ふとした瞬間に顎の下を触れて、コリッとしたしこりに気づくことがあります。
しかも、指で押すとツンとした痛みや、鈍い痛みを感じる場合、多くの人が
- 「これって癌(がん)じゃないの?」
- 「放置しても大丈夫?」
と強い不安を抱くものです。
ヤフー知恵袋などの相談サイトを見ても、同じような悩みを抱える人は非常に多く、回答を読み漁ってはさらに不安になってしまうケースも少なくありません。
しかし、顎の下にしこりができて「痛い」と感じる場合、その多くは急性の炎症によるものです。
この記事では、顎の下のしこりが痛む原因として考えられる病気、自宅でできるセルフチェックのポイント、そして何科を受診すべきかについて、医学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。
あなたの不安を解消し、適切な行動をとるための判断材料として活用してください。
もくじ
顎の下のしこりで「押すと痛い」場合に考えられる主な原因
顎の下には、リンパ節、唾液腺(顎下腺)、筋肉、そして皮膚といった様々な組織が密集しています。
しこりができて痛みを伴う場合、これらの組織に何らかの細菌感染やウイルス感染が起き、炎症が生じている可能性が高いと考えられます。
以下に、考えられる主な原因をまとめました。
リンパ節炎(急性リンパ節炎)
顎の下のしこりで最も頻度が高いのが、リンパ節の腫れです。
リンパ節は体内に侵入した細菌やウイルスを食い止める「検問所」のような役割を果たしています。
風邪をひいたり、虫歯があったり、口内炎ができたりすると、その近くにあるリンパ節が反応して腫れ上がります。
これを「反応性リンパ節腫脹」と呼びますが、細菌感染がひどい場合にはリンパ節自体が炎症を起こす「急性リンパ節炎」となります。
特徴としては、指で押すとはっきりとした痛みがあり、しこりが比較的柔らかく、皮膚の上から動くことが多いのが特徴です。
炎症が治まれば、しこりも自然に小さくなっていくことが一般的です。
唾液腺炎(顎下腺炎)
顎の下には「顎下腺(がっかせん)」という唾液を作る組織があります。
この顎下腺に細菌が入り込んで炎症を起こすと、顎の下が腫れて痛みます。
特に食事の際や食後に、顎の下の腫れや痛みが増す場合は、唾液の通り道に石ができる「顎下腺結石(がっかせんけっせき)」が原因であることも珍しくありません。
石が詰まることで唾液が流れなくなり、細菌感染を引き起こしやすくなるのです。
粉瘤(アテローマ)
皮膚のすぐ下にできるしこりの代表格が「粉瘤(ふんりゅう)」です。
本来なら皮膚から剥がれ落ちるはずの垢(角質)が、皮膚の内側にできた袋の中に溜まってしまう良性腫瘍の一種です。
通常は痛みはありませんが、袋の中で細菌が繁殖して炎症を起こすと(炎症性粉瘤)、急激に赤く腫れ上がり、激しい痛みを伴うようになります。
見た目が「大きなニキビ」のように見えることもありますが、無理に潰そうとすると悪化するため注意が必要です。
顎の下のしこりの原因比較表
顎の下のしこりには、原因によって異なる特徴があります。
以下の表で、主な原因とその特徴を整理しました。
| 原因 | 痛みの特徴 | しこりの質感 | その他の主な症状 |
| リンパ節炎 | 押すと痛い、動く | 比較的柔らかい | 発熱、喉の痛み、虫歯 |
| 顎下腺炎 | 食後に痛むことが多い | やや硬い | 口の渇き、腫れ |
| 粉瘤(炎症時) | ズキズキと強く痛む | 弾力がある | 赤み、中央に黒い点 |
| 悪性リンパ腫 | 通常は痛くない | ゴムのように硬い | 体重減少、寝汗 |
| がんの転移 | 通常は痛くない | 石のように硬い | 喉の違和感、声枯れ |
表からもわかる通り、「痛い」という症状がある場合は、感染症や炎症が原因である可能性が高いと言えます。
一方で、痛みが全くなく、石のように硬いしこりが徐々に大きくなる場合は、注意が必要です。
「痛いしこり」と「痛くないしこり」の違いと危険度
知恵袋でもよく議論されるのが、「痛いのは安心で、痛くないのは危ない」という説です。
これは医学的にもある程度の妥当性がありますが、例外もあるため過信は禁物です。
痛いしこりの多くは「炎症」
しこりを押して痛い、あるいは何もしなくても痛む(自発痛)場合は、体が細菌やウイルスと戦っているサインです。
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痛みの原因: 組織が炎症を起こして腫れることで、周囲の神経を刺激している。
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経過: 数日から1週間程度でピークを迎え、その後徐々に改善することが多い。
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安心材料: 急激に痛みが出て、腫れが引いていく場合は良性のプロセスである可能性が極めて高い。
読者のあなたが今感じている「ツンとした痛み」や「押したときの違和感」は、体が正常に防御反応を示している証拠とも言えるのです。
痛くないしこりが「要注意」とされる理由
逆に、いつの間にか顎の下にできていて、触っても全く痛くない、しかし確実に大きくなっているというしこりは慎重な観察が必要です。
