猫と一緒に暮らしていると、喉を鳴らす「ゴロゴロ」という音は、もっとも身近で愛らしいコミュニケーションの一つです。
飼い主が撫でたときや、リラックスしているときに聞こえてくるその音は、多くの人にとって癒やしの象徴でしょう。
しかし、あまりにも長い時間ゴロゴロ言い続けていたり、今までになかったような頻度で鳴り響いたりしていると、「どこか具合が悪いのではないか」と不安になるものです。
実は、猫のゴロゴロ音には、私たちが想像する以上に多様な意味が込められています。
単なる幸福感の表現だけではなく、時には体調不良や極度のストレス、あるいは病気のサインとして「言い過ぎる」状態が現れることもあるのです。
この記事では、猫がゴロゴロと言い過ぎる背景にある心理や身体的な理由、そして飼い主が見逃してはいけない危険なサインについて、詳しく解説していきます。
愛猫の小さな変化に気づき、健やかな毎日を守るための判断基準として役立ててください。
もくじ
猫がゴロゴロと鳴く基本的な4つの理由
猫が喉を鳴らす仕組みは、脳からの信号を受けて喉の筋肉が収縮し、声帯を振動させることで起こります。この音には大きく分けて4つの意味があります。
まずは、なぜ猫がゴロゴロと音を出すのか、その根本的な理由を整理しておきましょう。
1. リラックスと幸福感の表現
もっとも一般的なのが、満足感を感じているときです。
飼い主に撫でられたとき、お気に入りの場所で丸まっているとき、あるいは母猫と子猫がコミュニケーションを取るときなど、「今の状況がとても心地よい」というメッセージとして発せられます。
このときのゴロゴロ音は、一定のリズムで低く穏やかに響くのが特徴です。
2. 何かを求めている「要求」のサイン
食事の時間や遊んでほしいときなど、飼い主に対して何かを要求している際にもゴロゴロと鳴くことがあります。
これは「ソリシテーション・パーリング(要求のゴロゴロ)」と呼ばれ、通常のリラックスした音よりも少し高周波で、人間の赤ちゃんの泣き声に近い成分が含まれているという研究結果もあります。
飼い主の注意を惹きつけるための、非常に高度なコミュニケーション手段といえるでしょう。
3. ストレスや不安を和らげる「鎮静」
意外に知られていないのが、猫が恐怖を感じているときや、緊張しているときにもゴロゴロと鳴くことです。
動物病院の診察台の上などで激しく鳴る場合、それはリラックスしているのではなく、自分自身の心を落ち着かせようとするセルフケアに近い行動です。
激しい緊張状態にあるとき、猫は自分のゴロゴロ音を聞くことで、心拍数を安定させようとしているのです。
4. 怪我や病気を治そうとする「自己治癒」
猫のゴロゴロ音の周波数(約25〜150ヘルツ)には、骨の密度を高め、細胞の修復を促進する効果があることがわかっています。
怪我をしているときや、内臓に痛みを感じているとき、猫はあえてゴロゴロと鳴き続けることで、自然治癒力を高めようとします。
もし愛猫がじっと動かずにゴロゴロ言い過ぎている場合は、この自己治癒のフェーズに入っている可能性を疑わなければなりません。
「ゴロゴロ言い過ぎ」と感じる際の注意すべき疾患
普段の様子と明らかに異なり、四六時中ゴロゴロと言っている、あるいは呼吸が荒い状態で鳴き続けている場合は、背後に疾患が隠れていることがあります。
特に高齢猫や、急に性格が変わったように感じる場合は注意が必要です。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
高齢の猫に多く見られる疾患で、代謝が異常に高まってしまう病気です。常に興奮状態にあるため、些細な刺激でも激しくゴロゴロと鳴いたり、夜中に走り回ったりすることが増えます。
食欲が異常にあるのに体重が減っていく、水をたくさん飲むといった症状が併発している場合は、早急な血液検査が必要です。
慢性的な痛みや関節炎
猫は自分の弱みを隠す動物ですが、関節炎や口内炎などの持続的な痛みがあるとき、その苦痛を紛らわすためにゴロゴロと言い続けることがあります。
「撫でようとすると嫌がる」「歩き方がぎこちない」といった変化とともに、ゴロゴロ音が鳴り止まないときは、痛みに耐えているサインかもしれません。
心筋症などの循環器疾患
心臓の機能が低下している際、呼吸を楽にしようとしたり、不安を感じたりすることでゴロゴロ音が大きくなることがあります。
この場合、ゴロゴロ音に混じって「ゼーゼー」という喘鳴(ぜんめい)が聞こえたり、舌の色が青白くなったりする「チアノーゼ」が見られることもあります。
これは非常に緊急性が高い状態です。
安心なゴロゴロと危険なゴロゴロの見分け方
愛猫がゴロゴロ言い過ぎているとき、それが「幸せの余韻」なのか「体調不良のサイン」なのかを見分けるのは容易ではありません。
以下の表を参考に、現在の状態をチェックしてみてください。
| 項目 | 安心できる状態 | 注意が必要な状態 |
| 音の質 | 低く、一定のリズムで穏やか | 高く鋭い、または濁った重い音 |
| 表情・目つき | 目を細めている、穏やか | 瞳孔が開いている、険しい表情 |
| 姿勢 | お腹を見せる、リラックスしている | 香箱座りでじっとしている、丸まる |
| 呼吸の状態 | ゆっくりと安定している | 呼吸が速い、お腹が大きく波打つ |
| 併発症状 | 特になし(食欲あり) | 食欲不振、嘔吐、元気がなさすぎる |
このように、「音そのもの」だけでなく、猫の姿勢や表情、そして呼吸の状態をトータルで観察することが重要です。
リラックスしているように見えても、実は痛みをこらえているというケースは少なくありません。
猫がゴロゴロと言い過ぎている時のセルフチェックリスト
