愛犬の耳からツンとする臭いがしたり、黒い汚れが見えたりして不安に感じていませんか。
犬の耳は非常にデリケートで、間違った掃除方法は外耳炎などの悪化を招く恐れがあります。
本記事では、獣医師も推奨する安全な耳掃除の手順や適切な頻度、嫌がる犬への向き合い方を詳しく解説します。
大切な愛犬の耳の健康を守るために、正しいケア知識を今日から身につけましょう。
もくじ
犬に耳掃除が必要な理由
犬の耳は人間とは異なり、耳の穴から鼓膜までの道筋がL字型に曲がっています。
この構造は湿気がこもりやすく、汚れや水分が排出されにくいという特徴を持っています。
耳掃除を怠ると、耳垢を餌とする細菌やカビの一種であるマラセチアが異常繁殖します。
その結果、強い痛みや痒みを伴う外耳炎を引き起こす可能性が高まります。
定期的な耳掃除は、単に汚れを落とすだけでなく、耳の異常をいち早く察知するスキンシップとしても重要です。
愛犬が快適に過ごすためには、家庭での適切な耳のチェックが欠かせません。
犬の耳掃除の適切な頻度
耳掃除の頻度は、犬種や耳の形、そして個体差によって大きく異なります。
やりすぎは耳の粘膜を傷つける原因になるため、適切なペースを守ることが大切です。
基本は週に1回から月に1回
健康な状態の犬であれば、週に1回程度のチェックと、2週間に1回程度の掃除が目安です。
耳の中が綺麗であれば、無理に掃除をする必要はありません。
立ち耳の犬種は通気性が良いため、月に1回程度のケアで十分な場合もあります。
一方で、垂れ耳の犬種や耳毛の多い犬種は、汚れが溜まりやすいため週に1回のケアを推奨します。
犬種別の耳の汚れやすさ比較
犬種によって耳の構造や皮膚の性質が異なるため、以下の表を参考にしてください。
自宅で行う犬の耳掃除の準備
スムーズに耳掃除を終えるためには、事前の準備が重要です。
犬が**「耳掃除＝怖いこと」と認識しないよう**、手際よく進めるための道具を揃えましょう。
必要な道具リスト
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犬専用イヤークリーナー（洗浄液）
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清潔なコットンまたはガーゼ
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ご褒美のおやつ
イヤークリーナーは、アルコールフリーなどの低刺激なタイプを選ぶことが大切です。
また、ティッシュペーパーは繊維が荒く耳を傷つける可能性があるため、必ずコットンかガーゼを使用してください。
掃除を始める前の環境作り
犬が落ち着ける静かな場所を選びます。
滑り止めのマットを敷いた机の上や、飼い主の膝の上など、犬が安定する姿勢を確保しましょう。
掃除の前後におやつを与えることで、耳掃除に対するポジティブな印象を植え付けることができます。
実践！正しい犬の耳掃除の手順
家庭での耳掃除は「見える範囲を優しく拭く」ことが基本です。
決して奥まで器具を入れないことを念頭に置いて進めてください。
ステップ1：耳の入り口の汚れを拭き取る
まずは、ぬるま湯やクリーナーで湿らせたコットンで、耳の表面（耳介）の汚れを優しく拭き取ります。
この時、ゴシゴシと擦らずに、汚れを浮かせるように拭くのがコツです。
ステップ2：クリーナーを注入する（流し洗い）
耳の穴に直接イヤークリーナーを数滴垂らします。 その後、耳の付け根（軟骨のある部分）を外側から優しく揉みます。
「クチュクチュ」と音がするのが、液が耳道内に行き渡っているサインです。
これにより、奥に溜まった耳垢がクリーナーによって浮き上がってきます。
犬が頭を振って液を飛ばすのを待つことで、浮いた汚れが外に出てきます。
ステップ3：浮き出た汚れを優しく除去する
犬が頭を振った後、耳の入り口付近に出てきた汚れを乾いたコットンで軽く拭き取ります。 耳の奥に残った液は自然に乾燥するため、無理に奥まで拭き取る必要はありません。
犬が耳掃除を嫌がる時の対処法
耳掃除を嫌がる犬に対して無理強いをすると、二度と触らせてくれなくなる恐れがあります。
少しずつ慣らしていくステップアップが必要です。
触られることに慣れさせる
いきなり掃除を始めるのではなく、日頃から耳の周りを撫でる練習をしましょう。
耳を触らせてくれたらすぐにおやつをあげるという動作を繰り返し、警戒心を解きます。
短時間で切り上げる
一度に両耳を完璧に綺麗にしようとせず、片耳だけで終わらせても構いません。 「嫌な思いをする前に終わる」ことを優先し、徐々に時間を延ばしていきましょう。
専門家に任せる勇気
どうしても暴れてしまう場合や、痛がる様子を見せる場合は、自宅でのケアを中断して動物病院やトリミングサロンに依頼してください。
無理な保定は事故や怪我に繋がるため、プロに任せるのが最も安全な選択です。
