- 「自分の想いを歌にしたいのに、言葉が出てこない」
- 「書き上げた歌詞を読み返すと、ありきたりで恥ずかしくなる」
そんな悩みを抱えていませんか。
作詞は、特別な才能を持つ人だけができる魔法ではありません。
読者(聴き手)の感情を動かす歌詞には、明確な構造と「言葉の選び方」の技術が存在します。
この記事では、白紙の状態から1曲を書き上げるためのステップ、そして聴き手の記憶に刻まれるフレーズを生み出す具体的なコツを、どこよりも深く、論理的に解説していきます。
もくじ
作詞を始める前に知っておくべき「書き出し」の心構え
いきなりメロディに言葉を乗せようとするのは、設計図なしに家を建てるようなものです。まずは、作詞の土台となる「種」を見つけることから始めましょう。
歌詞のテーマは「たった一人」に向けて設定する
多くの初心者が陥る罠は、「みんなに共感してもらおう」として、抽象的で広い言葉を選んでしまうことです。「みんな」に向けて書いた言葉は、結果として「誰の心にも刺さらない」無難なものになりがちです。
作詞のコツは、たった一人の具体的な人物を思い浮かべて、その人への手紙を書くように言葉を紡ぐことです。 特定の誰かに深く刺さる言葉こそが、結果として多くの人の普遍的な共感を生むのです。
メモの習慣が「歌詞の貯金」になる
「よし、書くぞ」と机に向かっても、名フレーズはなかなか降りてきません。日々の生活の中で心が動いた瞬間を、逃さずスマホのメモ帳に残しておくことが、作詞において最も重要な準備です。
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誰かが言った印象的な一言
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雨上がりのアスファルトの匂い
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不意に感じた孤独感の正体
こうした「断片」を蓄積しておくことで、いざ作詞を始める際に、ゼロからひねり出す苦しみから解放されます。
心を揺さぶる歌詞を作る5つの基本ステップ
作詞をスムーズに進めるには、正しい手順を知ることが近道です。以下の表に、一般的な作詞の流れをまとめました。
作詞のワークフローと各工程のポイント
| ステップ | 工程内容 | 意識すべきポイント |
| STEP 1 | テーマ・キーワード選定 | 5W1Hを明確にし、マインドマップで言葉を広げる |
| STEP 2 | 楽曲構成(型)の決定 | Aメロ・Bメロ・サビの役割を分担させる |
| STEP 3 | ストーリーの起承転結作成 | 主人公の感情の変化をプロットにする |
| STEP 4 | 本書き(言葉の流し込み) | メロディの抑揚やリズムに言葉の響きを合わせる |
| STEP 5 | リライト(推敲) | 削れる言葉はないか、視点を変えられないか確認する |
このステップを一つずつ踏んでいくことで、初心者でも迷わずに1曲を完成させることができます。
リスナーの脳内に映像を浮かび上がらせる「描写」のテクニック
優れた歌詞は、聴いている人の脳内に映画のようなシーンを映し出します。これを実現するのが「描写力」です。
「感情」を直接書かずに「状況」で伝える
例えば、主人公が悲しいとき、「悲しい」という言葉を直接使ってはいけません。「悲しい」という感情を、周囲の景色や動作、小道具を使って表現するのがプロの技術です。
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「悲しい」→「飲みかけのコーヒーが、すっかり冷めている」
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「嬉しい」→「帰り道の信号が、すべて青に変わった」
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「寂しい」→「駅の改札、誰かとぶつかっても誰も振り返らない」
このように、視覚的な情報(映像)を提示することで、聴き手は自分自身の記憶の中から似た感情を呼び起こし、強く共感するのです。
五感をフル活用して「リアリティ」を出す
視覚だけでなく、聴覚、嗅覚、触覚、味覚を意識した言葉を盛り込みましょう。
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嗅覚: 「プールの塩素の匂い」「夕飯時のカレーの香り」
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触覚: 「湿った生ぬるい風」「ざらついた指先」
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聴覚: 「遠くで鳴る踏切の音」「深夜の冷蔵庫のうなり」
五感に訴えかける具体的な言葉は、歌詞に圧倒的なリアリティと説得力を与えます。 聴き手が「あ、その感覚、知っている」と思った瞬間に、歌の世界と聴き手の心が繋がります。
楽曲構成に合わせた「言葉の役割分担」
日本のポップスにおいて一般的な「Aメロ・Bメロ・サビ」という構成には、それぞれ果たすべき役割があります。この役割を無視して書くと、単調で飽きられる歌詞になってしまいます。
Aメロ:日常と現状の提示
Aメロは、物語の導入です。ここでは、時間、場所、登場人物の状況などを、淡々と具体的に描写しましょう。 まだ感情を爆発させる必要はありません。聴き手を物語の世界観へと静かに招き入れる作業です。小さなカメラで、主人公の身の回りだけを映しているようなイメージを持つと書きやすくなります。
Bメロ:視点の変化と予感
Bメロは、サビ(頂点)に向かうための架け橋です。Aメロで提示した状況に対し、主人公の心が揺れ動く様子や、何かが起きそうな予感を表現します。
リズムを変えたり、少し抽象的な表現を混ぜたりすることで、サビへの期待感を高めていきます。「でも」「けれど」といった逆説の接続詞が使われることも多いセクションです。
サビ:感情の爆発とテーマの核心
サビは、その曲で最も伝えたいメッセージを叫ぶ場所です。ここではあえて、インパクトの強い抽象的な言葉や、キャッチーなフレーズを使います。
聴き手が最も口ずさみたくなる、その曲の「顔」になる言葉を選びましょう。メロディの最も高い音に、最も重要な母音(「あ」など)を乗せると、聴き手の心に突き刺さりやすくなります。
語彙力を高め、ありきたりな表現から脱却する方法
「言葉がいつも同じになってしまう」という悩みは、多くの作詞家が抱える壁です。この壁を乗り越えるためのトレーニング法を紹介します。
