犬にアンチノールを飲ませると肝臓が悪くなるのは本当？成分や副作用のリスクを徹底解説

「関節や皮膚の健康のためにアンチノールを始めたけれど、ネットで肝臓が悪くなるという噂を見て不安になった」という飼い主さんは少なくありません。

結論からお伝えすると、アンチノールが原因で健康な犬の肝臓が悪くなるという科学的な根拠や報告はほとんどありません。

むしろアンチノールは、その安全性の高さから多くの動物病院で推奨されており、長期服用を前提として設計されているサプリメントです。

しかし、なぜこのような不安が広がっているのでしょうか。

また、実際にアンチノールを飲んでいて肝機能の数値が上がった場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。

愛犬に安心してサプリメントを続けてもらうために、アンチノールの成分、肝臓への影響、そして副作用の真実について、専門的な視点から解き明かしていきます。

アンチノールの成分と肝臓への影響

アンチノールの主成分は、ニュージーランド産のモエギイガイから独自の製法で抽出された脂肪酸製品である「PCSO-524」です。

この成分が肝臓にどのような影響を与えるのかを理解することが、不安を解消する第一歩となります。

アンチノールに含まれるPCSO-524は、オメガ3脂肪酸（EPA、DHA）をはじめ、90種類以上の脂肪酸をバランスよく含んでいます。

一般的に、オメガ3脂肪酸は抗炎症作用を持ち、むしろ肝臓の健康をサポートする働きがあることが知られています。

肝臓は体内の化学工場と呼ばれ、摂取した栄養素や薬物を代謝する役割を担っています。

化学合成された医薬品の場合、その分解過程で肝細胞に負荷がかかることがありますが、アンチノールは100％天然成分由来の脂質です。

そのため、適切な摂取量であれば肝臓に過度な負担をかける可能性は極めて低いと考えられています。

また、アンチノールの製品ラインナップには、肝臓の健康維持に特化した「エネアンチノール」という製品も存在します。

肝臓ケアのために推奨される成分がベースとなっているサプリメントが、通常の使用で肝臓を悪化させるというのは矛盾した話なのです。

PCSO-524の代謝プロセス

アンチノールを摂取すると、成分である脂質は小腸で吸収され、リンパ管を通って全身の細胞へ運ばれます。

肝臓での代謝も行われますが、これは日常的な食事に含まれる脂肪分の代謝と大きな差はありません。

アンチノールが医薬品（鎮痛剤など）と決定的に違う点は、プロスタグランジンなどの炎症物質を抑制するプロセスが非常に緩やかで、内臓への攻撃性が低いことです。

多くの臨床研究において、アンチノールの長期的な安全性は確認されており、シニア犬や持病を持つ犬でも安心して併用できることが示されています。

アンチノールプラスへの進化と安全性

最新の「アンチノールプラス」では、従来の成分に加えてクリルオイルが配合されました。これにより、脂質の吸収効率がさらに高まっています。

吸収効率が良くなったことは、より少ない油分量で同等の効果を得られることを意味します。

これは消化器や肝臓、膵臓への負担をさらに軽減する方向への進化と言えるでしょう。

クリルオイル自体も天然由来の安全な成分であり、抗酸化作用のあるアスタキサンチンを含んでいるため、細胞の酸化ストレスを軽減し、多角的に愛犬の体を守ってくれます。

噂の真相：なぜ肝臓が悪くなると言われる理由

科学的に安全性が高いとされているアンチノールですが、それでも「飲ませたら肝臓の数値が上がった」という声が一部で上がるのはなぜでしょうか。

そこには、いくつかの誤解や、アンチノール以外の要因が複雑に絡み合っています。

1. 加齢による自然な数値の変化

アンチノールを飲み始める犬の多くは、関節の痛みや被毛の衰えが気になり始める「シニア期」に入っています。

シニア犬は、サプリメントの服用とは無関係に、老化現象として肝機能や腎機能の数値が徐々に変化することがよくあります。

たまたまアンチノールを開始した時期と、健康診断で肝数値が上昇したタイミングが重なったことで、飼い主さんが「アンチノールのせいかもしれない」と結びつけてしまうケースが多いのです。

