トイプードルを飼い始めたばかりの飼い主さんにとって、最初の大きな楽しみであり悩みでもあるのが「トリミング」ではないでしょうか。
数あるスタイルの中でも、圧倒的な人気を誇るのがテディベアカットです。
ぬいぐるみのようなくりくりとした瞳と、丸みを帯びた輪郭は、トイプードルの魅力を最大限に引き出してくれます。
しかし、SNSで見た可愛い写真をトリマーさんに見せたのに、
「なんだかイメージと違う……」
という仕上がりになってしまった経験を持つ方も少なくありません。
テディベアカットを成功させるためには、単に「短くしてください」と伝えるだけでは不十分です。愛犬の骨格や毛質、そして普段の生活スタイルに合わせた細かな調整が、理想の可愛さを手に入れるための鍵となります。
ここでは、テディベアカットの基本から、愛犬に似合わせるためのプロの視点、そしてトリマーに確実に意図を伝えるためのオーダー術までを詳しく解説します。
もくじ
テディベアカットとは?なぜトイプードルに最適なのか
テディベアカットは、その名の通り「テディベア(クマのぬいぐるみ)」のように見せるスタイルです。
もともとトイプードルは、水猟犬としての機能を重視した「コンチネンタル・クリップ」などが標準的なスタイルでしたが、2000年代以降、家庭犬としての愛らしさを追求したこのカットが爆発的に普及しました。
このスタイルがこれほどまでに支持される理由は、**日本人の感性にマッチした「丸み」と「幼さ」**を表現しやすいからです。
また、顔の毛を残すことで表情を柔らかく見せ、どんな服を着せても似合うというファッション性の高さも魅力の一つです。
トイプードルはシングルコートで毛が抜けにくい反面、放っておくと毛が伸び続け、毛玉になりやすい性質を持っています。
テディベアカットは、定期的なメンテナンスを前提としながらも、飼い主さんの好みに合わせて無限にアレンジができるという、トイプードルという犬種の特性を活かした最高のスタイルといえるでしょう。
愛犬に似合うテディベアカットを見極める3つのポイント
「テディベアカットならどの子でも似合う」と思われがちですが、実は顔の形や耳の位置によって、最適なバランスは異なります。
愛犬の個性を活かして、より「うちの子らしく」可愛く見せるためのポイントを整理しましょう。
1. マズルの長さと太さに合わせる
トイプードルには、マズル(鼻先から口元)が長いタイプと短いタイプがいます。
マズルが長い子の場合は、口元の毛(ピーナッツ型やムスタッシュ風)を少し横に広げるようにカットすると、顔全体のバランスが整い、小顔効果が生まれます。
2. 耳の位置とボリュームのバランス
耳の位置が高い子は活発な印象に、低い子は落ち着いたお嬢様風の印象になります。耳の毛を長く残すとエレガントになりますが、短く丸くカットすると「仔犬感」が出て非常に若々しく見えます。
耳の毛玉ができやすい子の場合は、**耳の淵をぎりぎりまで短くする「タッセル風」**もおすすめです。
通気性が良くなり、外耳炎の予防にも繋がります。
3. 毛質と毛量に応じた長さ設定
トイプードルの毛質は個体差が激しく、コシの強い「巻き毛」の子もいれば、柔らかい「軟毛」の子もいます。
毛量が少ない子や毛が柔らかい子が、あまりに顔の毛を長く残しすぎると、重みで毛が割れてしまい、地肌が見えてしまうことがあります。
その場合は、あえて全体をコンパクトにまとめることで、毛の密度を濃く見せ、ふんわり感を維持しやすくなります。
失敗しないためのトリマーへのオーダー術
美容室から帰ってきた愛犬を見て「思っていたのと違う」と感じる最大の原因は、飼い主さんとトリマーの間での**「言葉の定義のズレ」**にあります。
例えば「短くしてください」という言葉。
トリマーにとっては「バリカンで地肌が見えるくらい」かもしれませんし、飼い主さんにとっては「ハサミで全体を2cmくらい切る」ことかもしれません。
この認識の相違を防ぐための具体的な方法をお伝えします。
写真を最低3枚は用意する
言葉だけで伝えるのには限界があります。必ず理想のスタイルが写っている写真を用意しましょう。
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正面の写真: 顔の輪郭や口元の丸みを確認するため。
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横向きの写真: マズルの出っ張り具合や耳の付き方を確認するため。
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全身の写真: 体の長さと足の太さのバランスを確認するため。
写真は、できるだけ愛犬の毛色に近い子の写真を選ぶのがコツです。黒毛の子と白毛の子では、同じカットでも光の当たり方で印象が大きく変わるためです。
譲れないポイントと、お任せするポイントを分ける
「耳は短く丸くしたいけれど、足は少し太めのブーツカットにしてほしい」というように、こだわりたい部分を明確に伝えます。
逆に、マズルの形などは「この写真に近づけたいのですが、うちの子の骨格で可能ですか?」とトリマーに相談してみましょう。プ
ロの視点で、骨格的に無理がある場合は代わりの案を提案してくれます。
