「うちの子、なんだか顔が不細工で……」そんな風に言いながら、目尻を下げて愛猫を撫でる飼い主が急増しています。
かつては整った顔立ちの猫が好まれる傾向にありましたが、現在は「ブス猫(ぶさかわ猫)」というジャンルが確立され、その中毒性の高い魅力にハマる人が後を絶ちません。
一度その魅力に気づいてしまうと、普通の美形猫では物足りなくなるとまで言われるブス猫たち。彼らはなぜこれほどまでに私たちの心を掴んで離さないのでしょうか。
この記事では、ブス猫と称される「ぶさかわ猫」の定義から、その愛らしさの秘密、代表的な種類、そして特有の健康管理方法まで、余すことなくお伝えします。
もくじ
ブス猫(ぶさかわ猫)の定義と現代における価値
まず明確にしておきたいのは、ここで言う「ブス猫」とは、決して蔑んでいる言葉ではないということです。むしろ、「整っていないからこそ愛おしい」「不細工なところがたまらなく可愛い」という、深い愛情と敬意が込められた最高の褒め言葉です。
ぶさかわ猫とはどんな猫を指すのか
一般的にブス猫、あるいはぶさかわ猫と呼ばれる猫たちには、共通する外見的特徴があります。
これらの特徴は、生物学的な「美」の基準からは外れるかもしれません。しかし、人間はこの「未完成な造形」や「人間味あふれる表情」に対して、本能的に保護欲や親近感を抱くようにできています。
SNS時代に加速したブス猫ブーム
InstagramやTwitter(現X)の普及により、ブス猫の地位は一気に向上しました。完璧な美しさを持つ猫は見ていて癒やされますが、どこかコミカルで「クスッ」と笑わせてくれるブス猫の写真は、圧倒的な拡散力と共感を生みます。
「仕事で疲れていたけれど、この顔を見たら悩みがいかにちっぽけか分かった」といった声も多く、現代人にとってブス猫は、心のデトックスを促す存在となっているのです。
なぜブス猫はこれほどまでに愛されるのか?
なぜ私たちは、整っていない顔立ちの猫に対してこれほどまでの情熱を注ぐのでしょうか。そこには、単なる好みの問題だけではない、深い心理的・視覚的な理由が隠されています。
1. 人間に近い表情の豊かさ
鼻が低い短頭種の猫は、顔のパーツが中心に寄っているため、他の猫種に比べて表情が非常に豊かに見えます。困っているような顔、怒っているような顔、あるいは何かを深く考え込んでいるような哲学的な顔。
これらの表情は、「まるで人間が猫の着ぐるみを着ているよう」な親近感を与えます。飼い主は愛猫の顔を見るたびに、そこに豊かな感情を読み取り、深いコミュニケーションをとっているような感覚に陥るのです。
2. ベビーフェイス効果(ベビースキーマ)
動物行動学者のコンラート・ローレンツが提唱した「ベビースキーマ」という概念があります。これは、丸い顔、大きな目、低い鼻といった「赤ちゃんの身体的特徴」を見ると、人間は本能的に「可愛い」「守ってあげたい」と感じるという仕組みです。
ぶさかわ猫の多くは、まさにこのベビースキーマを凝縮したような顔立ちをしています。「ブス」と言いつつも、脳は「守るべき愛おしい存在」として認識しているため、私たちは抗うことができないのです。
3. 「ギャップ萌え」の破壊力
ブス猫たちの多くは、その不機嫌そうな外見とは裏腹に、非常に穏やかで甘えん坊な性格をしています。
見た目は「頑固なおじいさん」なのに、実際は「膝の上が大好きな甘えん坊」。この外見と内面のギャップこそが、飼い主の心を鷲掴みにする最大のポイントと言えるでしょう。
代表的なぶさかわ猫の種類とその特徴
「ブス猫」の代表格として知られる猫種はいくつか存在します。それぞれに異なる魅力があり、知れば知るほどその奥深さに気づかされるはずです。
エキゾチックショートヘア:ぶさかわ界の絶対王者
「パグのような猫」と称されるエキゾチックショートヘアは、まさにぶさかわ猫の代名詞です。ペルシャ猫をベースに、短毛種との交配で生まれたこの種は、ペルシャの優雅さと短毛の手入れのしやすさを兼ね備えています。
エキゾチックショートヘアの主な特徴を以下の表にまとめました。
ぶさかわ猫を代表するエキゾチックショートヘアの特徴一覧
| 項目 | 特徴・内容 |
