
ストレスや一時的な消化不良で、毛細血管が切れて少量の血が出ることがあります。ただし、24時間以内に再度血便が出たら、迷わず受診してください。
鮮血?黒色?便の色と状態でわかる原因
犬の血便は、血の色を見ることで「体のどこで出血しているか」がある程度推測できます。獣医師に状況を伝える際も、この色の情報は非常に重要です。
| 便の色・状態 | 出血部位の目安 | 推定される原因 | 緊急度 |
| 鮮やかな赤(鮮血) | 大腸・直腸・肛門 | 大腸炎、ポリープ、寄生虫、肛門腺破裂 | 中〜高 |
| 黒色(タール便) | 胃・小腸(上部消化管) | 胃潰瘍、腫瘍、異物誤飲、中毒 | 極めて高い |
| ゼリー状の粘液 | 大腸 | ストレス性大腸炎、寄生虫 | 低〜中 |
| 全体がピンク/血水 | 腸全体 | 出血性胃腸炎、パルボウイルス | 極めて高い |
鮮血便(赤い血):大腸や肛門付近のトラブル
便の表面に赤い血が付着している、あるいは便全体が赤っぽい場合は、肛門に近い大腸(結腸・直腸)や肛門での出血が疑われます。
肛門に近い場所での出血は、排泄されてから時間が経っていないため、血液が赤いまま出てきます。
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主な原因:
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大腸炎: ストレスや食事による炎症。
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鞭虫(べんちゅう): 盲腸に寄生する虫。
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肛門の怪我: 硬い便を出した際の切れ痔。
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腫瘍: 直腸ポリープや癌。
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元気がある場合でも、鮮血が続くなら大腸にポリープや腫瘍ができている可能性があるため、検査が必要です。
黒色便(タール便):胃や小腸など深刻な可能性
最も注意が必要なのが、この「黒色便」です。コールタールやイカ墨、海苔の佃煮のように黒く、ドロッとした便が出ます。
これは胃や小腸(十二指腸など)の上部消化管で大量に出血しているサインです。血液が腸を通る間に消化液と反応し、時間が経つことで黒く変色します。
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主な原因:
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胃潰瘍・十二指腸潰瘍: 痛み止め薬の副作用や重度のストレス。
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異物誤飲: 竹串やおもちゃが胃壁を突き刺している。
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腫瘍: 胃がんやリンパ腫。
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黒色便が出たら、一刻を争う事態である可能性が高いです。元気そうに見えても貧血が進行していることがあるため、すぐに病院へ走ってください。
ゼリー状の粘液便:ストレスや大腸炎の疑い
便の表面に、透明や白、あるいは赤みがかった「プルプルしたゼリー状のもの」が付着していることがあります。これは腸の粘膜から分泌される粘液です。
腸に炎症が起きると、腸壁を守ろうとして粘液が過剰に分泌されます。
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主な原因:
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ストレス性大腸炎: ホテル宿泊や環境変化によるもの。
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寄生虫: ジアルジアやトリコモナスなど。
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食事アレルギー: 合わないフードを食べた反応。
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比較的緊急度は低いケースが多いですが、「しぶり(うんちの体勢をするが出ない)」を繰り返す場合は、大腸炎が悪化しているサインですので治療が必要です。
犬が血便をする主な原因5選
なぜ愛犬が血便をしてしまったのか、飼い主様が思い当たる原因を探ってみましょう。原因によっては、自宅での環境改善で防げるものもあります。
1. ストレスや環境の変化
犬は非常に繊細な生き物です。精神的なストレスが自律神経を乱し、腸の動きを過敏にさせ、出血(大腸炎)を引き起こすことがよくあります。
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よくあるトリガー:
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ペットホテルでのお泊まり
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引越しや部屋の模様替え
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来客や工事の騒音
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新しい家族(赤ちゃんや他のペット)が増えた
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長時間の留守番
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「元気なのに血便が出た」というケースの多くは、このストレス性が疑われます。環境を落ち着かせ、安心させてあげることで数日で治まることもあります。
2. 食事(誤飲・変更・アレルギー)
口にするものが直接の原因となるケースです。
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フードの切り替え:
急に新しいフードに変えると、腸内細菌のバランスが崩れて下痢や血便になります。切り替えは1週間かけて徐々に行うのが鉄則です。
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脂肪分の多い食事:
人の食べ物(唐揚げやステーキの脂身など)を盗み食いすると、消化不良や**膵炎(すいえん)**を起こし、激しい血便や嘔吐につながります。
