愛猫の目元が茶色く染まってしまう「涙やけ」。
毎日拭いているのに、翌朝にはまた汚れている……そんな状況に「何が原因なの?」「一生治らないの?」と不安を感じている飼い主さんは少なくありません。
特に白猫や鼻の短い猫種を飼っている方にとって、涙やけは見た目の問題だけでなく、愛猫の健康状態を測るバロメーターでもあります。
涙やけを放置すると、皮膚炎を引き起こしたり、強い悪臭を放つ原因にもなりかねません。
この記事では、猫の涙やけが起こるメカニズムから、猫に嫌がられない魔法のケアテクニック、そして食事による根本的な改善策まで、飼い主さんが知っておくべきすべての情報を詳しく解説します。
愛猫の澄んだ瞳と清潔な目元を取り戻すために、まずは正しい知識から身につけていきましょう。
もくじ
猫の涙やけが起こる主な原因とメカニズム
猫の涙やけは、医学的には「流涙症(りゅうるいしょう)」と呼ばれる状態が引き金となって起こります。涙が目から溢れ出し、目元の毛が常に濡れた状態になることで、涙に含まれる成分が酸化したり、細菌が繁殖したりして茶色く変色する現象です。
なぜ涙が溢れてしまうのか、その原因は大きく分けて3つのパターンに分類されます。
1. 涙の出口が詰まっている(鼻涙管閉塞)
猫の目には、涙を鼻の方へ流すための「鼻涙管(びるいかん)」という細い管があります。この管が、生まれつき狭かったり、炎症によって詰まったりすると、行き場を失った涙が目から溢れ出してしまいます。
特に、ヒマラヤン、エキゾチックショートヘア、ペルシャなどの鼻が短い「短頭種」の猫は、骨格的に鼻涙管が曲がりやすく、涙やけが起きやすい傾向にあります。
2. 涙の量が増えすぎている(刺激と炎症)
目に何らかの刺激が加わり、防御反応として涙が過剰に分泌されるケースです。
3. 食事や体質による影響
意外と見落としがちなのが、食事の内容です。添加物が多いキャットフードや、愛猫の体質に合わないタンパク源を摂取し続けていると、老廃物が涙の粘度を高めたり、鼻涙管を詰まりやすくしたりすることがあります。
以下の表に、主な原因と特徴をまとめました。
| 原因の分類 | 具体的な内容 | よく見られる特徴 |
| 解剖学的要因 | 鼻涙管閉塞、短頭種の骨格 | 子猫の頃から常に涙が出ている |
| 外的な刺激 | 逆まつげ、ゴミ、花粉 | 片目だけ涙が多い、目を細める |
| 病的な要因 | 猫風邪、結膜炎 | 黄色い目ヤニ、目の充血を伴う |
| 内面的な要因 | 食物アレルギー、添加物 | 両目均等に汚れ、便の状態も不安定 |
愛猫の涙やけがどのタイプに当てはまるのか、まずはじっくり観察することが対策の第一歩です。
猫が嫌がらない!正しい涙やけケアの実践手順
涙やけのケアで最も大切なのは、「猫に嫌な思いをさせないこと」です。 強引に顔を掴んでゴシゴシ擦ってしまうと、猫は顔を触られることを極端に嫌がるようになり、その後のケアが困難になってしまいます。
ここでは、プロも推奨する「猫に負担をかけない」ステップを解説します。
ステップ1:準備するもの
まずは必要な道具を揃えましょう。
-
コットンまたは清潔なガーゼ: 毛羽立ちの少ないもの
-
精製水または専用の涙やけクリーナー: 刺激の少ないもの
-
乾いたティッシュ: 最後に水分を吸い取る用
-
ご褒美のおやつ: ケア=良いこと、と学習させるため
ステップ2:汚れを「浮かせる」のがコツ
乾いて固まった涙やけをいきなり擦るのは厳禁です。水分をたっぷり含ませたコットンを、汚れの上に10秒〜20秒ほど優しく当てて、汚れをふやかしてください。
「擦る」のではなく「吸い取る」ようなイメージで、優しく毛の流れに沿って拭い取ります。
ステップ3:最後は必ず乾燥させる
拭き取った後に目元が濡れたままになっていると、そこからまた細菌が繁殖してしまいます。乾いたティッシュやコットンで、最後にしっかりと水分をポンポンと叩くように吸い取ってください。
ケアの頻度とタイミング
涙やけのケアは「こまめに、手短に」が鉄則です。
-
頻度: 1日2回(朝と晩など)
-
タイミング: 猫がリラックスしているとき、または食後の満足しているとき
-
終了後: 必ず褒めて、大好きなおやつを少量あげてください。
毎日の習慣にすることで、汚れが固着するのを防ぎ、結果として1回あたりのケア時間を短くすることができます。
涙やけを根本から見直す!フード選びと生活環境
表面的なケアだけでなく、体の内側から涙やけを改善していくアプローチも重要です。
1. キャットフードの原材料をチェックする
多くの飼い主さんが、フードを切り替えることで涙やけの改善を実感しています。特に注目すべきポイントは以下の3点です。
-
動物性タンパク質の質: 粗悪な肉(ミール系)ではなく、人間も食べられるグレードの肉・魚を使用しているか
-
添加物の有無: 着色料、香料、強い保存料などが老廃物として溜まっていないか
-