| 顔立ち | 完全に平面的な「エクストリームフェイス」が理想とされる |
| 性格 | 非常に穏やかで平和主義。鳴き声も小さく、室内飼いに適している |
| 体型 | コビータイプ。ずんぐりむっくりとした筋肉質の体 |
| 手入れ | 短毛だが密度が高いため、週2〜3回のブラッシングを推奨 |
| 魅力 | 潰れた鼻と離れた目。どんなポーズもコミカルになる |
エキゾチックショートヘアは、その圧倒的な愛嬌で、多くの著名人やインフルエンサーにも愛されています。
ペルシャ:気品と不貞腐れ顔の融合
「猫の王様」と呼ばれるペルシャも、ブス猫愛好家にとっては外せない存在です。特に鼻が非常に高い位置にある「ピークフェイス」と呼ばれるタイプは、非常に個性的な顔立ちをしています。
長い被毛に覆われた気品ある姿と、どこか不満げな表情のコントラストは、唯一無二の芸術品のような美しさ(と不細工さ)を感じさせます。
セルカークレックス:不細工な寝癖のような被毛
「羊の皮を被った猫」とも言われるセルカークレックスは、全身がくるくるとした巻き毛に覆われています。顔立ち自体は丸顔で愛らしいのですが、その毛質のせいで「いつも寝起きで寝癖がついている」ような、なんとも言えないマヌケな可愛さがあります。
スコティッシュフォールド(立ち耳・折れ耳)
スコティッシュフォールドは美形な個体も多いですが、その丸すぎる顔と低い鼻の個体は、非常に高い「ぶさかわ度」を誇ります。特に、顔のパーツが中央にギュッと寄ったタイプは、見れば見るほど味のある表情を見せてくれます。
ぶさかわ猫(短頭種)との暮らしで知っておくべきこと
ぶさかわ猫、特に鼻が低い「短頭種」の猫たちと暮らすには、その特殊な身体構造を理解した上での適切なケアが不可欠です。見た目の可愛さだけで選ぶのではなく、彼らが健康で快適に過ごせる環境を整えることが飼い主の責任です。
1. 毎日の顔周りのお手入れ(涙焼け対策)
鼻が低い猫は、鼻涙管(びるいかん)が圧迫されやすいため、涙が溢れやすいという特徴があります。これを放置すると、目の周りの毛が茶色く変色する「涙焼け」になったり、皮膚炎を起こしたりします。
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ぬるま湯で湿らせたコットンやガーゼで、こまめに目の周りを拭いてあげましょう。
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力を入れすぎず、優しく押し当てるようにして水分を吸い取ります。
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目ヤニが固まっている場合は、ふやかしてから取り除いてください。
清潔な顔周りを保つことが、ぶさかわ猫の健康と美しさを維持する第一歩です。
2. 室温管理の徹底(熱中症・呼吸器への配慮)
短頭種の猫は、鼻腔が短いため体温調節が苦手です。また、呼吸の効率が悪くなりやすいため、暑い時期は特に注意が必要です。
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夏場は24時間エアコンを稼働させ、室温を25度前後に保つ。
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湿度が上がりすぎないように除湿も併用する。
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激しい運動をさせた後は、呼吸が荒くなっていないか確認する。
彼らにとって、日本の夏は過酷であるということを常に忘れないでください。
3. 食事の工夫
顔が平らな猫は、深い食器からキャットフードを食べるのが苦手な場合があります。
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平皿に近い、浅くて広い食器を選んであげましょう。
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フードがこぼれにくいように、ふちに返りがあるタイプもおすすめです。