お手入れの頻度を正直に伝える
「1ヶ月に1回通う」のか「2ヶ月に1回しか通えない」のかによって、カットの内容は変えるべきです。
もし2ヶ月あくのであれば、伸びた時を見越して少し短めに仕上げる必要があります。無理に長さを残すと、次回の来店までに毛玉がひどくなり、結局バリカンで短く刈り込まなければならないという、犬にとっても負担の大きい結果になってしまいます。
テディベアカットの維持に必要な自宅ケアと頻度
テディベアカットの美しさを保つためには、定期的なプロのケアと、日々の飼い主さんの努力が欠かせません。
トリミングの理想的な頻度
基本的には1ヶ月〜1.5ヶ月に1回のペースが理想です。2ヶ月を超えると、目元の毛が伸びて眼球を刺激したり、足裏の毛が伸びて滑りやすくなったりと、衛生・安全面での問題が出てきます。
「まだ体はそんなに伸びていない」と感じる時でも、顔周りだけの「シャンプー&顔カット」コースなどを利用することで、常に可愛らしいテディベアの形をキープできます。
自宅でのスリッカーブラシの使い方
テディベアカットを維持する上で、最大の敵は「毛玉」です。特に耳の後ろ、脇の下、首回りは、動きや摩擦によって毛玉になりやすい部位です。
1日5分で構いません。**スリッカーブラシとコーム(クシ)**を使って、根元から毛を立ち上げるようにブラッシングしてください。
表面だけを撫でるのではなく、地肌が見えるように毛を分けながら通すのがポイントです。
毛玉を放置すると、皮膚の通気性が悪くなり皮膚炎の原因になるため、ブラッシングは単なる美容ではなく「健康管理」の一環として捉えましょう。
料金相場とメニュー選びの注意点
トイプードルのテディベアカットの料金は、地域や店舗によって幅がありますが、一般的には8,000円〜15,000円程度(シャンプー・カット・爪切り等含む)が目安です。
ここで注意したいのが「追加料金」です。
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毛玉料金: 毛玉がひどい場合、除去に時間がかかるため数百円〜数千円加算されます。
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デザインカット料金: 基本のテディベアから大きく外れるアレンジ(パンツカットなど)をする場合に発生することがあります。
安さだけで選ぶのではなく、カウンセリングに時間をかけてくれるか、犬の扱いが丁寧かを基準にサロンを選ぶことが、最終的な満足度に繋がります。
よくある質問
Q:シニア犬でもテディベアカットはできますか?
A:可能です。
ただし、シニア犬の場合は可愛さよりも「負担軽減」を最優先すべきです。立ち続ける時間を短くするために、体はバリカンで手早く仕上げ、顔周りだけをテディベア風に整える「時短テディ」を提案してくれるサロンを選びましょう。
Q:毛色が薄くなってきましたが、カットでカバーできますか?
A:トイプードルは加齢とともに退色(毛色が薄くなる)することが多いです。
色が薄くなると毛質も柔らかくなる傾向があるため、以前よりも短めにカットして毛の密度を上げると、色が濃く見え、若々しい印象を取り戻すことができます。
Q:涙やけがひどいのですが、テディベアカットを続けて大丈夫ですか?
A:涙やけがある場合、目の周りの毛を短くスッキリさせる必要があります。
目頭を少し深くカットする「目元スッキリテディ」なら、可愛さを維持しつつ、涙による雑菌の繁殖を抑えることができます。トリマーに相談して、目元のカットだけ工夫してもらいましょう。
まとめ
トイプードルのテディベアカットを成功させ、愛犬との生活をより楽しくするためのポイントを振り返りましょう。
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テディベアカットは個々の骨格や毛質に合わせた「似合わせ」が重要
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マズルの長さや耳の位置によって、丸みの作り方を変えるのがプロの技
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オーダー時は理想の写真を3枚以上用意し、こだわりを具体的に伝える
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美しいスタイルを維持するには、1ヶ月〜1.5ヶ月に1回の通院が目安
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日々のブラッシングは毛玉を防ぎ、皮膚の健康を守るための必須ケア
テディベアカットは、トイプードルの持つ無限の可能性を引き出す魔法のようなスタイルです。
しかし、その魔法を維持できるのは、飼い主さんの深い愛情と日々のケア、そして信頼できるトリマーとのコミュニケーションがあってこそ。
愛犬の顔立ちをじっくり観察し、今回のガイドを参考に次回のオーダーを検討してみてください。
きっと、今までで一番「うちの子らしい」最高の可愛さに出会えるはずです。




















