世界中で愛されている犬種の中には、イギリスを原産地とするものが数多く存在します。イギリスは「動物愛護の先進国」として知られ、世界最古のケネルクラブが存在する国でもあります。
単なるペットとしてではなく、古くから狩猟、牧畜、そして家族のパートナーとして、イギリスの人々は犬と共に歩んできました。
この記事では、イギリス原産の多様な犬種について、その歴史的背景から性格、飼育上の注意点まで詳しく紐解いていきます。
あなたが一生のパートナーとなる一頭を見つけるための、確かな判断材料となるはずです。
もくじ
イギリス原産の犬種が世界中で愛される理由
イギリス原産の犬種が、なぜこれほどまでに世界中の家庭で受け入れられているのでしょうか。
その理由は、イギリスの厳しい気候や豊かな自然、そして用途に合わせた徹底した専門性にあります。
かつてのイギリスでは、犬は明確な役割を持っていました。羊を追う、穴に潜む獲物を狩る、あるいは貴族の足元を温める。
それぞれの目的に特化した改良が重ねられた結果、現代の家庭犬としても「賢さ」や「忍耐強さ」という形でその才能が引き継がれています。
また、イギリスの犬種には「ジェントルマン」の国らしい、どこか気品と落ち着きを感じさせる個体が多いのも特徴です。
飼い主に対する忠誠心の強さは、何世紀にもわたる共生の歴史が育んだ、イギリス犬種ならではの魅力といえるでしょう。
分類別に見るイギリスの代表的な犬種
イギリス原産の犬種は、その役割によっていくつかのグループに分けられます。自分のライフスタイルに合う犬種を探す際、この分類を知ることは非常に役立ちます。
牧羊犬(シープドッグ)グループ
家畜を誘導し、守るために進化したグループです。非常に知能が高く、運動能力に優れています。
テリアグループ
農場や狩猟場でネズミやキツネなどの害獣を駆除するために活躍したグループです。勇敢で、少し頑固な一面もあります。
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ジャック・ラッセル・テリア:驚異的なスタミナと好奇心を持ち、活動的な飼い主に向いています。
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ヨークシャー・テリア:かつては炭鉱で働いていましたが、現在は「動く宝石」として愛玩犬の代表格です。
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ブル・テリア:独特の卵型の頭部を持ち、力強くも滑稽な一面がある個性派です。
ガンドッグ(鳥猟犬)グループ
ハンターが撃ち落とした獲物を回収したり、獲物の居場所を教えたりする役割を担っていました。
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ゴールデン・レトリバー:スコットランド原産。穏やかで忍耐強く、最高のファミリードッグです。
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イングリッシュ・コッカー・スパニエル:陽気な性格と長い耳が特徴。愛情深く、常に尻尾を振っています。
イギリスで特に人気の高い5犬種とその特徴
現代のイギリス、そして日本でも安定した人気を誇る5つの犬種について、その特性を表にまとめました。
上記の表からも分かる通り、イギリスの犬種は多種多様です。ラブラドールのように万能なパートナーもいれば、キャバリアのように癒やしを重視した存在もいます。
見た目の好みだけでなく、性格的な特性が自分の生活リズムに合っているかを慎重に検討しましょう。
イギリスの犬文化と「アニマル・ウェルフェア」
イギリスの犬種を語る上で欠かせないのが、イギリス人の犬に対する深い愛情と倫理観です。
イギリスは1824年に世界初の動物愛護団体(現在のRSPCA)が設立された場所であり、犬の権利を守る意識が非常に高いのが特徴です。
例えば、パブリックハウス(パブ)に犬を連れて入る光景は日常的です。しかし、それは「犬がわがままに振る舞って良い」ということではありません。
飼い主がしっかりとトレーニングを行い、犬が社会の一員としてマナーを守れるよう教育されているからこそ成立している文化なのです。
また、イギリスでは「パピーミル(子犬工場)」を排除するための法律(通称ルーシー法)が施行されるなど、生体販売の規制も厳格です。
犬を家族に迎える際は、ブリーダーから直接譲り受けるか、保護施設から引き取るのが一般的です。
「命を安易に買わない」という姿勢は、私たちがイギリスの犬文化から学ぶべき最も重要なポイントかもしれません。
絶滅の危機にある?「希少なイギリス固有種」の現状
意外な事実ですが、かつてイギリスで一般的だった犬種の中には、現在絶滅の危機に瀕しているものがあります。
英国ケネルクラブはこれらを「Vulnerable Native Breeds(脆弱な固有犬種)」と呼び、保護を呼びかけています。
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シーリハム・テリア
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ダンディ・ディンモント・テリア