2. 同時に服用している他の医薬品の影響

関節炎の痛みがある犬の場合、アンチノールだけでなく、動物病院から処方された「消炎鎮痛剤（NSAIDs）」を併用していることがあります。

消炎鎮痛剤は、高い鎮痛効果がある一方で、長期服用により肝臓や腎臓、胃腸に負担をかける副作用のリスクが明確に存在します。

もし鎮痛剤とアンチノールを併用していて数値が上がったのであれば、原因は薬の方にある可能性が高いと言えます。

しかし、サプリメントという「後から追加したもの」に疑いの目が向きやすいのが実情です。

3. 食事内容や脂質代謝の問題

アンチノールは良質な「油」ですが、犬の個体によっては脂質の代謝が苦手な場合があります。

もともと高脂血症気味であったり、膵炎の既往歴があったりする犬の場合、わずかな脂質の追加が肝臓の数値（特にALTやALP）に影響を与える可能性はゼロではありません。

これはアンチノール自体が「毒」であるわけではなく、その子の現在の体質に対して「脂質の総量が許容量を超えてしまった」という状態です。

4. 検査データの誤差や一過性の変動

肝臓の数値は非常にデリケートで、食事の直後や激しい運動の後、あるいはストレスなどによっても一時的に上昇することがあります。

一度の血液検査で数値が高かったからといって、すぐにサプリメントの副作用と断定するのは早計です。再検査や他の項目の確認を通じて、総合的に判断する必要があります。

報告されている副作用と注意点

アンチノールにおいて、肝機能障害という副作用は一般的ではありませんが、全く副作用がないわけではありません。どのようなサプリメントにも、体質に合う・合わないが存在します。

飼い主さんが注意しておくべき、現実的な副作用と対応策についてまとめます。

消化器症状（軟便・下痢・嘔吐）

アンチノールの副作用として最も報告数が多いのが、お腹がゆるくなる「軟便」や「下痢」、あるいは「嘔吐」です。

これは成分である脂質が胃腸を刺激したり、急な脂質摂取に消化が追いつかなかったりすることが原因です。

特に胃腸がデリケートな犬や、小型犬でカプセルの油分が相対的に多い場合に見られることがあります。

対処法としては、以下のようなステップが推奨されます。

• 飲ませるタイミングを「食後」にする（胃への刺激を緩和する）

• カプセルをカットして、中身のオイルを数回に分けて食事に混ぜる

• 最初の1週間は2日に1回にするなど、徐々に慣らしていく

貝類・シーフードへのアレルギー

アンチノールの原料はモエギイガイです。非常に稀ではありますが、貝類や海産物に対してアレルギーを持っている犬の場合、皮膚の赤みや痒み、腫れなどのアレルギー反応が出ることがあります。

もしアンチノールを飲み始めてから、執拗に体を痒がったり、顔が腫れたりするような症状が出た場合は、直ちに服用を中止し獣医師に相談してください。

血液凝固への影響（理論上の注意）

オメガ3脂肪酸には血液をサラサラにする効果があります。これは健康維持にはプラスに働きますが、手術を控えている場合や、極度の血小板減少症など出血が止まりにくい疾患がある場合は、念のため服用を一時停止することがあります。

日常的な生活で問題になることはほぼありませんが、大きな手術の前には獣医師にアンチノールを飲んでいることを伝えておくと安心です。

肝疾患がある犬への使用について

「すでに肝臓の数値が悪い愛犬に、アンチノールを飲ませても大丈夫か」という質問も多く寄せられます。

この点に関して、多くの獣医師は**「むしろ積極的に併用を検討すべき」**と考えています。その理由を深掘りします。

抗炎症作用による肝細胞の保護

肝臓の数値が上がっている状態は、肝臓内で何らかの「炎症」が起きていることを示唆しています。

アンチノールの持つ強力な抗炎症作用は、関節だけでなく肝細胞の炎症を鎮めることにも寄与する可能性があります。

実際に、肝臓の健康をサポートする目的で脂肪酸サプリメントが処方されるケースは珍しくありません。

薬の量を減らせるメリット

これが最も大きなメリットかもしれません。アンチノールを併用することで、関節の痛みや皮膚の炎症が和らげば、肝臓に負担をかけるステロイド剤や消炎鎮痛剤の投与量を減らせる可能性があります。

