犬を飼うなら大型犬?憧れの生活を叶えるための費用と覚悟

「いつかは大きな犬と一緒に暮らしたい」

 

そんな憧れを抱きつつも、

 

「お金はいくらかかる？」

「散歩は大変？」

「初心者でも大丈夫？」

 

と不安を感じていませんか？

大型犬との生活は、小型犬にはない圧倒的な安心感と深い絆が得られる一方で、想像以上の体力と費用が必要になる現実もあります。

この記事では、初心者でも飼いやすい大型犬の種類から、生涯かかるリアルな費用、老後介護の覚悟までを徹底解説します。

憧れを現実にするために、まずは正しい知識と準備から始めましょう。

 

大型犬の定義と魅力とは

一般的に「大型犬」と呼ばれる犬たちには、どのような基準があるのでしょうか。まずは基礎知識と、多くの人を惹きつける魅力について解説します。

 

大型犬の体重や大きさの基準

実は、犬のサイズに関する厳密な公的定義はありませんが、一般的には成犬時の体重が25kg以上の犬種を大型犬と呼ぶことが多いです。

 

 

体高（地面から背中までの高さ）も50cmを超えることが多く、立ち上がって前足を人の肩にかけると、大人とほぼ同じ目線になる子もいます。

この「物理的な大きさ」こそが、大型犬最大の特徴であり、生活環境を整える上での第一関門となります。

 

圧倒的な存在感とパートナーとしての魅力

大型犬と暮らす飼い主の多くが口を揃えるのは、「犬というより、人間のようなパートナー感」です。

• 包容力のあるスキンシップ: 抱きしめたときの温かさと重みは、他には代えがたい癒やしです。

• 頼れる安心感: 散歩中や自宅での番犬としても、その存在だけで心強さを感じられます。

• アウトドアの相棒: キャンプや登山、海遊びなど、アクティブな趣味を全力で一緒に楽しめます。

小型犬が「守ってあげる愛らしい存在」だとすれば、大型犬は「共に人生を歩む頼もしい相棒」と言えるでしょう。

 

初心者でも飼いやすい大型犬の種類

「大型犬はしつけが難しいのでは？」と心配な方に向けて、性格が穏やかで初心者にも扱いやすい人気の4犬種を紹介します。

 

ゴールデン・レトリバー

日本で不動の人気を誇る大型犬です。

• 性格: 非常に温厚で人懐っこく、攻撃性が低いです。

• 特徴: 黄金色の長い被毛が美しく、表情が豊か。「人類の友」と呼ばれるほど友好的です。

• 注意点: 抜け毛が非常に多いため、こまめな掃除とブラッシングが必須です。

誰にでも優しく接することができるため、小さなお子さんがいる家庭でも比較的安心して迎えられます。

 

ラブラドール・レトリバー

盲導犬や介助犬としても活躍する、知能の高い犬種です。

• 性格: 明るく活発で、学習能力が非常に高いです。

• 特徴: 短毛でお手入れが比較的楽です。水遊びやボール遊びが大好き。

• 注意点: 食欲旺盛で太りやすいため、食事管理が重要。若い頃はかなりパワフルです。

しつけの飲み込みが早いため、トレーニングを楽しみたい飼い主さんに最適です。

 

バーニーズ・マウンテン・ドッグ

スイス原産の牧羊犬で、トライカラー（黒・白・茶）の毛色が特徴です。

• 性格: 温和でのんびりしており、飼い主に甘えるのが大好きです。

• 特徴: 激しい運動よりも、ゆったりとした散歩を好みます。

• 注意点: 暑さに非常に弱いため、夏場の空調管理（24時間冷房）が命綱です。

「激しい運動は苦手だけど、大きな犬とまったり過ごしたい」という方におすすめです。

 

スタンダード・プードル

トイ・プードルの原種であり、非常に賢く運動能力が高い犬種です。

• 性格: 知的で飼い主の感情を読み取るのが得意。

• 特徴: 抜け毛がほとんどないため、アレルギーが気になる家庭でも飼いやすいです。

• 注意点: 定期的なトリミング（カット）が必要で、その費用がかかります。

室内を汚しにくく、清潔に保ちやすいため、都市部のマンション（大型犬可物件）でも人気が高まっています。

 

