愛猫のお尻から強烈な臭いがしたり、フローリングにお尻を擦り付けて歩く姿を見かけたりしたことはありませんか。
それは「肛門腺(こうもんせん)」に分泌物が溜まっているサインかもしれません。
猫の肛門腺ケアは、すべての猫に必須というわけではありませんが、体質や年齢によっては飼い主さんのサポートが不可欠な場合があります。
放置すると、袋が破裂する「肛門嚢破裂」など、猫に強い痛みを与える深刻な事態を招く恐れがあります。
本記事では、猫の肛門腺の仕組みから、自宅で安全に行うための絞り方、そして動物病院を受診すべき異常のサインまでを詳しく解説します。愛猫が健やかで快適に過ごせるよう、正しい知識を身につけましょう。
猫の肛門腺とは?役割と臭いの正体
猫の肛門の左右には、**「肛門嚢(こうもんのう)」**と呼ばれる小さな袋が一対あります。この袋の中に溜まる分泌物を出す器官が肛門腺です。
肛門腺の役割と分泌物の特徴
肛門腺から出る分泌物は、猫にとって大切な**「個体識別」の役割**を持っています。
分泌物の状態は猫によって異なり、サラサラした液体状から、ドロっとした粘土状のものまで様々です。いずれも非常に強烈な独特の臭いがするのが特徴です。
なぜ肛門腺が溜まるのか
通常、分泌物は排便時の力みや運動によって自然に排出されます。しかし、以下のような要因で排出がスムーズにいかなくなることがあります。
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体質: 分泌物が固まりやすく、出口が詰まりやすい。
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加齢: 肛門周りの筋力が低下し、押し出す力が弱くなる。
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肥満: 脂肪によって圧迫され、自然な排出が妨げられる。
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軟便・下痢: 排便時に十分な圧力がかからないため、袋の中に残ってしまう。
自分の猫が自分で出せるタイプかどうかを知ることが、ケアの第一歩となります。
肛門腺絞りが必要な猫と不要な猫の見分け方
実は、多くの猫は生涯を通じて一度も肛門腺絞りを必要としません。しかし、一部の猫にとっては定期的なケアが健康維持の鍵となります。
ケアが必要な猫のサイン(チェックリスト)
愛猫に以下のような様子が見られる場合は、肛門腺が溜まっている可能性が高いです。
| 観察ポイント | チェック内容 |
| 動作 | お尻を床に擦り付けて歩く(お尻歩き) |
| 毛づくろい | お尻の周りを過剰に舐めたり、噛んだりしている |
| 臭い | お尻から生臭い、金属のような強い悪臭がする |
| 排泄 | 排便時に痛そうに鳴く、または時間がかかる |
| 外見 | 肛門の斜め下がぷっくりと腫れている |
これらのサインは、猫からの**「お尻が不快で苦しい」というメッセージ**です。
ケアが不要な猫
日常的に硬めの健康的な便をしており、お尻を気にしている様子がなければ、無理に絞る必要はありません。
逆に、溜まっていないのに無理に絞ろうとすると、皮膚を傷つけたり炎症を起こしたりするリスクがあるため注意が必要です。
自宅でできる!安全な肛門腺の絞り方手順
自宅でケアを行う際は、猫を驚かせないよう「手早く、優しく」行うのが鉄則です。
暴れる場合は無理をせず、すぐに中止して動物病院へ相談してください。
準備するもの
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使い捨て手袋: 臭いが手に付くのを防ぎ、衛生的です。
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ティッシュまたはガーゼ: 飛び散り防止と拭き取り用。
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ぬるま湯やペット用ウェットティッシュ: 絞った後の洗浄用。
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バスタオル: 猫を保定(固定)するために使用します。
ステップ1:正しいポジションで保定する
