犬が震える理由は?病院に行くべき危険な症状と止まらない時の対処法

愛犬が突然ブルブルと震え出し、どうすればいいか焦っていませんか？

犬が震える理由は、寒さや恐怖といった生理的なものから、命に関わる病気のサインまで多岐にわたります。「様子を見てもいい震え」と「すぐに病院へ行くべき震え」を見誤ると、愛犬を危険にさらしてしまう可能性もあります。

この記事では、犬が震える主な原因と見分け方、そして緊急性の高い症状について詳しく解説します。震えが止まらない時の対処法や、老犬特有の震えについても網羅しているので、今の愛犬の状態と照らし合わせながら読み進めてください。

読み終える頃には、今すぐ取るべき行動が明確になり、不安が解消されるはずです。

1 犬が震える主な原因【生理現象・精神・病気】
2 すぐ病院へ！危険な震えの症状と見分け方
3 年齢・犬種別に見る震えの特徴
- 3.1 子犬・小型犬（チワワ・プードル）の注意点
- 3.2 老犬（シニア犬）の足の震えとケア方法
4 自宅でできる対処法と予防策
5 よくある質問（FAQ）
6 まとめ

犬が震える主な原因【生理現象・精神・病気】

犬が震える原因は一つではありません。

大きく分けると、「生理現象」「精神的な要因」「病気や痛み」の3つに分類されます。

まずは愛犬の震えがどのパターンに当てはまるのか、冷静に観察することが大切です。

それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

【生理現象】寒さや筋力低下（シバリング）

人間が寒い時に体を震わせて熱を作ろうとするのと同様に、犬も体温調節のために震えることがあります。

これを「シバリング」と呼びます。

特に以下の犬種や条件では、寒さによる震えが起きやすくなります。

シングルコートの犬種（トイプードル、ヨークシャーテリアなど）
小型犬（チワワなど）
体脂肪が少ない犬（イタリアングレーハウンドなど）
子犬や老犬（体温調節機能が低い）

室温が低い時や、冬場の散歩中、シャンプーの後などに震えている場合は、寒さが原因である可能性が高いです。

この場合、部屋を暖めたり服を着せたりして震えが止まれば、大きな問題はありません。

また、高齢による筋力低下も生理的な震えの一つです。

足腰の筋肉が衰えると、立っているだけで体を支えるのが辛くなり、プルプルと小刻みに震えることがあります。

排泄の姿勢をとる時に足が震えるのも、この筋力低下が影響しているケースが多いです。

【精神的要因】恐怖・不安・ストレス

犬は非常に繊細な動物であり、強いストレスや恐怖を感じると震えることがあります。

これは自律神経の働きによるもので、自分ではコントロールできない反応です。

よくあるシチュエーションは以下の通りです。

雷や花火の大きな音
動物病院の待合室や診察台
知らない人や他の犬との遭遇
工事現場の騒音
飼い主からのきつい叱責
引っ越しやペットホテルなどの環境変化

このタイプの震えは、耳を後ろに倒す、尻尾をお腹の下に丸め込む、部屋の隅に隠れる、パンティング（ハァハァという呼吸）をするといった行動を伴うことが特徴です。

恐怖の対象がなくなれば自然と震えは収まりますが、慢性的なストレスは体調不良の原因にもなるため注意が必要です。

【病気・痛み】関節炎・ヘルニア・中毒など

最も警戒しなければならないのが、病気や痛みによる震えです。

犬は痛みを我慢する習性があり、キャンと鳴かずにただ静かに震えて痛みに耐えていることがあります。

病気が原因の場合、以下のような疾患が疑われます。

分類	具体的な病気・原因	特徴的な症状
痛み	椎間板ヘルニア、関節炎、腹痛（膵炎など）	背中を丸める、触ると怒る、歩き方がおかしい
神経系	てんかん、脳腫瘍、水頭症、ジステンパー	意識がぼんやりする、けいれん発作、ふらつき
中毒	チョコレート、ネギ類、保冷剤、薬の誤飲	嘔吐、下痢、大量のよだれ、興奮状態
代謝性	低血糖症、尿毒症（腎不全）、肝不全	ぐったりする、低体温、意識消失

