「愛猫が突然、黄色い液体や泡を吐いてしまった」
そんな光景を目にすると、飼い主さんとしては非常に驚き、心配になりますよね。猫は比較的よく吐く動物だと言われていますが、その内容物の「色」には、猫の体内で起きている異変を知らせる重要なメッセージが隠されています。
実は、猫が黄色い液体を吐くケースの多くは「空腹」が原因であることが多いのですが、その一方で、肝臓や腎臓、膵臓などの重大な病気が隠れている可能性も否定できません。
この記事では、猫が黄色い液体を吐く正体である「胆汁」の仕組みから、家庭でできる食事の工夫、そして「今すぐ病院へ行くべきか」の判断基準まで、飼い主さんが知っておくべき情報をすべて詳しく解説します。愛猫の健やかな毎日を守るための、正しい知識を身につけましょう。
もくじ
猫が吐いた「黄色い液体」の正体は胆汁(たんじゅう)
猫が吐いた黄色い液体、あるいは黄色く色づいた泡の正体は、「胆汁(たんじゅう)」という消化液です。本来であれば腸に流れるべき胆汁が、何らかの理由で胃に逆流し、それを胃液と一緒に吐き出してしまうことで、黄色い嘔吐物となります。
胆汁は肝臓で作られ、胆嚢(たんのう)という袋に蓄えられます。そして食事が胃から十二指腸へ送られてくると、脂肪の消化を助けるために十二指腸へと分泌されます。この液体は強いアルカリ性で、非常に鮮やかな黄色から、ときには緑がかった色をしています。
なぜ胆汁が胃に逆流するのか
通常、胃と腸の間にあるゲート(幽門)は、内容物が逆流しないようにコントロールされています。しかし、胃の中が長時間空っぽの状態が続くと、胃や十二指腸の運動が不安定になります。
この不安定な動きによって、十二指腸にある胆汁が胃の方へ逆流してしまいます。胃は強酸性の胃液で守られていますが、アルカリ性の胆汁が逆流してくると強い刺激を受け、その不快感から吐き出してしまうのです。これを医学的には「胆汁嘔吐症候群」と呼ぶこともあります。
黄色い「泡」が混じっている場合
液体だけでなく、白や黄色の泡が混じっていることもあります。この泡の正体は、胃液が空気に触れて攪拌されたものです。黄色い泡であれば、胃液に胆汁が混ざっていることを意味します。泡を吐くこと自体は、胃の中に食べ物がない状態で吐こうとしたときによく見られる現象です。
猫が黄色い液体を吐く主な5つの原因
猫が黄色い液体を吐く背景には、日常生活の中で改善できるものから、緊急の治療を要するものまで多岐にわたります。まずは、考えられる主要な原因を確認してみましょう。
1. 長時間の空腹(胆汁嘔吐症候群)
最も多い原因がこれです。特に朝方や、仕事から帰宅した直後など、前回の食事から時間が大きく空いたタイミングで吐く場合は、空腹による胆汁の逆流が疑われます。
猫は野生時代の名残で、少しずつ何度も食べる習性があります。そのため、1日2回の給餌スタイルだと、食間の空腹が耐えがたいものになり、胃腸のトラブルを引き起こしやすいのです。
2. 急性・慢性胃炎
胃の粘膜が炎症を起こすと、胃の動きが正常ではなくなり、胆汁の逆流や嘔吐を誘発します。
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食べ過ぎ、早食いによる刺激
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フードの急激な変更によるアレルギー反応
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不衛生な水や古いフードの摂取
これらが原因で胃が荒れると、黄色い液を何度も吐くようになります。特に新しくフードを変えた直後などは、体が拒絶反応を示していないか注意が必要です。
3. 内臓疾患(肝臓・腎臓・膵臓)
黄色い液体を吐く症状が続く場合、消化器以外の臓器にトラブルが起きている可能性があります。
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肝臓の病気: 肝炎や脂肪肝(肝リピドーシス)などで胆汁の分泌バランスが崩れる。
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腎臓の病気: 老廃物が体内に溜まり、尿毒症による吐き気を引き起こす(特に高齢猫に多い)。
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膵炎: 激しい炎症により強い吐き気と腹痛を伴う。
これらの病気の場合、嘔吐以外にも「元気がなくなる」「水を飲む量が急激に増える」「食欲が落ちる」といった他のサインが併発することが一般的です。
4. 異物誤飲と腸閉塞
おもちゃの破片、紐、布などを飲み込んでしまった場合、それが胃や腸に詰まってしまうことがあります。出口を塞がれた消化液が逆流し、黄色い液を吐き続けるようになります。
もし、何度も激しく吐こうとしているのに何も出ない、あるいは黄色い液だけが出るという場合は、異物がどこかに詰まっている「腸閉塞」の危険性が非常に高いです。これは命に関わる緊急事態です。
5. ストレスや環境の変化
猫は非常にデリケートな動物です。引っ越し、新しい同居動物の加入、工事の騒音といったストレスが原因で自律神経が乱れ、胃酸が過剰に分泌されたり、胃腸の動きが低下したりします。メンタル面の不調が、黄色い液を吐くという身体症状となって現れることも珍しくありません。
【緊急度判定】病院へ行くべきか、様子を見て良いか
飼い主さんが最も悩むのが「今すぐ病院へ連れて行くべきかどうか」という判断でしょう。以下の表に、チェックすべきポイントを整理しました。
猫の状態を確認するための緊急度チェックリスト
| 緊急度 | 猫の状態・症状の目安 | 飼い主が取るべき行動 |
| 低(様子見可) | 吐いた後も元気で、食欲がある。吐くのは週に1回程度で、特定の時間帯(空腹時)に限られる。 | 食事の回数を増やすなどの対策を行い、数日間観察する。 |
| 中(早めの受診) | 2〜3日連続で黄色い液を吐く。元気はあるが、少し食欲が落ちているように感じる。 | 数日以内に動物病院を受診し、健康診断や血液検査を相談する。 |