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悪性腫瘍の特徴: がん細胞などは、ゆっくりと組織を侵食していくため、初期段階では痛みを伴わないことがほとんどです。
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硬さの変化: 炎症によるしこりが「消しゴムくらいの硬さ」だとすれば、悪性腫瘍は「石のように硬い」と感じることがあります。
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可動性: 触ったときに周囲の組織と癒着して動かない(固定されている)場合も要注意です。
痛くないからといって放置してよいわけではなく、むしろ無痛のしこりのほうが受診の優先度は高いと言えるでしょう。
あなたのしこりは大丈夫?セルフチェックのポイント
病院に行くべきか迷っている方のために、自宅で確認できるセルフチェックリストを作成しました。以下の項目を確認してみてください。
1. しこりの硬さを確認する
指の腹でしこりを優しく押してみてください。
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プニプニしている、または弾力がある: 脂肪腫や粉瘤、リンパ節の腫れの可能性が高く、緊急性は低めです。
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石のようにカチカチに硬い: がんの転移や悪性リンパ腫などのリスクが否定できません。
2. しこりの「動き」を確認する
指でしこりを左右に揺らしてみましょう。
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コロコロと動く: 周囲の組織と癒着していないため、良性のしこり(リンパ節や良性腫瘍)であることが多いです。
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全く動かず、皮膚の奥に固定されている: 周囲に浸潤している悪性の可能性があるため、早めの受診をお勧めします。
3. 出現した時期と経過を思い出す
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数日で急激に腫れて痛くなった: 急性の炎症(リンパ節炎や粉瘤)の可能性が高いです。
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数ヶ月かけてじわじわ大きくなっている: 良性または悪性の腫瘍、あるいは慢性の炎症が疑われます。
4. 表面の赤みや熱感を確認する
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赤くなっていて熱を持っている: 細菌感染が起きているサインです。抗生物質の投与が必要な場合があります。
もし、「しこりが硬く、動かず、痛くないのにどんどん大きくなっている」という条件が揃う場合は、速やかに専門医を受診してください。
顎の下のしこりは何科を受診すべきか?
「顎の下」という場所は、受診する科に迷いやすい部位です。原因に合わせて、以下の3つの診療科が選択肢となります。
耳鼻咽喉科(耳鼻科)
顎の下のしこりに関して、最も適切で推奨されるのが耳鼻咽喉科です。
耳鼻科医は、顎下腺(唾液腺)やリンパ節、喉の状態を診るプロフェッショナルです。
超音波(エコー)検査などの設備が整っているクリニックも多く、その場でしこりの正体を診断できる可能性が高いです。
喉の痛みや鼻水がある場合も、こちらを受診しましょう。
皮膚科
しこりが皮膚のすぐ表面にあり、表面に黒い点が見えたり、赤く腫れていたりする場合は皮膚科が適しています。
粉瘤(アテローマ)や、毛包炎、皮膚の感染症であれば、皮膚科での処置(排膿など)がスムーズです。
口腔外科・歯科
虫歯がひどい、親知らずが腫れている、あるいは食事のときに顎の下が痛むといった場合は、歯科や口腔外科を受診してください。
口腔内のトラブルが原因で顎の下のリンパ節が腫れるケースは非常に多いため、心当たりがある場合はこちらが近道です。
どこに行けばいいか全く判断がつかない場合は、まずはかかりつけの内科に相談し、紹介状を書いてもらうのも一つの手です。
治療法と完治までの期間の目安
診断結果に基づき、以下のような治療が行われるのが一般的です。
- 細菌感染の場合:抗生物質(飲み薬)が処方されます。通常、服用を開始して3〜5日程度で痛みや腫れが引き始めます。
- 粉瘤の炎症の場合:抗生物質で炎症を抑えた後、場合によっては切開して膿を出す処置を行います。完治には数週間かかることもあります。
- 顎下腺結石の場合:小さな石であれば水分をたくさん取って流し出すこともありますが、大きな石の場合は手術で取り除く必要があります。
自己判断でしこりを強く押したり、無理に揉んだりするのは絶対に避けてください。 炎症が悪化し、周囲に細菌が広がってしまう危険があります。
知恵袋でよく見かける「顎の下のしこり」に関する疑問
知恵袋などのQ&Aサイトに寄せられるリアルな悩みに対し、専門的な視点から回答をまとめました。
顎の下のしこりが「両側」にある場合は?