犬の耳掃除で絶対にやってはいけないNG行為
良かれと思って行ったケアが、逆に愛犬を苦しめてしまうことがあります。
以下の3つの禁止事項は必ず守ってください。
綿棒を使用する
人間用の綿棒を犬の耳道に使用するのは非常に危険です。
耳垢を耳の奥（鼓膜方向）へ押し込んでしまうだけでなく、犬が動いた拍子に鼓膜を突き破るリスクがあります。
家庭でのケアにおいて綿棒の使用は厳禁です。
乾いたコットンで強く擦る
耳の皮膚は非常に薄くデリケートです。 乾いた状態で強く擦ると、目に見えない細かな傷がつき、そこから細菌感染を起こします。
必ず洗浄液で湿らせて、滑りを良くした状態でケアを行ってください。
頻繁にやりすぎる
毎日耳掃除を行うなど、過度なケアは必要な皮脂まで奪ってしまいます。
皮膚のバリア機能が低下し、逆に炎症を起こしやすくなるため、定められた頻度を守りましょう。
動物病院を受診すべきサイン
耳掃除をしていても、病気が隠れている場合があります。
以下の症状が見られたら、家庭でのケアで解決しようとせず、速やかに獣医師の診察を受けてください。
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耳の中が真っ赤に充血している
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耳から異臭（悪臭）がする
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黒色や茶色の耳垢が大量に出る
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耳を頻繁に地面にこすりつける、頭を振り続ける
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耳を触ろうとすると悲鳴をあげる、怒る
これらは外耳炎、耳ダニ感染症、中耳炎などのサインです。 放置すると慢性化し、治療に長い期間を要することになります。
よくある質問（FAQ）
耳掃除の後に耳を痒そうにしていますが大丈夫ですか
掃除の直後は、耳の中に残った液や、浮き上がってきた汚れに違和感を覚えて頭を振ったり後ろ足で掻いたりすることがあります。
通常は数分で収まりますが、数時間経っても激しく掻きむしる場合は、洗浄液が合っていないか、既に炎症がある可能性があります。
その場合は速やかに動物病院を受診してください。
市販のイヤークリーナーの選び方を教えてください
アルコールが含まれているタイプは、炎症がある耳に使うと強い刺激（痛み）を与えるため、ノンアルコールや低刺激タイプを選びましょう。
また、洗浄力が強いものや保湿効果が高いものなど種類が豊富です。
愛犬の耳の汚れ具合や皮膚の状態に合わせて、最初は獣医師に相談して選ぶのが最も安心です。
お風呂上がりに耳掃除をしてもいいですか
お風呂上がりは耳道内に水分が入り込んでいることが多く、湿度が高いため菌が繁殖しやすい状態です。
耳の入り口の水分を優しく拭き取るのは良いですが、奥まで過剰に触るのは控えましょう。耳の中をしっかり乾燥させることが重要ですので、通気性を確保し、落ち着いてから通常のケアを行ってください。
耳毛を抜くのは自分で行っても問題ありませんか
耳毛を抜く行為は、毛穴を傷つけ、そこから細菌が侵入して毛包炎や外耳炎を引き起こすリスクがあります。
最近の獣医療では、健康であれば無理に抜かない方針が増えています。
処置が必要な場合はプロのトリマーや獣医師に依頼し、自宅では表面の毛を整える程度に留めるのが無難です。
耳垢が黒いのは何かの病気でしょうか
耳垢が黒くてカサカサしている、または粘り気がある場合は、耳ダニ感染症やマラセチア性外耳炎の疑いがあります。
特に耳ダニは激しい痒みを伴い、他のペットに感染する恐れもあります。
普通の耳垢（薄い黄色や茶色）とは明らかに色が異なる場合は、自宅で掃除せず専門的な検査を受けてください。
子犬の耳掃除はいつから始めるべきですか
家に迎えて環境に慣れたら、まずは**「耳を触られること」に慣らす練習**から始めましょう。
生後3〜4ヶ月頃から、スキンシップの一環として耳をめくって中を見る習慣をつけます。
幼少期に耳ケアをポジティブな体験にしておくことで、成犬になってからのトラブルを大幅に減らすことができます。
まとめ
犬の耳掃除は、愛犬の健康を維持するための大切なホームケアです。
しかし、誤った方法は症状を悪化させる原因となるため、**「無理をしない」「奥まで触らない」「道具を正しく選ぶ」**という基本を忘れないでください。
耳の状態を日常的にチェックすることで、病気の早期発見にも繋がります。
もし少しでも異常を感じたり、自分で行うのが不安だったりする場合は、無理をせず専門家の力を借りることが愛犬への一番の優しさです。
正しい知識を持ってケアを行い、愛犬との健やかな毎日を守っていきましょう。