もし愛猫のゴロゴロ音が気になったら、以下の項目を確認してください。
一つでも当てはまる場合は、数日間様子を見るのではなく、早めに獣医師に相談することをお勧めします。
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食欲が低下している、あるいは全く食べない
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名前を呼んでも反応が鈍く、ずっと一箇所で固まっている
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トイレの回数や量に明らかな変化がある
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撫でようとすると怒る、または逃げ出してしまう
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呼吸が1分間に40回を超えている(安静時)
特に、「今まで一度もこんなに長くゴロゴロ言ったことがない」という主観的な違和感は、飼い主だからこそ気づける重要な判断材料です。
猫の平熱や普段の呼吸数を知っておくことで、いざという時の判断がスムーズになります。
状況別:飼い主が取るべき適切な対応策
猫がゴロゴロ言い過ぎている時、どのように接するのが正解なのでしょうか。状況に応じたベストな対応をまとめました。
甘えている、または要求している場合
もし、お腹が空いている時間帯や、飼い主が帰宅した直後に激しくゴロゴロ鳴いているのであれば、それはコミュニケーションの一環です。
優しく声をかけたり、必要なケア(食事や遊び)を提供したりすることで、猫は満足し、音はやがて収まります。
過度に心配する必要はありませんが、要求がエスカレートしないよう適切な距離感を保つことも大切です。
痛みや不快感を感じている疑いがある場合
もし猫がじっとして動かず、どこか一点を見つめるようにしてゴロゴロ鳴いているなら、無理に抱き上げたり撫でたりするのは避けましょう。
痛みがある場所を触ってしまうと、猫にさらなるストレスを与えてしまいます。 静かな環境を整え、そっと様子を観察してください。
もし数時間経っても状況が変わらなければ、キャリーケースに入れて動物病院へ向かう準備をしましょう。
ストレスを感じている場合
引っ越し、新しいペットの加入、来客、あるいは外の工事の音など、環境の変化があった際にゴロゴロ言い過ぎるなら、それはパニックに近い状態かもしれません。
猫が隠れられる場所(キャットタワーのボックスやベッドの下など)を確保し、自分一人の時間を持てるように配慮してあげてください。
飼い主が焦って構いすぎるのは逆効果になることが多いです。
よくある質問
猫のゴロゴロ音に関して、飼い主から寄せられることの多い疑問をまとめました。
Q:寝ている時までずっとゴロゴロ言っています。異常でしょうか?
A:寝ている時に聞こえるゴロゴロ音は、多くの場合、深いリラックス状態にある証拠です。ただし、寝ている姿勢が苦しそうだったり、呼吸が荒かったりする場合は、心疾患や肺の病気により「横になると苦しいから座ったまま寝ている(座位呼吸)」状態で、不安からゴロゴロ鳴いている可能性があります。呼吸のリズムを必ずチェックしてください。
Q:高齢になってから急にゴロゴロ言う回数が増えました。
A:加齢とともに耳が遠くなったり、不安を感じやすくなったりすることで、飼い主の存在を確認するためにゴロゴロ鳴く回数が増えることがあります。しかし、前述した甲状腺機能亢進症や高血圧、認知機能不全の初期症状として現れることも少なくありません。健康診断の頻度を増やし、血液検査を行うことをお勧めします。
Q:ゴロゴロ音が以前より大きくなった気がします。
A:音の大きさが変化するのは、猫の筋力の変化や、鼻腔・喉の状態によるものが多いです。単に甘えたい気持ちが強くなっただけなら良いのですが、「鼻が詰まったような音」や「ガラガラと濁った音」に変わった場合は、上部気道感染症(猫風邪)や喉のポリープなどの可能性も考えられます。
Q:子猫が一日中ゴロゴロ言っています。
A:子猫にとってゴロゴロ音は、母猫に「私は元気だよ」「ここにいるよ」と伝えるための重要な信号です。健康で食欲もあり、元気に走り回っているなら、一日中鳴っていても全く問題ありません。 むしろ、子猫期特有の旺盛なコミュニケーション欲求の表れといえます。
まとめ
猫がゴロゴロと言い過ぎる現象には、私たちが癒やされるポジティブな理由だけでなく、身体のSOSが隠されている場合があることを忘れてはいけません。
大切なのは、愛猫が発するその音が、心からの満足によるものなのか、それとも助けを求めるサインなのかを冷静に見極めることです。
普段から愛猫とのコミュニケーションを深め、リラックスした状態の「標準的なゴロゴロ音」を把握しておくことが、いざという時の早期発見につながります。
もし少しでも「いつもの様子と違う」と感じたなら、それはあなたの直感が愛猫の異変をキャッチした証拠です。
言葉を持たない彼らの代わりに、その小さな音に耳を傾け、適切なケアを選んであげてください。その積み重ねが、愛猫との長く幸せな時間を支える礎となります。




























ゴロゴロ音は幸福だけでなく、要求、ストレス、自己治癒の意味を持つ
痛みや疾患(甲状腺、心筋症など)を紛らわすために「言い過ぎる」ことがある
「音の質」だけでなく、表情、姿勢、呼吸数をセットで観察する
食欲不振や元気の消失が伴う場合は、迷わず動物病院を受診する
普段の鳴き方との「違い」に気づけるのは飼い主だけである