両側のリンパ節が同時に腫れるのは、風邪やウイルス感染(インフルエンザや流行性耳下腺炎など)でよく見られる反応です。
全身の免疫が反応している証拠ですので、片側だけが異常に腫れている場合よりは、癌などのリスクは低いと考えられます。
ただし、発熱が続く場合は内科や耳鼻科の受診が必要です。
10代、20代でしこりができるのは癌の可能性が高い?
若い世代で顎の下にしこりができる原因の圧倒的多数は、リンパ節の反応性腫脹です。
若い人は免疫反応が活発なため、少しの喉の痛みやニキビなどでもリンパ節がコリッと腫れることがよくあります。
過度に心配しすぎる必要はありませんが、数週間消えない場合は一度診察を受けましょう。
押すと痛いけど、しこりが小さい場合は放置していい?
数ミリから1センチ程度の小さいしこりで、押すと痛い(炎症の兆候がある)場合は、しばらく様子を見ても良いでしょう。
ただし、痛みが強くなる、赤みが広がる、あるいはしこりが2センチを超えて大きくなるといった変化があれば、放置せずに受診してください。
よくある質問
Q:顎の下のしこりは自然に治りますか?
A:風邪や口内炎に伴うリンパ節の腫れであれば、原因となっている病気が治るにつれて、しこりも数週間以内に自然に小さくなり、消えていくことがほとんどです。
ただし、粉瘤のように袋自体が残るものは自然消滅しません。
Q:病院に行くタイミングはいつがいいですか?
A:痛みが強くて眠れない場合や、高熱を伴う場合はすぐに受診してください。
そこまで緊急ではない場合でも、「しこりに気づいてから2週間経っても変化がない、または大きくなっている」場合は、一度専門医に診てもらうのが安心です。
Q:癌(がん)だった場合、どのような特徴がありますか?
A:一般的に、癌や悪性リンパ腫によるしこりは「痛くない」「非常に硬い」「動かない」「徐々に大きくなる」という特徴があります。
また、首全体のリンパ節が複数箇所腫れたり、声枯れ、飲み込みにくさ、体重減少などを伴うこともあります。
Q:ストレスで顎の下が腫れることはありますか?
A:ストレスそのものでしこりができるわけではありませんが、ストレスによる免疫力低下で口内炎ができたり、歯ぎしりによる筋肉の炎症、
あるいは自律神経の乱れから唾液の分泌が悪くなり、唾液腺にトラブルが起きやすくなることは考えられます。
Q:しこりを触りすぎるとどうなりますか?
A:気になって何度も触ってしまう気持ちはわかりますが、刺激を与えることで炎症が悪化したり、周囲の組織が硬くなったりすることがあります。
正確な診断を妨げる原因にもなるため、触診は必要最小限に留め、清潔を保つようにしてください。
まとめ
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顎の下にしこりがあり押すと痛い場合、その多くはリンパ節炎や唾液腺炎などの良性の炎症です。
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痛みを伴うしこりは、体が細菌やウイルスと戦っているサインであり、癌である可能性は比較的低めです。
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逆に「痛くない、非常に硬い、動かない」というしこりは、早急な検査が必要です。
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まずは耳鼻咽喉科を受診するのが最も確実でスムーズな解決策となります。
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自己判断で放置したり、無理に潰そうとしたりせず、専門医の診断を仰ぎましょう。
顎の下のしこりは、誰にでも起こりうる症状です。
特に「痛い」という症状があるときは、焦らずにまずは自分の体調(風邪気味ではないか、虫歯はないか)を振り返ってみてください。
多くの場合は適切な休息や抗生物質の服用で速やかに改善します。
不安な夜を過ごすよりも、一度病院で「大丈夫ですよ」と言ってもらうことが、精神的な健康にとっても一番の薬になります。




