特に椎間板ヘルニアはダックスフンドなどの胴長犬種に多く、抱っこした瞬間に「キャン！」と鳴いて震え出すことがあります。

また、チョコレートやネギ類の中毒は、食べてから数時間後に震えや嘔吐が現れるため、誤飲の形跡がないか確認が必要です。

震え以外に「元気がない」「食欲がない」「うずくまっている」などの症状がある場合は、病気の可能性を強く疑いましょう。

すぐ病院へ！危険な震えの症状と見分け方

「様子を見ていいのか、すぐに病院へ行くべきか」

この判断が生死を分けることもあります。

ここでは、緊急性が高い危険な震えのサインと、飼い主が現場で行うべき確認ポイントを解説します。

震えと「発作（けいれん）」の決定的な違い

まず確認すべきは、その震えが「ただの震え（振戦）」なのか、「発作（けいれん）」なのかという点です。

けいれん発作の場合、脳の神経回路に異常が起きているため、一刻も早い治療が必要になります。

見分けるためのチェックポイントは以下の通りです。

【震え（振戦）の特徴】

意識がある（名前を呼ぶと反応する、目で追う）。
飼い主が体を優しく抑えたり、抱っこしたりすると震えが少し収まることがある。
自分の意思で動くことができる（歩ける、水を飲める）。

【けいれん発作の特徴】

意識がない、または混濁している（呼んでも反応しない、焦点が合わない）。
口から泡を吹いたり、失禁（お漏らし）をしたりする。
手足がピーンと突っ張って硬直している、またはバタバタと泳ぐような動きをする。
発作が終わった後もしばらくボーッとしていたり、ふらついたりする。

もし「けいれん発作」だと判断した場合は、夜間であっても救急対応している動物病院へ連絡してください。

緊急性が高い症状チェックリスト（嘔吐・意識・痛み）

けいれん発作以外にも、以下の症状を伴う震えは緊急性が極めて高い状態です。

一つでも当てはまる場合は、すぐに受診の準備をしてください。

嘔吐や下痢を繰り返している
- 中毒や重度の胃腸炎、膵炎の可能性があります。
呼吸が荒い、または苦しそう
- 心臓疾患や肺水腫、熱中症、強い痛みのサインです。
歯茎や舌の色が白い・紫色
- 貧血やチアノーゼ（酸素不足）、ショック状態を示しています。
お腹を触ると硬い、または嫌がる
- 腹痛や腹部の張り（胃捻転など）が疑われます。
足を引きずっている、立てない
- 骨折や脱臼、ヘルニアによる麻痺の可能性があります。
子犬である（生後3ヶ月未満など）
- 子犬の震えは低血糖症の可能性が高く、数時間で命に関わります。すぐに糖分（ガムシロップなど）を舐めさせて病院へ。

「いつもと様子が明らかに違う」と感じる飼い主の直感は、多くの場合当たっています。

迷わずに専門家の判断を仰ぐことが重要です。

動画撮影が診断の決め手になる理由

病院へ行く前に、もし余裕があれば震えている愛犬の様子をスマートフォンで動画撮影してください。

診察室に入ると、犬は緊張で一時的に震えが止まったり、逆に恐怖で震え始めたりして、自宅での「異常な震え」が再現されないことがよくあります。

獣医師は「どのような震え方か」を見ることで、神経の病気か、痛みか、中毒かをある程度推測できます。

撮影する時のポイント：

全身を映す（どんな姿勢で震えているか）。
顔のアップを撮る（目の動きや意識レベルを確認するため）。
名前を呼んで反応を見る（意識があるかどうかの記録）。
震えの持続時間を計る。

この動画があるだけで、診断のスピードと正確性が格段に上がります。

慌てている状況かと思いますが、10秒〜30秒程度の動画が愛犬を救う大きな手がかりになります。

年齢・犬種別に見る震えの特徴

犬の年齢や種類によって、震えの原因や注意すべきポイントは異なります。

愛犬の属性に合わせたケアを知っておきましょう。

子犬・小型犬（チワワ・プードル）の注意点

チワワ、トイプードル、ヨークシャーテリアなどの超小型犬や子犬は、以下の理由から非常に震えやすい傾向があります。

寒さに弱い
- 体が小さく熱を逃しやすいため、少しの気温低下でもガクガク震えます。
- 冬場だけでなく、夏のエアコンの風が直接当たる場所でも冷えてしまうことがあります。
低血糖症になりやすい
- 特に生後数ヶ月の子犬は、空腹時間が長く続くと血糖値が下がり、震え、ふらつき、痙攣を起こします。
- 食事の間隔を空けすぎないことが最大の予防策です。
精神的に繊細
- 警戒心が強い個体が多く、来客や物音でプルプルと震えることがよくあります。