大型犬を飼う前に知っておくべき現実

憧れだけで飼い始めると、現実の壁にぶつかり後悔することになりかねません。ここでは、特に重要な「お金・時間・体力」の負担について解説します。

 

食費や医療費などの生涯費用

大型犬は体が大きい分、すべてにおいて費用が倍増します。

 

【費用の目安（年間）】

生涯費用（約12年）で見ると、300万円〜400万円ほどかかるのが一般的です。

特にフィラリア予防薬や抗生剤などの薬代は、体重で料金が決まるため、小型犬の数倍になることを覚悟しておきましょう。

 

毎日の散歩と運動量の確保

大型犬にとって、散歩は排泄のためだけでなく、ストレス発散と筋力維持のために不可欠です。

• 時間: 1日2回、各1時間以上（計2時間）が理想。

• 内容: ただ歩くだけでなく、ボール投げやドッグランでの疾走など、強度の高い運動も必要。

雨の日も風の日も、台風の日でさえ、排泄のために外に出なければならないこともあります。「仕事で疲れたから今日は休み」は通用しません。

 

介護や老後のケアの難しさ

最も深刻なのが「老後の介護」です。

大型犬が寝たきりになった場合、30kg〜40kgの体を抱えての移動や、床ずれ防止のための寝返り（数時間おき）が必要になります。

• 排泄介助: オムツ交換や、腰を支えての排泄補助。

• 通院: 自力で歩けない場合、車に乗せるだけで大人2人がかりの重労働。

飼い主自身の体力と腰への負担は計り知れません。「自分も高齢になってから大型犬を飼う」のは、非常にリスクが高いと言われる理由がここにあります。

 

居住スペースと移動手段の確保

大型犬との生活には、物理的な広さが求められます。

• 居住空間: 尻尾を振っても物が倒れない広さ、大きなベッドを置くスペース。

• 車: 動物病院への搬送やドッグランへの移動には、車がほぼ必須です（クレートが載るサイズ）。

公共交通機関やタクシーは、大型犬の利用を断られるケースが多いため、自家用車がないと緊急時の対応が難しくなります。

 

大型犬との生活に必要な準備と環境

大型犬を迎える決意ができたら、家の中を「大型犬仕様」に整える必要があります。

 

滑りにくい床材と室内環境の整備

フローリングの床は、犬の股関節に大きな負担をかけます。特に大型犬は関節トラブルが多いため、対策は必須です。

 

• 滑り止めマット: 家中の動線に敷き詰める。

• コーティング: フロアコーティングを施工する。

 

また、しっぽの一振りでローテーブルの上の飲み物が飛び散ることも日常茶飯事です。「壊れ物は置かない」「家具は背の高いものにする」などの工夫が必要です。

頑丈なクレートとトイレ用品の選び方

用品もすべて「特大サイズ」で「頑丈なもの」を選びましょう。

 

• クレート（ハウス）: 災害時の避難や車移動のために必須。噛んでも壊れないハードタイプがおすすめ。

• トイレトレー: スーパーワイドサイズ（新聞紙見開き程度）以上の大きさが必要です。

破壊力も桁違いなので、おもちゃやベッドも耐久性の高いものを選ばないと、数分でゴミになってしまうことがあります。

 

しつけの重要性とプロへの相談

体重30kgの犬が本気でリードを引っ張れば、大人の男性でも転倒します。飛びつきや噛み癖があれば、他人を怪我させてしまうリスクもあります。

 

• パピートレーニング: 子犬の時期からの社会化が極めて重要。

 

• プロへの依頼: 初心者の場合、ドッグトレーナーにしつけ教室を依頼することを強く推奨します。

 

大型犬のしつけは、「お行儀」の問題ではなく「安全管理」の問題です。飼い主が完全にコントロールできるようになることが、愛犬を守ることにつながります。

大型犬の寿命と健康管理

悲しい現実ですが、大型犬と過ごせる時間は、小型犬よりも短い傾向にあります。

 