言い換え辞典(類語辞典)を活用する
同じ「愛している」でも、状況によって最適な表現は異なります。
- 「守りたい」
- 「放っておけない」
- 「ただ隣にいたい」
- 「地獄までついていく」
これらはすべて、異なるニュアンスの愛情表現です。自分の語彙の引き出しだけに頼らず、類語辞典や小説から新しい表現を盗み、自分のものにしていく姿勢が大切です。 ### 比喩表現(メタファー)のストックを作る
「まるで〜のようだ」という比喩は、歌詞に深みを与えます。
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「心」を「空っぽのバケツ」と呼んでみる
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「絶望」を「出口のないトンネル」と呼んでみる
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「初恋」を「炭酸の抜けたサイダー」と呼んでみる
日常のありふれた事物を、全く別の感情や概念に結びつける訓練をしましょう。 あなたにしか見えていない世界を、比喩を通して提示することが、独自性(オリジナリティ)に繋がります。
プロとアマチュアを分ける「リライト(推敲)」の視点
一度書き上げた歌詞は、まだ「原石」に過ぎません。そこから余計な部分を削り、磨き上げる作業こそが、作詞の本番です。
「説明」を「描写」に置き換える
書き上げた歌詞を読み返し、状況を説明しすぎている部分はないかチェックしましょう。「彼は怒っていた」という説明を、「彼は黙って拳を握りしめた」という描写に変えるだけで、歌詞の質は劇的に向上します。
読者に想像させる余地を残すこと。これが、歌詞における「余白の美学」です。 ### リズムと響きを確認する
歌詞は「読まれるもの」ではなく「歌われるもの」です。実際に声に出して、またはメロディに乗せて歌ってみたときに、以下の点を確認してください。
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言葉が詰まっていて歌いづらくないか
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不自然なところで言葉が切れていないか
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同じ語尾(〜で、〜て)が続きすぎていないか
特にサビのフレーズは、音の響きの良さが重要です。 意味が通じても、歌った時に気持ちよくない言葉は、思い切って変更する勇気が必要です。
歌詞の完成度を高めるための比較
以下の表は、初心者がやりがちな「惜しい表現」と、プロが意識する「刺さる表現」の違いを比較したものです。
初心者の歌詞とプロの歌詞の決定的な違い
| 項目 | 初心者に多い表現(説明的) | プロが意識する表現(描写・示唆) |
| 感情表現 | 悲しくて涙が止まらない | 蛇口の音がやけに大きく響く夜 |
| 情景描写 | 公園に綺麗な花が咲いている | 誰にも気づかれず、アスファルトの隙間で揺れる黄色 |
| 抽象度 | 幸せになりたい | 焼きたてのパンの匂いで目が覚める朝 |
| 視点 | 私はこう思った | 君の背中が、少しだけ震えた気がした |
このように、「自分」を主語にするのではなく、対象物や環境を主語にするだけで、歌詞の視界は一気に広がります。
よくある質問
作詞に関する代表的な疑問についてお答えします。
Q:メロディが先ですか? 歌詞が先ですか?
A:結論から言えば、どちらでも正解です。
歌詞を先に書く「詞先(しせん)」は、言葉のリズムやストーリー性を重視しやすく、メロディを先に作る「曲先(きょくせん)」は、音楽的なノリやキャッチーさを優先しやすいという特徴があります。初心者の場合は、短いフレーズ(サビの1行など)を思いついたら、それに簡単なメロディをつけて、そこから広げていく方法が最もスムーズです。
Q:語彙力に自信がありません。本を読まないとダメですか?
A:読書は有効ですが、それ以上に「観察」が重要です。
難しい言葉を知っていることよりも、日常の些細な変化に気づける感性の方が作詞には役立ちます。本を読む時間がなければ、好きなアーティストの歌詞を100曲分写経してみてください。彼らが「どんな言葉を使い」「どんな言葉を使っていないか」を肌で感じることで、自然と作詞に必要な語彙が身につきます。
Q:著作権やパクリが怖くて書けません。
A:影響を受けることと、模倣することは別物です。
最初は好きな曲の構成やテーマを参考にしても構いません。そこに「あなた自身の具体的な体験」や「あなた独自の視点」が1滴でも混ざれば、それはもうあなたの作品です。全く新しいものをゼロから生み出そうとする呪縛から逃れ、まずは先人の知恵を借りるつもりで書き始めましょう。
まとめ
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テーマは「みんな」ではなく「たった一人」に向けて設定する
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感情を直接書かず、五感を使った「描写」で状況を伝える
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Aメロ・Bメロ・サビの役割を理解し、物語に緩急をつける
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類語辞典を活用し、ありきたりな表現を比喩で言い換える
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書き上げた後の「リライト」で、歌としての響きと余白を整える
作詞は、あなたの心の中にある形のない感情に、言葉という「服」を着せてあげる作業です。最初は不恰好でも、何度も試着を繰り返すうちに、あなただけの特別な一着が完成します。
大切なのは、うまく書こうとすることではなく、あなたの内側にある「どうしても伝えたい」という小さな熱量を、誠実に言葉に落とし込むことです。 今回ご紹介したテクニックを道具箱のように使い、まずは1行、自分だけの言葉をノートに記すことから始めてみてください。あなたの紡ぐ言葉が、いつか誰かの孤独を癒やし、誰かの勇気になる日が来ることを願っています。







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