ブルドッグと一口に言っても、日本でよく見かける愛らしい小型のタイプから、筋肉隆々で迫力のある大型タイプまで、実は非常に多様な種類が存在します。
「ブルドッグを飼いたいけれど、種類が多すぎて何が違うのかわからない」
と悩んでいる方は少なくありません。
元々は19世紀頃のイギリスで「ブル・ベイティング(牛いじめ)」という競技に使われていた犬たちがルーツですが、その後、国や目的によって独自の進化を遂げました。
現在では、サイズも性格も異なる複数の系統に分かれています。
この記事では、ブルドッグの主要な3系統(イングリッシュ、アメリカン、フレンチ)の特徴を徹底比較し、さらにボストン・テリアやパグといった「よく似た犬種」との明確な見分け方についても詳しく解説します。
もくじ
ブルドッグの種類は大きく分けて3系統
現在、「ブルドッグ」という名前を冠して一般的に知られているのは、主に以下の3つの系統です。これらは原産国や改良された目的が異なるため、見た目だけでなく飼育環境にも大きな違いがあります。
イングリッシュ・ブルドッグ(標準種)
一般的に「ブルドッグ」と呼ぶ場合、このイングリッシュ・ブルドッグ(ブリティッシュ・ブルドッグ)を指します。
イギリスが原産で、闘犬としての荒々しさを取り除き、家庭犬として穏やかで従順な性格に改良された歴史を持ちます。
がっしりとした低い体勢と、深く刻まれた顔のシワ、そして「ローズイヤー」と呼ばれる後ろに流れた耳が特徴です。
体重は23〜25kgほどの中型犬ですが、見た目以上の重量感と存在感があります。性格は非常におっとりしており、無駄吠えも少ないため、室内飼育に適しています。
アメリカン・ブルドッグ(大型・作業種)
アメリカン・ブルドッグは、イングリッシュ・ブルドッグとは対照的に、高い運動能力と防衛能力を持つ作業犬として発展しました。
足が長く、筋肉質で引き締まった体格をしており、体重は30〜60kgにも達する大型犬です。
イングリッシュ・ブルドッグよりも顔のシワが少なく、活動的で走るのも得意です。性格は勇敢で自信に満ちていますが、飼い主に対しては非常に忠実です。
ただし、十分な運動量が必要であり、力も強いため、中・上級者向けの犬種と言えるでしょう。
フレンチ・ブルドッグ(小型・愛玩種)
日本国内で最も人気が高いのが、このフレンチ・ブルドッグです。
19世紀にイギリスのブルドッグがフランスに渡り、パグやテリアなどと交配されて誕生しました。
最大の特徴は、ピンと立った大きな「バットイヤー(コウモリ耳)」です。
体重は8〜14kg程度の小型犬に分類され、マンションなどの集合住宅でも飼いやすいサイズ感が魅力です。
甘えん坊で社交的な性格をしており、人間が大好きです。一方で、寂しがり屋な一面もあるため、長時間の留守番は少し苦手な傾向があります。
【徹底比較】ブルドッグ3系統のサイズ・性格・運動量一覧表
それぞれの種類によって、必要な飼育環境や接し方は大きく異なります。以下の表で、主要な3系統の違いを比較してみましょう。
主要なブルドッグ3系統の比較
このように比較すると、同じ「ブルドッグ」という名前でも、サイズや寿命に大きな開きがあることがわかります。
特に運動量は、アメリカン・ブルドッグが突出して高いため、自分の生活スタイルと照らし合わせることが重要です。
ブルドッグと間違われやすい「似ている犬種」との見分け方
ブルドッグ、特にフレンチ・ブルドッグとよく混同される犬種がいくつかあります。一見そっくりですが、体のパーツに注目すると簡単に見分けることができます。
ボストン・テリアとの違い(耳と手足の長さ)
フレンチ・ブルドッグと最も間違われやすいのがボストン・テリアです。どちらも「鼻ぺちゃ」で立ち耳ですが、ボストン・テリアは手足が長く、スマートな体型をしています。
ボストン・テリアの耳はフレンチよりも先端が尖っており、まるでタキシードを着ているような白黒の毛柄(カラー)が標準的です。
フレンチが「がっしりしたマッチョ」なら、ボストン・テリアは「すらりとしたアスリート」といった印象です。
パグとの違い(耳と尻尾の巻き方)
パグもブルドッグに近い外見をしていますが、決定的な違いは耳と尻尾にあります。パグの耳は前に垂れており、尻尾はくるんと背中に向かって巻いています。
ブルドッグの尻尾は短く、ほとんど巻いていないか、少しねじれている程度です。また、パグはブルドッグよりもさらに一回り小さく、愛嬌のある「困り顔」がより強調されているのが特徴です。
さらに詳しく!タイプ別・毛色別のバリエーション
種類だけでなく、同じ犬種内での「タイプ」や「毛色」の違いを知ることで、より自分好みの1頭を見つけることができます。
フレンチ・ブルドッグの「アメリカタイプ」と「ヨーロッパタイプ」
フレンチ・ブルドッグには、さらに細かな2つの系統が存在します。
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アメリカタイプ: 頭が大きく、目が丸くて童顔。胴が短くコンパクトな体型。性格は穏やかで甘えん坊な子が多い。