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オッターハウンド
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アイリッシュ・レッド・アンド・ホワイト・セター
これらの犬種は、年間の血統登録数が300頭を下回ることもあります。
流行の犬種(フレンチ・ブルドッグやトイ・プードルなど)に押され、古き良きイギリスの作業犬たちが姿を消そうとしているのです。
歴史ある血統を守ることも、犬先進国であるイギリスが抱える現代的な課題の一つです。
イギリス原産の犬を迎える前に確認すべき3つのポイント
もしあなたがイギリス原産の犬を家族に迎えたいと考えているなら、以下の3点は必ず事前に確認してください。
1. 運動量とスペースの確保
多くのイギリス犬種は、元来「仕事」を持っていたため、体力とスタミナが非常に豊富です。
特にレトリバー系やコリー系は、1日2回、各1時間程度の散歩が欠かせません。狭い室内だけで過ごさせることは、彼らにとって大きなストレスとなります。
2. 被毛の手入れ(グルーミング)
ヨークシャー・テリアやオールド・イングリッシュ・シープドッグのような長毛種、あるいはテリア系のワイヤーヘアなどは、定期的なトリミングやブラッシングが必要です。
手入れを怠ると皮膚疾患の原因にもなるため、生涯にわたるケアの時間を確保できるか自問しましょう。
3. 犬種の特性に合わせた「しつけ」
テリア種特有の「頑固さ」や、牧羊犬特有の「動くものを追う本能」など、犬種ごとに異なる特性があります。
これを「悪い癖」と決めつけるのではなく、本能を正しく理解し、コントロールする知恵が飼い主には求められます。
よくある質問
Q:初心者でも飼いやすいイギリスの犬種はどれですか?
A:ラブラドール・レトリバーやキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルがおすすめです。
これらの犬種は人間に対して友好的で、学習能力も高く、比較的しつけが入りやすい傾向にあります。ただし、ラブラドールは体が大きくなるため、制御できる体力が必要です。
Q:マンション飼育に向いているイギリス犬種は?
A:小型犬であるヨークシャー・テリアや、穏やかな性格のキャバリアが適しています。
フレンチ・ブルドッグ(イギリスで改良が進んだ背景あり)も、無駄吠えが少なく運動量も適度なため、集合住宅での飼育に向いています。
Q:イギリスの犬は病気になりやすいって本当ですか?
A:特定の犬種において、遺伝的な疾患(キャバリアの心臓疾患や、大型犬の股関節形成不全など)のリスクがあるのは事実です。
しかし、これはイギリスの犬に限ったことではありません。信頼できるブリーダーから、親犬の遺伝子検査結果などを確認した上で迎えることがリスク回避の第一歩となります。
Q:イギリスの犬種は寒さに強いのですか?
A:イギリスは北緯が高く、冷涼な気候の国です。そのため、ダブルコート(二重構造の被毛)を持つ犬種(コーギー、シェットランド・シープドッグなど)は比較的寒さに強い傾向があります。
一方で、日本の湿潤な夏の暑さには非常に弱いため、夏場の徹底した温度管理が不可欠です。
まとめ
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イギリス原産の犬種は、狩猟や牧畜などの専門的な役割を持って進化してきた。
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分類(牧羊犬、テリア、ガンドッグ等)によって性格や運動量が大きく異なる。
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イギリスは動物愛護の精神が深く、犬を社会の一員として尊重する文化がある。
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一部の伝統的な犬種は絶滅の危機にあり、保護活動が行われている。
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迎える際は、運動量、手入れ、しつけの3点を自分の生活と照らし合わせるべきである。
イギリス原産の犬たちは、その歴史の中で常に人間の最高のパートナーとして磨き上げられてきました。彼らの賢さや忠誠心は、正しい理解としつけ、そして愛情を注ぐことで最大限に発揮されます。
単なる「ペット」としてではなく、共に人生を歩む家族としてイギリスの犬種を選んだとき、あなたの生活はより豊かで彩りあるものになるでしょう。
この記事が、あなたと素晴らしい愛犬との出会いのきっかけになれば幸いです。






















ボーダー・コリー:全犬種の中で最も賢いと言われることも多く、卓越した作業能力を持ちます。
オールド・イングリッシュ・シープドッグ:モップのような長い被毛が特徴。温厚で家族思いな性格です。
ウェルシュ・コーギー(ペンブローク/カーディガン):短い足で牛の踵を噛んで誘導していた歴史を持ち、活発で自信に満ちています。