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異物誤飲:
プラスチック片、果物の種、竹串などを飲み込むと、消化管の内壁を傷つけながら移動するため出血します。
3. 寄生虫や細菌・ウイルス感染
特に子犬や免疫力の落ちた老犬で多い原因です。
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パルボウイルス感染症:
ワクチン未接種の子犬にとって致死率の高い怖い病気です。独特の腐敗臭がするトマトジュースのような血便が特徴です。
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寄生虫(回虫・鞭虫・コクシジウム・ジアルジア):
お散歩中に他の犬の便を舐めたり、土を舐めることで感染します。肉眼では見えないことが多いため、顕微鏡検査が必要です。
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細菌(サルモネラ・カンピロバクター):
生肉を食べたり、不衛生な水を飲むことで感染します。
4. 消化器系の疾患(炎症性腸疾患など)
IBD(炎症性腸疾患)と呼ばれる、原因不明の慢性的な腸炎が増えています。免疫システムの異常が関わっているとされ、慢性的な下痢や血便、体重減少が見られます。
食事療法やステロイド剤による長期的な治療が必要になる厄介な病気です。
5. 腫瘍やポリープ(高齢犬は注意)
7歳以上のシニア犬で、血便が長く続く、あるいは断続的に繰り返す場合は、腸内に**ポリープや悪性腫瘍(ガン)**ができている可能性があります。
初期は元気なことも多いですが、腫瘍からの出血が続くと貧血になり、次第に痩せていきます。早期発見のためには、エコー検査や内視鏡検査が必要です。
動物病院を受診する前の準備と持ち物
「病院に行こう」と決めたら、獣医師が正確な診断を下せるよう、準備を整えましょう。手ぶらで行くのと、証拠を持って行くのとでは、診断のスピードと精度が全く違います。
正しい便の採取方法と持参のコツ
最も重要な情報は「現物の便」です。
①便の鮮度:
できるだけ直近にした便を持って行きます。時間が経つと乾燥したり変色したりして、正確な検査ができません。
②持ち運び方:
ラップに包むか、ビニール袋に入れます。乾燥を防ぐため、さらに密閉容器に入れるとベストです。
ペットシーツにした場合は、シーツごと(血がついている部分)切り取って袋に入れます。液状で取れない場合は、スマホでの写真撮影が必須です。
③量:
親指の先くらいの量があれば十分検査可能です(小指の爪程度でも可)。
注意点:便の中に寄生虫や卵がいる場合、人間に感染することもあります。必ず手袋や袋越しに扱い、採取後は手洗いを徹底してください。
獣医師に伝えるべき「7つのチェックリスト」
診察室で慌てないよう、以下の情報をメモして渡すとスムーズです。
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いつから血便が出ているか?(今日?3日前から?)
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回数と量は?(1回だけ?何度も?)
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便の色と形は?(鮮血?黒色?水様?ゼリー状?)
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元気と食欲はあるか?
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嘔吐はあるか?(ある場合、内容物や回数は?)
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環境の変化はあったか?(食事変更、ホテル、誤飲の可能性)
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既往歴・投薬(現在飲んでいる薬はあるか?)
特に「誤飲の可能性」については、正直に伝えてください。「怒られるかも」と隠してしまうと、発見が遅れて命に関わります。
自宅ケアと再発予防のポイント
病院で「軽い腸炎でしょう」と診断された場合や、自宅で様子を見る場合、早く回復させるためのケア方法を紹介します。
お腹を休ませる食事と水分の与え方
血便が出ている時は、腸が傷ついて弱っています。普段通りの食事を与えると、腸への負担となり治りが遅くなります。
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半日の絶食(ファースティング):
成犬で体力がある場合、一食分抜いて胃腸を完全に休ませるのが効果的です。ただし、子犬や低血糖になりやすい超小型犬は絶食させてはいけません。
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消化の良い食事:
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普段のドライフードをお湯でふやかして柔らかくする。
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脂肪分の少ない「ささみ」や「白身魚」を茹でたものをトッピングする。
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獣医師処方の「消化器サポート」等の療法食を活用する。
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水分補給:
下痢や血便は脱水を招きます。常温の水や、犬用の経口補水液をこまめに与えてください。冷たい水は腸を刺激するので避けましょう。
ストレスを減らす生活環境の見直し
ストレスが原因と考えられる場合、薬だけでなく心のケアも必要です。
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静かな場所の確保:
クレートやベッドを部屋の隅や静かな場所に移動し、ゆっくり眠れる環境を作ります。
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過度なスキンシップを控える:
体調が悪い時は、そっとしておくのが一番の優しさです。無理に遊ばせたり、構いすぎないようにしましょう。
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散歩の調整:
排泄のために外に出る必要があれば短時間で済ませ、激しい運動は控えます。他の犬との接触も避けてください。
よくある質問(FAQ)
検索者が抱きやすい疑問について、獣医師監修レベルの知識をもとに回答します。
血便が出たけど元気はある。様子見でいい?