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食べるときに鼻がフードに当たってしまう場合は、台を置いて食器の高さを調節してあげてください。
4. 特有の疾患に関する知識
ぶさかわ猫(特にエキゾチックやペルシャ)には、遺伝的にかかりやすい病気があります。
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多発性嚢胞腎(PKD): 腎臓に水の溜まった袋ができ、徐々に腎機能を低下させる病気。
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短頭種気道症候群: 構造的に呼吸がしにくくなる状態。
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肥大型心筋症: 心臓の壁が厚くなり、血流が悪くなる病気。
定期的な健康診断を受け、早期発見に努めることが愛猫の寿命を延ばすことに直結します。
ブス猫をより可愛く撮るための撮影テクニック
SNSで愛猫の「ブス可愛い」姿を共有したいなら、撮影方法にもこだわりましょう。普通の猫とは違う、ブス猫ならではの魅力を引き出すコツを紹介します。
下からのアングルで「鼻の穴」を強調
通常、ペットの写真は目線の高さで撮るのが基本ですが、ぶさかわ猫の場合は「あおり(下から)」のアングルがおすすめです。
低い鼻と、むにゅっとした口元が強調され、よりコミカルで愛らしい表情が撮れます。特に寝ているときに下から撮ると、重力で顔がさらに平らになり、破壊力抜群の1枚になります。
自然光を活かして「シワ」を立体的に
家の中の暗い場所でフラッシュを使うと、顔の凹凸が消えてしまい、せっかくの味わい深い表情が台無しになります。
窓際の自然光が入る場所で撮影すると、顔のシワや毛並みが立体的に写り、「ブス可愛い」の深みが増します。曇りの日の柔らかい光が、彼らの穏やかな雰囲気を引き立てるのに最適です。
動画で伝える「動きの不器用さ」
ぶさかわ猫は、その体型や顔の構造ゆえに、動きが少し不器用なことがあります。
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おもちゃを追いかけて空振る姿
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顔を洗おうとして手が届いていない様子
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一生懸命に毛づくろいをしている不貞腐れ顔
これらの動的な魅力は、写真よりも動画の方が伝わりやすいです。ぜひスローモーション機能なども活用してみてください。
ぶさかわ猫を迎え入れるためのルートと比較
「自分もブス猫の飼い主になりたい!」と思ったら、どこで出会えるのでしょうか。主な3つのルートを比較しました。
ぶさかわ猫(短頭種)の入手ルート比較
| ルート | メリット | デメリット | 向いている人 |
| ブリーダー | 親猫の顔立ちや性格を確認でき、専門的な相談ができる。PKD検査済みが多い。 | 費用が高額になりやすく、遠方まで足を運ぶ必要がある。 | 特定の猫種(エキゾチック等)にこだわりがある人。 |
| ペットショップ | 気軽に見学でき、必要な用品もその場ですべて揃う。 | 遺伝的疾患のチェックが不十分な場合がある。価格に中間マージンが乗る。 | 初めて猫を飼う人で、サポート体制を重視する人。 |
| 里親(保護団体) | 殺処分される可能性のある猫を救える。費用が抑えられる。 | 短頭種は人気が高く、すぐに応募が埋まる。成猫であることが多い。 | 外見だけでなく、猫の福祉を最優先に考えられる人。 |
最近では、SNSを通じてブリーダーから直接購入するケースも増えていますが、「信頼できる相手かどうか」を見極めることが何より大切です。
よくある質問
Q:ブス猫(エキゾチックなど)は性格が悪いって本当ですか?