穀物(グレイン)の量: 猫は穀物の消化が苦手なため、未消化物が鼻涙管の詰まりに影響することがあります
2. 水分摂取量を増やす
体の循環を良くし、老廃物の排出を促すために水分摂取は欠かせません。新鮮な水をいつでも飲めるようにするのはもちろん、ウェットフードを併用するのも非常に効果的です。
3. 住環境の清潔さを保つ
ハウスダストや花粉が目に刺激を与えている場合もあります。
-
空気清浄機の活用: 微細なゴミを除去する
-
トイレの砂を変える: 粉塵が舞いやすい砂は、目の刺激になりやすい
| 対策項目 | 改善のポイント | 期待できる効果 |
| フード改善 | グレインフリーや無添加を選ぶ | 老廃物の減少、消化の促進 |
| 水分補給 | 水飲み場を増やす、ウェット併用 | 涙の粘度低下、デトックス |
| 環境整備 | 低飛散の猫砂、こまめな掃除 | 物理的刺激の緩和 |
食生活の改善は、効果が出るまでに1〜2ヶ月ほどかかります。 焦らず、愛猫の体質に合ったものを見極めていきましょう。
病院へ行くべき受診の目安:見逃してはいけないサイン
涙やけの中には、自宅ケアだけでは対応できない深刻な病気が隠れている場合があります。「たかが涙やけ」と自己判断せず、以下のような症状が見られる場合は速やかに獣医師に相談してください。
1. 涙の色や性質が変わった
透明〜薄い茶色ではなく、黄色や緑色のドロっとした目ヤニが出ている場合は、細菌感染やウイルス感染(猫風邪など)の疑いが強いです。
2. 目そのものに異常がある
-
目が充血している
-
目をショボショボさせている
-
まぶたが腫れている
-
自分の手で頻繁に目をこすっている
これらのサインは「痛み」や「強い痒み」を伴っている証拠です。角膜に傷がついている可能性もあり、放置すると視力に影響が出る恐れがあります。
3. 悪臭が強い
目元の皮膚が赤く爛れていたり、鼻を突くような酸っぱい臭いがしたりする場合は、皮膚炎を併発しています。抗炎症薬や抗生剤による治療が必要です。
「いつもと違う」という飼い主さんの直感は、多くの場合当たっています。 迷ったら、スマホで目元の写真を撮って獣医さんに見せるのがスムーズです。
よくある質問
Q:人間用の目薬や洗浄液を使ってもいいですか?
A:絶対に避けてください。 人間用の製品には、猫の目にとって刺激が強すぎる成分や、有害な防腐剤が含まれていることがあります。必ず猫専用のものか、獣医師から処方されたものを使用しましょう。
Q:硼酸水(ほうさんすい)でのケアは有効ですか?
A:昔からの方法として知られていますが、濃度を間違えると角膜を傷つけるリスクがあります。現在はより安全で効果的な猫専用クリーナーが多く市販されているため、初心者が自作の硼酸水を使用することはおすすめしません。
Q:サプリメントで涙やけが治るって本当ですか?
A:乳酸菌や抗酸化作用のある成分を含むサプリメントが、体質改善をサポートし、結果として涙やけが軽減されるケースはあります。ただし、物理的な鼻涙管閉塞が原因の場合はサプリだけで完結させるのは難しいため、主食の改善と併せて補助的に取り入れるのが理想的です。
Q:白猫の涙やけは特に目立ちますが、漂白してもいいですか?
A:漂白成分を含む薬剤を目の周りに使うのは極めて危険です。 被毛の着色を落とすことよりも、新しい涙が毛を染めないように「こまめに拭く」「水分を飛ばす」という予防を徹底する方が安全かつ確実です。
Q:子猫の頃はなかったのに、成猫になってから急にひどくなることはありますか?
A:はい、あります。成長に伴う顔の骨格の変化で鼻涙管が圧迫されたり、後天的なアレルギーの発症、生活環境(多頭飼いによるストレスなど)の変化が原因となることがあります。
まとめ
-
涙やけの原因は「鼻涙管の閉塞」「物理的刺激」「食事・アレルギー」の3つに大別される
-
ケアの基本は「擦らずふやかして拭き取る」ことと「最後に必ず乾燥させる」こと
-
猫に嫌な記憶を植え付けないよう、ケア後には必ずご褒美をあげる
-
添加物の少ない高品質なフードへの切り替えや水分摂取が根本解決の近道となる
-
目の充血や黄色い目ヤニ、強い悪臭がある場合はすぐに動物病院を受診する
愛猫の目元を清潔に保つことは、単に見た目を良くするだけでなく、愛猫とのコミュニケーションの質を高め、些細な体調変化に気づくための大切な習慣です。
最初は嫌がってしまう猫ちゃんも、飼い主さんがリラックスして優しく接し続けることで、少しずつ慣れていってくれます。完璧を求めすぎず、愛猫のペースに合わせて「今日できる範囲」のケアから始めてみてください。 その積み重ねが、数ヶ月後のキラキラと輝く瞳へと繋がっていくはずです。


























逆まつげ: まつげが内側に向かって生え、常に角膜を刺激している
結膜炎・角膜炎: ウイルスや細菌、花粉などのアレルゲンによる炎症
異物: ゴミや自分の毛が目に入っている