| 高(即受診) | 1日に何度も繰り返し吐く。ぐったりして動かない。下痢、発熱、黄疸(目や耳が黄色い)がある。 | 夜間であっても救急病院を含め、すぐに受診する。 |
黄色い液体を吐いた際、「その後すぐに美味しそうにご飯を食べ、走り回っているか」が、一つの大きな安心材料になります。逆に、吐いた後にうずくまって動かない、あるいは水を飲んでもすぐに吐いてしまうような場合は、一刻の猶予もありません。
要注意!「黄疸(おうだん)」の見極め方
黄色い液を吐くのと同時に、猫の体自体が黄色くなっていないか確認してください。
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耳の内側の皮膚
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白目の部分
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口の中の粘膜
ここが普段より黄色っぽく見えるなら、それは「黄疸(おうだん)」という非常に深刻なサインです。肝臓や胆管に重大な障害が起きている証拠ですので、迷わず病院へ向かってください。
家庭ですぐにできる3つの対処法と予防策
空腹が原因である可能性が高い場合、日々の生活習慣を少し変えるだけで、嘔吐がピタッと止まることがあります。以下の対策を今日から試してみましょう。
1. 食事の回数を「小分け」にする
1日の総カロリーは変えずに、給餌の回数を増やします。
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1日2回(朝・晩) → 1日4回(朝・昼・夕方・寝る前)
特に、寝る前に少量のフードを与えることで、翌朝の空腹時間を短縮でき、朝方の嘔吐を防ぐのに非常に効果的です。自動給餌器を活用すると、飼い主さんが不在の時や深夜でも正確に小分け給餌が可能です。
2. フードの質と与え方を見直す
空腹で吐きやすい猫には、腹持ちの良いフードへの切り替えも検討の余地があります。食物繊維が適度に含まれているものは、消化のスピードが緩やかになり、胃が空っぽになるのを遅らせてくれます。
また、一気に食べて吐いてしまう「早食い」の癖がある場合は、早食い防止用の凸凹がある食器を使用する、あるいはドライフードをふやかして胃への刺激を和らげるのも有効な手段です。
3. ストレスの徹底排除
猫がリラックスして過ごせる環境を整えることも、胃腸の健康に直結します。
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トイレは常に清潔に保たれているか
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高い場所など、猫が一人で隠れられる安心スポットはあるか
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食器の場所が騒がしくないか
「胃腸は心の鏡」とも言われるほど、猫の消化器系はストレスに敏感です。特に引っ越しや家族構成の変化があった後は、いつも以上にスキンシップや遊びの時間を大切にしてあげてください。
動物病院を受診する際に準備しておくこと
病院で獣医師に正確な状況を伝えることは、迅速な診断と治療に繋がります。診察室で慌てないために、以下の3点を用意しておきましょう。
1. 嘔吐物の写真または実物を持参する
言葉で「黄色い液体でした」と伝えるよりも、写真を見せる方が遥かに多くの情報が伝わります。
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スマートフォンのカメラで、内容物の色が分かるように撮影する
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余裕があれば、ティッシュに吸わせず、ラップに包むかビニール袋に入れて持参する(寄生虫や異物の確認ができるため)
ティッシュに吸わせてしまうと、色の正確な判断が難しくなり、検査もしにくくなるため注意が必要です。
2. 「いつ・どのくらい」をメモする
診断の決め手となるのは、生活の中の細かいデータです。
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最後に食事を摂ったのはいつか
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吐く直前の行動(激しく遊んでいた、何かを噛んでいた等)
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1日の嘔吐回数と、継続している日数
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排泄物(おしっこ・うんち)に異常はないか
メモを残しておくことで、獣医師は「生理的なものか、病的なものか」の切り分けがスムーズになります。
3. 吐いている様子の動画を撮る
もし可能であれば、猫が吐こうとしている瞬間の動画を撮影してください。「お腹を波打たせて吐いている(嘔吐)」のか、あるいは「食べた直後にコポッと出している(吐出)」のかによって、疑われる病気が全く異なります。飼い主さんの説明だけでは判別しにくい「吐き方」も、動画があれば一目瞭然です。
まとめ
猫が黄色い液体を吐くという症状は、飼い主さんへの重要なサインです。多くの場合は空腹によるものですが、その裏には命に関わる病気が隠れている可能性も忘れてはいけません。
日頃から愛猫の様子を観察し、「いつもと何かが違う」という直感を大切にしてください。早めに対処することで、防げる病気や軽減できる苦痛がたくさんあります。大切なパートナーが、一日でも長く健康でいられるよう、正しい知識でサポートしてあげましょう。






















黄色い液の正体は「胆汁」。主な原因は空腹による胃への逆流。
食事回数を小分けにし、空腹時間を短くすることが第一の対策。
元気がない、食欲不振、何度も繰り返す、黄疸がある場合は即受診が必要。
肝臓、腎臓、膵臓のトラブルや異物誤飲が隠れている場合がある。
受診時は写真、メモ、動画を持参すると正確な診断に繋がる。