猫が動かないよう、テーブルなどの安定した場所に乗せます。一人で行うのが難しい場合は、一人が猫の脇を抱えて立たせるか、バスタオルで優しく包んで顔を隠すと落ち着きやすくなります。
猫の尻尾を垂直に持ち上げると、肛門周りの皮膚が伸びて、腺の位置が確認しやすくなります。
ステップ2:時計の4時と8時の位置を把握する
肛門を中心に、時計の針の**「4時」と「8時」の位置**に、ふっくらとした膨らみ(肛門嚢)を探します。
ステップ3:下から押し出すように絞る
親指と人差し指で、その膨らみを**「後ろから前(出口)に向かって」**優しくつまみ上げるように圧力をかけます。
このとき、直接触れるのではなく、ティッシュやガーゼを被せた状態で行うと、分泌物の飛び散りを防げます。
爪を立てたり、強く押しすぎたりするのは厳禁です。 適切な位置を捉えていれば、軽い力で中身が出てきます。
ステップ4:優しく拭き取り、洗浄する
分泌物が出たら、湿らせたガーゼなどで丁寧に拭き取ります。臭いが強いため、残っていると猫が気にして舐め壊してしまうことがあります。最後はしっかり清潔にすることが大切です。
放置は厳禁!「肛門嚢炎」と「破裂」の恐怖
肛門腺が溜まったまま放置されると、袋の中で細菌が繁殖し、炎症を引き起こします。
肛門嚢炎(こうもんのうえん)
袋が炎症を起こすと、強い痛みと熱を伴います。猫は激しくお尻を気にし、食欲が落ちることもあります。この段階で気づき、動物病院で洗浄と抗生物質の投与を受けることが重要です。
肛門嚢破裂(こうもんのうはれつ)
炎症が悪化して膿が溜まりすぎると、袋が圧力に耐えきれず、皮膚を突き破って破裂してしまいます。
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症状: お尻の横に穴が開き、血混じりの膿が出てきます。
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治療: 傷口の洗浄、壊死した組織の除去、ひどい場合は縫合手術が必要になります。
「ただお尻が臭いだけ」と放置せず、早めのケアが大きな病気を防ぐことにつながります。
よくある質問
Q:どのくらいの頻度で絞ればいいですか?
A:個体差がありますが、溜まりやすい猫の場合は月に1回程度が目安です。
あまり頻繁に行うと皮膚を痛める原因になるため、愛猫の様子(お尻歩きなど)を見ながら調整しましょう。
Q:自分で絞ろうとしても全く出ません。
A:出口が固まった分泌物で詰まっているか、位置がずれている可能性があります。
無理に出そうとすると組織を傷める危険があるため、一度動物病院で処置してもらい、コツを教わるのが一番の近道です。
Q:病院で頼むと費用はどのくらいかかりますか?
A:一般的には500円〜1,500円程度です。
再診料や爪切りなどの他のケアとセットになっている場合もあります。プロに任せれば確実で安全ですので、無理に自宅で行う必要はありません。
Q:肛門腺絞りを嫌がって暴れる場合はどうすればいいですか?
A:無理強いは絶対に禁物です。
猫にとってお尻は非常にデリケートな部位であり、恐怖心を感じると飼い主さんとの信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
まずはバスタオルで全身を優しく包み、目隠しをすることで落ち着かせることができるか試してください。
それでも激しく抵抗する場合は、自宅でのケアを諦め、プロの手を借りるのが最も賢明な判断です。動物病院やトリミングサロンでは、専門のスタッフが2名体制で保定と処置を行うため、猫への負担を最小限に抑えることができます。
無理に押さえつけて怪我をさせたり、肛門腺を傷つけたりするリスクを避けることを最優先に考えてください。
Q:分泌物の色が以前と違うのですが、病気でしょうか?
A:分泌物の色や硬さは、猫の体調や年齢によって変化することがあります。
一般的には茶色や灰色、黄色っぽい液体ですが、**注意が必要なのは「血混じり」や「緑色の膿のような状態」**です。
色が明らかに赤みがかっていたり、ドロドロとした不透明な緑色をしていたりする場合、内部で細菌感染による炎症(肛門嚢炎)が起きている可能性が非常に高いです。
また、強烈な腐敗臭がする場合も要注意です。色に異変を感じたときは、絞った分泌物をティッシュに残したまま動物病院へ持参し、獣医師に確認してもらうことをおすすめします。
Q:子猫のうちから肛門腺絞りの練習をすべきですか?