子犬がぐったりして震えている場合は、低血糖の疑いがあるため緊急事態です。

砂糖水やガムシロップを歯茎に塗りつけ、すぐに病院へ連れて行ってください。

老犬（シニア犬）の足の震えとケア方法

シニア期（7歳〜）に入ると、後ろ足を中心に震えが見られることが増えます。

これには主に2つの原因が考えられます。

1. 老化による筋力低下

人間のお年寄りと同様に、筋肉量が減って体を支える力が弱くなります。

立ち止まっている時や、食事中、排泄の姿勢をとった時に、後ろ足がプルプルと小刻みに震えるのが特徴です。

痛みはなく、歩き出せば震えが止まることが多いです。

2. 関節痛や神経痛

変形性関節症や脊椎の病気により、慢性的な痛みを感じているケースです。

筋力低下との見分け方は、「歩きたがらない」「段差を嫌がる」「寝起きに動きが鈍い」といった行動の変化があるかどうかです。

老犬の震えへの対策：

滑りにくい床材にする： フローリングにカーペットを敷き、足腰への負担を減らす。
適度な運動を続ける： 筋力を維持するために、無理のない範囲で散歩を続ける。
保温ケア： 筋肉や関節は冷えると痛みが増すため、腹巻や服で温める。

「歳だから仕方ない」と決めつけず、痛みが隠れていないか一度獣医師にチェックしてもらうことをおすすめします。

痛み止めやサプリメントでQOL（生活の質）が大きく改善することもあります。

自宅でできる対処法と予防策

明らかに緊急性が低く、生理的または精神的な震えだと判断できる場合は、自宅でのケアで様子を見ましょう。

飼い主ができる具体的な対処法を紹介します。

室温管理と服での体温調節

寒さが原因の場合は、物理的に温めることが最も効果的です。

室温の見直し：
- 人間が快適でも、床に近い場所で過ごす犬にとっては寒いことがあります。
- 冬場は23〜25℃を目安に、湿度は50%前後を保ちましょう。
洋服の活用：
- 特にシングルコートの犬種や老犬には、室内でも薄手の服を着せるのが有効です。
- 外出時は防寒機能のあるアウターを着せましょう。
寝床の工夫：
- ドーム型のベッドや毛布を用意し、自分の体温で暖まれる場所を作ります。
- 湯たんぽやペットヒーターを使う場合は、低温火傷に注意し、熱すぎたら逃げられるスペースを確保してください。

温めてから30分〜1時間程度で震えが止まれば、寒さが原因だったと判断できます。

ストレスを取り除く環境づくり

恐怖や不安で震えている場合は、その原因（ストレッサー）を取り除くか、安心させてあげることが必要です。

安心できる場所（セーフティゾーン）を作る：
- クレート（ハウス）にカバーをかけ、薄暗くて狭い場所を用意します。犬は暗くて囲まれた場所で落ち着く習性があります。
- 雷や花火の時は、窓を閉めてカーテンを引き、テレビや音楽をつけて外の音を紛らわせます。
無理に触らない：
- 恐怖でパニックになっている時に過度に抱きしめたり撫でたりすると、逆に不安を助長することがあります。
- 飼い主自身が「大丈夫だよ」と落ち着いた低い声で声をかけ、普段通りに振る舞うことが、犬にとって一番の安心材料になります。
- 「震えれば構ってもらえる」と学習させないため、過剰な同情は避けるのがベターです。

落ち着かせるための接し方

愛犬が震えていると、飼い主まで動揺してしまいがちですが、飼い主の不安は愛犬に伝染します。

まずは深呼吸をして、冷静になることが大切です。

観察する：
- 意識はあるか？痛みはあるか？他の症状はないか？
環境を整える：
- 温度調整、音の遮断、安全確保。
優しく見守る：
- 近くに座り、寄り添ってあげます。
- 愛犬が体を寄せてきたら、ゆっくりと背中を撫でてあげましょう（マッサージ効果で筋肉の緊張が解けることもあります）。