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ヨーロッパタイプ: 筋肉質で骨太。アメリカタイプに比べると少し顔が四角く、凛々しい。活動的で慎重な性格。
日本でペットとして紹介される多くはアメリカタイプですが、ドッグショーなどではヨーロッパタイプが重視されることもあります。
ブルドッグの毛色の種類(ブリンドル、パイド、単色)
ブルドッグ(イングリッシュ)の毛色は、バリエーション豊かです。
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ブリンドル: 茶色や黒が混ざった「虎毛」のような模様。
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パイド: 白を基調に、目の周りや体に斑点模様が入るパターン。
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レッド/フォーン: 赤茶色や明るい茶色の単色。
「黒一色(ブラック)」は、イングリッシュ・ブルドッグにおいては好ましくない色とされています。
これは歴史的なスタンダードに基づくもので、健康面や血統を重視する場合には知っておきたいポイントです。
種類別・ライフスタイルに合わせた選び方のポイント
どの種類のブルドッグを選ぶべきかは、あなたの住環境や家族構成によって決まります。
もしあなたが、
「家でゆったりと一緒に過ごしたい、落ち着いたパートナー」
を探しているなら、イングリッシュ・ブルドッグが最適です。
彼らは激しい運動を必要とせず、飼い主のそばで寝そべっている時間を何よりも好みます。
一方で、
「マンション飼育で、可愛らしい愛玩犬としての魅力を楽しみたい」
のであれば、フレンチ・ブルドッグが一番の候補になるでしょう。
サイズ感も手頃で、しつけもしやすい傾向にあります。
もし広い庭があり、
「一緒にアクティブな活動を楽しみたい」
と考えているなら、アメリカン・ブルドッグを検討してみてください。
圧倒的な存在感と忠誠心で、最高のガードドッグ兼パートナーになってくれるはずです。
よくある質問
Q:ブルドッグ系を飼う際、一番注意すべき病気は何ですか?
A:全てのブルドッグ系に共通して注意が必要なのは「短頭種気道症候群」です。鼻の構造上、呼吸がしづらいため、激しい運動や高温多湿な環境は命に関わります。
特に日本の夏場は、24時間のエアコン管理が必須です。
また、皮膚のシワの間に汚れが溜まりやすく、皮膚炎になりやすいため、毎日ガーゼなどで優しく拭いてあげるケアが欠かせません。
Q:医療費は他の犬種に比べて高いのでしょうか?
A:正直に申し上げると、他の犬種に比べて医療費は高くなる傾向があります。
呼吸器や皮膚のトラブルに加え、イングリッシュ・ブルドッグなどは骨格の特性から関節疾患のリスクも持っています。
また、自然分娩が難しく帝王切開での出産が多いため、生体価格そのものも高価になりがちです。万が一に備え、ペット保険への加入を強くおすすめします。
Q:他の犬やペットとの多頭飼いは可能ですか?
A:フレンチ・ブルドッグは社交的なため比較的スムーズに馴染みやすいですが、イングリッシュやアメリカンは独占欲が強い一面や、遊びのつもりが大きな力で相手を圧倒してしまうことがあります。性格の相性はもちろん、体格差による不慮の事故を防ぐため、目を離さない環境作りが大切です。
Q:一番飼いやすいブルドッグの種類はどれですか?
A:一般的には、サイズが小さく室内飼育に適したフレンチ・ブルドッグが最も飼いやすいとされています。
ただし、イングリッシュ・ブルドッグも性格は非常に温厚で無駄吠えが少ないため、運動量を確保できない家庭には向いています。
どの種類も「暑さに弱い」という共通点があるため、夏場の温度管理ができることが前提となります。
Q:ミニチュア・ブルドッグという種類は存在しますか?
A:かつて19世紀頃には「ミニチュア・ブルドッグ」という呼び名が存在しましたが、現在は独立した犬種として公認されているわけではありません。
一般的に、通常のイングリッシュ・ブルドッグより小ぶりな個体や、フレンチ・ブルドッグの祖先を指す言葉として使われることがありますが、正式な犬種登録としては存在しないことを理解しておきましょう。
まとめ
ブルドッグの種類を知ることは、単に名前を覚えるだけでなく、それぞれの犬が持つ歴史や特性を理解することに繋がります。
見た目の好みだけでなく、自分の生活環境で無理なく幸せに育ててあげられるかを基準に選ぶことが、愛犬との素晴らしい生活への第一歩です。
どの種類を選んだとしても、その深い愛情とユニークな表情は、あなたの日常にかけがえのない癒やしを与えてくれることでしょう。



















ブルドッグは「イングリッシュ」「フレンチ」「アメリカン」の3系統に分かれる
イングリッシュは温厚な中型、フレンチは陽気な小型、アメリカンは活動的な大型
ボストン・テリアとは「足の長さ」と「耳の尖り方」で見分けることができる
パグとの最大の違いは「耳の形」と「尻尾の巻き方」にある
どの種類も「鼻ぺちゃ(短頭種)」ゆえの暑さ対策が飼育の必須条件である