結果として、アンチノールを飲むことが、間接的に肝臓を守る（薬害から守る）ことにつながるのです。

摂取時の相談基準

ただし、以下の状態にある場合は自己判断せず、必ずかかりつけの獣医師の指示を仰いでください。

• 重度の肝不全がある

• 腹水が溜まっている

• 激しい黄疸が出ている

• 膵炎を併発している

これらのケースでは、たとえ良質な油であっても慎重に導入する必要があります。

正しい飲ませ方と肝機能維持のコツ

アンチノールのメリットを最大限に引き出し、不安を解消するための具体的な飲ませ方のコツを紹介します。

空腹時を避けて食後に与える

脂質成分の吸収をスムーズにし、胃腸への負担を最小限にするためには、「食後すぐ」または「食事に混ぜて」与えるのがベストです。

胃の中に食べ物がある状態でアンチノールが入ることで、オイルが食事と共にゆっくりと消化吸収され、副作用のリスクを下げることができます。

導入期（最初の2週間）の観察を怠らない

アンチノールは、最初の2週間は通常の2倍量を飲ませる「導入期」が推奨されています。この時期は最も体に変化が起きやすいタイミングです。

**「便の状態に変化はないか」「食欲は落ちていないか」「元気に過ごしているか」**を注意深く観察しましょう。もし異変があれば、無理に2倍量を続けず、通常量に戻すか一旦休止して様子を見ることが大切です。

定期的な血液検査を行う

肝臓の数値が気になるのであれば、サプリメントのせいにしたり、不安になったりする前に、客観的なデータを確認するのが一番です。

「アンチノールを始める前の数値」と「始めて1ヶ月後の数値」を比較できれば、そのサプリメントが愛犬の体にどのような影響を与えているかが明確になります。

もし数値が上がっていたとしても、早めに気付くことができれば対策（休止や代替品の検討）を打つことができます。

よくある質問（FAQ）

Q：アンチノールを飲んでALT（GPT）が上がることはありますか？

A：健康な犬であれば、アンチノールが原因でALTが上昇することは考えにくいです。

もし上昇した場合は、加齢、他の薬の影響、あるいはもともとあった肝疾患の進行などが疑われます。

ただし、稀に脂質代謝が極端に苦手な個体では、数値に変動が出ることがあります。その場合は獣医師に相談し、給与量を調整してください。

Q：他のサプリメントと併用しても肝臓に負担はかかりませんか？

A：アンチノールは他のサプリメント（グルコサミン、コンドロイチン、乳酸菌など）との併用が可能です。

成分が重複して過剰摂取になる心配もほとんどありません。

複数のサプリメントを与えること自体が肝臓の負担になるというよりは、全体的な摂取カロリーや脂質量のバランスに注意してください。

Q：一生飲み続けても肝臓は大丈夫ですか？

A：はい、アンチノールは長期服用を想定して安全性が確認されています。

多くのシニア犬が数年間にわたって毎日服用していますが、それが原因で肝不全になったという報告はありません。

むしろ、継続することで関節の可動域が維持され、適度な運動ができるようになることが、全身の代謝（肝機能含む）を良好に保つことにつながります。

Q：エネアンチノールとの違いは何ですか？

A：アンチノールは主に関節・皮膚・心血管の健康維持を目的としています。

一方、エネアンチノールはアンチノールの成分をベースに、さらに肝臓ケアに特化した成分（S-アデノシルメチオニン：SAMeなど）を加えた「病院専売の肝臓用サプリメント」です。肝臓が心配な方は、最初からエネアンチノールの使用を獣医師に相談してみるのも一つの選択肢です。

Q：偽物や類似品が肝臓に悪いということはありますか？

A：インターネット上で非常に安価に販売されている類似品や並行輸入品の中には、保存状態が悪く酸化したオイルが使われているものや、成分が異なるものが混じっている可能性があります。

酸化した古い脂質は、肝臓に大きなダメージを与える原因になります。必ず公式サイトや動物病院など、信頼できるルートから正規品を購入してください。

まとめ

• アンチノールの主成分PCSO-524は天然の脂肪酸であり、通常の使用で肝臓を悪化させることはない。

• 肝臓の数値が上がった場合、加齢や消炎鎮痛剤の併用、一過性の体調変化など別の要因である可能性が高い。

• アンチノールの抗炎症作用は、むしろ肝臓の健康維持を助け、薬の量を減らすメリットがある。

• 脂質代謝が苦手な子や胃腸が弱い子は、食後に与えるなど工夫をすることで副作用を防げる。

• 正規品を正しく与え、定期的な健康診断を行うことが、愛犬の健康を守る最も確実な方法である。

愛犬の健やかな毎日のために、アンチノールは非常に心強い味方となります。

「肝臓が悪くなる」という根拠のない噂に惑わされる必要はありません。

大切なのは、目の前の愛犬の状態をよく観察し、専門家である獣医師とコミュニケーションを取りながら、その子に最適なケアを続けてあげることです。

アンチノールを正しく活用することで、愛犬がいつまでも自分の足で元気に歩き、輝くような毎日を過ごせるようサポートしてあげましょう。