A:子猫の時期はまだ分泌物の量も少なく、多くの場合は自然に排出されます。
しかし、将来的にケアが必要になった時のために、「お尻周りを触られることに慣れさせておく」練習は非常に有効です。
日常のブラッシングやスキンシップのついでに、尻尾の付け根を持ち上げたり、肛門周りを軽く拭いたりする習慣をつけておきましょう。
お尻を触られても嫌がらない状態にしておけば、成猫になってからケアが必要になった際、スムーズに処置を行うことができます。ただし、実際に絞る行為は、分泌物が溜まっていることが確認できるまで控えてください。
Q:下痢が続くと肛門腺が溜まりやすくなるのはなぜですか?
A:健康な猫の場合、硬い便が肛門を通過する際の圧力が「天然の押し出し器」として機能し、肛門腺が自然に空になります。しかし、下痢や軟便が続くと、この物理的な圧力がかからないため、分泌物が袋の中に残ったままになってしまいます。
軟便が数日間続く場合は、お尻の臭いをチェックしてみてください。
下痢そのものの治療はもちろん優先事項ですが、並行してお尻の不快感を取り除いてあげることで、猫のストレスを軽減できます。
また、下痢の際は肛門周辺が不潔になりやすく、細菌が逆流して炎症を起こしやすいため、より注意深い観察が必要です。
Q:肛門腺絞りのやりすぎで「癖になる」ことはありますか?
A:医学的に「絞ることで分泌量が増える(癖になる)」という根拠はありません。
しかし、不必要な頻度で強く絞り続けると、肛門腺の出口や周囲の組織が慢性的なダメージを受け、逆に自力で排出する機能が低下するリスクは考えられます。
あくまで「溜まっているサインが出た時」または「獣医師から推奨された頻度」を守ることが基本です。健康な猫に対して予防的に毎日行うようなケアではありません。
愛猫の個体差を見極め、適切なサイクルを見つけることが、お尻の健康を維持するための正しい向き合い方です。
Q:多頭飼いの場合、他の猫がお尻を気にするのはサインですか?
A:はい、非常に重要なサインの一つです。
同居している他の猫が、特定の猫のお尻を執拗に嗅いだり、しつこく舐めようとしたりする場合、その猫の肛門腺が満杯になり、強い臭いを発している可能性があります。
猫は嗅覚が鋭いため、人間が気づくよりも早く「臭いの変化」を察知します。
特定の猫だけがお尻を狙われるような仕草が見られたら、その猫の肛門腺をチェックしてあげてください。放置すると猫同士のコミュニケーションに悪影響(しつこくされて喧嘩になる等)を与えることもあるため、早めの対処が望ましいです。
まとめ
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肛門腺は個体識別用の分泌物が出る袋で、通常は排便時に自然排出される。
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お尻を床に擦り付けたり、過剰に舐めたりする場合は、分泌物が溜まっているサイン。
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絞る際は「4時と8時」の位置を、下から上へ優しく押し上げる。
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無理なセルフケアは炎症や怪我の元になるため、難しい場合はプロに頼む。
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放置すると肛門嚢破裂を招く恐れがあるため、早期発見とケアが重要。
猫の肛門腺ケアは、全ての飼い主さんが完璧にこなす必要はありません。
大切なのは、「自分の猫にケアが必要かどうか」を正しく見極めること、そして異常を感じたときにすぐに対応できる準備をしておくことです。
日頃のスキンシップの中で、お尻周りの臭いや腫れ、猫の仕草に少しだけ意識を向けてみてください。
もし不安なことがあれば、定期健診のついでに獣医師に相談してみるのも良いでしょう。適切なケアを通じて、愛猫の快適な毎日を守ってあげてください。


























マーキング: 排便時に一緒に分泌物が出ることで、自分の縄張りを主張します。
コミュニケーション: 猫同士がお尻の臭いを嗅ぎ合うのは、この分泌物の臭いで相手の情報を確認しているためです。