A:それは大きな誤解です。 むしろその逆で、エキゾチックショートヘアやペルシャなどの短頭種は、数ある猫種の中でもトップクラスに「穏やかで温厚」な性格をしています。不機嫌そうな顔をしているのは、あくまで顔の構造上の問題であり、心の中は非常に平和主義で甘えん坊な個体がほとんどです。攻撃性も低いため、多頭飼いや小さなお子さんがいる家庭でも飼いやすい猫種と言えます。
Q:鼻が低い猫は寿命が短いのでしょうか?
A:適切なケアと環境があれば、他の猫種と変わりません。 ただし、本文でも触れた通り、呼吸器疾患や腎臓の病気(PKDなど)にかかりやすい傾向があるのは事実です。室温管理を徹底し、定期的な健康診断を行うことで、15年、あるいはそれ以上元気に過ごす子もたくさんいます。飼い主がどれだけその子の特異性を理解してサポートできるかが重要です。
Q:ブス猫特有の臭いはありますか?
A:顔のシワの間に汚れが溜まると、臭いの原因になります。 涙やよだれがシワの間に溜まり、そこで雑菌が繁殖すると、酸っぱいような独特の臭いが発生することがあります。これは、毎日こまめにシワの間を専用のシートや湿らせた布で拭いてあげることで防げます。猫自体が臭いわけではなく、お手入れ不足による皮膚トラブルが原因であることがほとんどです。
Q:一人暮らしでもぶさかわ猫を飼えますか?
A:比較的、一人暮らしに向いている猫種が多いです。 ぶさかわ猫の代表格であるエキゾチックショートヘアなどは、運動量がそれほど多くなく、おっとりとした性格のため、狭いマンションなどでもストレスを溜めにくい傾向があります。また、鳴き声も小さく、家具を激しく傷つけるような活発さも控えめな個体が多いため、都会の一人暮らしには非常に適したパートナーと言えるでしょう。ただし、長時間の留守番時は室温管理だけは絶対に行ってください。
Q:ぶさかわ猫の「里親」になるのは難しいですか?
A:競争率は高いですが、チャンスはあります。 純血種の短頭種が里親募集に出されると、非常に多くの応募が集まるため、審査は厳しくなる傾向にあります。特に「鼻が低い猫の飼育経験があるか」「適切な室温管理ができるか」といった点が重視されます。保護猫サイトをこまめにチェックするほか、短頭種専門のレスキュー団体などをフォローしておくのが近道かもしれません。
まとめ
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ブス猫(ぶさかわ猫)とは、愛情を込めた褒め言葉であり、現代ではその個性が高く評価されている。
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魅力の秘密は、人間のような豊かな表情、ベビースキーマによる保護欲の刺激、そして外見と性格のギャップにある。
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代表的な種類には、エキゾチックショートヘア、ペルシャ、セルカークレックスなどが挙げられる。
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短頭種特有のケアとして、涙焼けの掃除、徹底した室温管理、遺伝的疾患への理解が不可欠である。
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迎え入れる際は、ブリーダー、ショップ、里親などのルートがあるが、信頼できる相手から譲り受けることが大切。
「ブス猫」という言葉の裏側には、美しさの既成概念を超えた、深い深い愛情の世界が広がっています。彼らの潰れた鼻、不機嫌そうな目、そして誰よりも温かい心は、忙しい現代を生きる私たちに「ありのままでいいんだよ」と教えてくれているような気さえします。
もしあなたが、完璧な美しさよりも「味のある愛おしさ」を求めているのであれば、ぶさかわ猫との暮らしは、これ以上ない幸福を運んできてくれるでしょう。その個性的な顔を見つめるたびに、あなたはきっと、自分でも驚くほど深い笑顔になっているはずです。彼らとの毎日は、決して飽きることのない、驚きと癒やしに満ちたものになることをお約束します。


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鼻が低く、顔が平面的(短頭種)
目が離れていたり、逆に寄り目だったりする
口元がむにゅっとしていて、常に不機嫌そうに見える
眉間にシワが寄っているような表情を見せる
舌が少しだけ出っぱなしになっている