小型犬と比較した寿命の違い

大型犬の平均寿命は10歳〜12歳程度と言われています。小型犬が15歳前後まで生きるのと比較すると、老化のスピードが非常に早いです。

これは、体の大きさに比べて心臓や肺などの臓器が小さく負担がかかりやすいことや、成長期の急激な細胞分裂が影響しているという説があります。

限られた時間だからこそ、1日1日を大切に過ごす意識が生まれます。

 

胃捻転や関節トラブルへの注意点

大型犬特有の、命に関わる病気やトラブルがあります。

• 胃捻転（いねんてん）:

  胃がねじれてガスが溜まり、数時間で死に至る緊急疾患です。

  対策：食後すぐの運動は絶対に避ける、早食いを防止する。

 

• 股関節形成不全:

  遺伝や成長期の栄養バランスにより、股関節が正常に発達しない病気。

  対策：滑らない床、適正体重の維持、過度なジャンプを避ける。

 

定期検診と日々の健康チェック

言葉を話せない犬の不調に気づけるのは飼い主だけです。

 

• 年に1〜2回の健康診断: シニア期（7歳〜）に入ったら半年に1回が理想。

• スキンシップ: 毎日体を触って、しこりや痛がる箇所がないか確認する。

 

早期発見・早期治療が、健康寿命を延ばす最大の鍵となります。

 

よくある質問（FAQ）

大型犬の飼育を検討している方からよく寄せられる疑問をまとめました。

 

一人暮らしでも大型犬は飼えますか？

不可能ではありませんが、ハードルは非常に高いです。

留守番時間の長さによる犬のストレス、散歩時間の確保、急病時の対応などが課題です。ペットシッターやドッグウォーカーなどの外部サービスを利用する経済的な余裕と、緊急時に頼れる協力者がいることが条件となります。

 

食費を抑える方法はありますか？

安易にフードの質を落とすことはおすすめできません。

安価なフードは消化吸収が悪く、排泄量が増えたり、将来的な病気のリスクを高めたりして、結果的に医療費がかさむ可能性があります。まとめ買いや定期購入割引を利用するなど、質を落とさずにコストを工夫しましょう。

 

散歩に行けない日はどうすればいいですか？

基本的に「行かない日」は作らない覚悟が必要です。

台風などでどうしても危険な場合は、室内で頭を使うゲーム（ノーズワークなど）でストレスを発散させます。しかし、排泄を外でしかしない子の場合は、カッパを着て短時間でも外に出る必要があります。

 

大型犬は室内と室外、どっちで飼うべき？

現在は「室内飼育」が基本です。

日本の夏は暑すぎて、寒冷地原産の多い大型犬には命取りになります。また、群れで生活する犬にとって、家族と離れて外に繋がれることは大きな孤独とストレスになります。健康管理と精神衛生の両面から、リビングで一緒に過ごすことをおすすめします。

 

マンションで大型犬を飼うのは大変？

規約で許可されていれば可能ですが、工夫が必要です。

エレベーターや共用部では抱きかかえる等のルールがある場合、大型犬では物理的に不可能です。また、足音が階下に響かないような防音対策も必須です。1階の専用庭付き住戸などを選ぶと、比較的スムーズに生活できます。

 

どんな人が大型犬に向いていますか？

「体力・経済力・時間」の3つに余裕がある人です。

さらに言えば、部屋が汚れても、服に毛がついても、「まあいいか」と笑って許せる大らかさを持つ人が向いています。犬中心のライフスタイルを楽しめる人にとって、大型犬は最高のパートナーになります。

 

まとめ

大型犬との生活は、確かにお金も手間もかかります。

• 生涯費用は300万〜400万円を見積もる。

• 毎日の散歩と運動は最低2時間。

• 老後の介護には体力と覚悟が必要。

• それでも、圧倒的な愛情と信頼関係は何物にも代えがたい。

「可愛いから」という理由だけでなく、「最期まで責任を持って面倒を見切れるか」を自問自答してください。

その覚悟ができたとき、大型犬はあなたの人生において、かけがえのない最高の親友となってくれるはずです。