条件付きで様子見可能ですが、油断は禁物です。
食欲があり、嘔吐もなく、血便が1回きりで少量(鮮血がポツンとつく程度)であれば、24時間は自宅で安静にして様子を見ても良いでしょう。
ただし、「黒色便」「子犬・老犬」「2回以上続く」場合は、元気があっても内臓疾患の可能性があるため、すぐに受診が必要です。
夜中に血便!救急病院に行くべき基準は?
「大量出血」「歯茎が白い」「止まらない嘔吐」があれば即受診です。
これらの症状は、緊急手術や輸血が必要なショック状態(命の危機)の前兆です。
逆に、元気があり血便が少量であれば、朝まで待ってからかかりつけ医を受診しても間に合うケースが多いです。迷ったら救急病院へ電話でトリアージ(緊急度相談)を依頼しましょう。
病院代はどれくらいかかる?(検査費用の目安)
軽度なら5,000円〜、詳しく調べると1〜3万円が目安です。
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基本セット: 診察料+糞便検査+注射・薬代で5,000円〜10,000円程度。
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精密検査: 血液検査、レントゲン、エコー検査などが加わると+10,000円〜20,000円。
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パルボウイルス検査: 約3,000円〜5,000円。
保険未加入の場合は全額自己負担となるため、多めに用意しておきましょう。
血便の時にあげていい食べ物は?
消化に良く、脂質の低いものが鉄則です。
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OK食材: 鶏のささみ(皮なし・ボイル)、白身魚(骨なし)、お粥(柔らかく炊いた米)、ふやかしたドライフード。
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NG食材: おやつ全般、脂身の多い肉、乳製品、硬いガム、繊維質の多い野菜。
腸壁を刺激しないよう、人肌程度の温度で少量頻回(1日3〜4回)に分けて与えましょう。
鮮血とタール便(黒色便)、どっちが危険?
圧倒的に「タール便(黒色便)」の方が危険度が高いです。
鮮血は肛門近くの切れ痔や大腸炎など、比較的軽症のケースも含まれますが、黒色便は胃や小腸からの大量出血や腫瘍など、体の深部での異常を示しています。
一見、真っ赤な血の方が怖く見えますが、獣医学的には黒い便の方が緊急対応を要するサインです。
まとめ
愛犬の血便は、飼い主様にとって非常にショッキングな出来事ですが、冷静な観察と対応が愛犬の命を救います。
本記事の重要ポイント:
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緊急度の判断:
ぐったりしている、嘔吐がある、黒色便、子犬の場合は即病院へ。
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色の観察:
鮮血は大腸や肛門、黒色便は胃や小腸のトラブル。
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受診の準備:
現物の便(または写真)を持参し、経過をメモしていく。
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自宅ケア:
絶食や消化の良い食事で腸を休ませ、ストレスを取り除く。
「たかが下痢」と甘く見ず、いつもと違う様子があれば、プロである獣医師の判断を仰ぐことが、愛犬との長く幸せな生活を守る鍵となります。まずは深呼吸をして、愛犬の便の状態をもう一度確認してみましょう。






















大量の出血がある(便全体が真っ赤)
黒いタール状の便(海苔の佃煮のような便)が出た
何度も繰り返し嘔吐している
ぐったりしていて呼びかけに反応が薄い
歯茎や舌が白っぽい(貧血のサイン)
水のような激しい下痢が止まらない
子犬(ワクチン未接種)である